2020年7月の都知事選挙で小池百合子が圧勝した。
宇都宮健児は、「都民一人ひとりのいのち暮らしを守り抜く!」をスローガンに掲げ戦った。
しかし84万票を獲得したが次点に終わったのである。
人間の真価は、絶体絶命の危機に追い込まれたときに発揮される。
それは日々の生き方において「人事を尽くしている」ことから出来上がるものだ。
宇都宮の弁護士としてのスターとは恵まれたものではない。
弁護士会の職員が「一人ヒマな弁護士がいたな」と気が付いて、サラ金被害者の紹介をしたところから始まる。
「暴力団の若い衆を連れて、私の事務所に乗り込んできたサラ金業者がいました。”ここではなんだから”とビルの地下1階の喫茶店へ。人がたくさんいる場所なら滅多なことはしないだろうと考えたのです。すると若い衆が話の途中でドスを見せるのです。私は柔道や剣道はやったことないし、卓球はありますけど、襲われたらどうしようか、と。
しかし依頼者は私より弱い立場の人なんですね、だからここで私が引いてしまったら暴力的な取り立てが依頼者に行ってしまう。これは降りるわけにはいかないと腹を固めました。
”話し合いにきたのなら応じるが、ケンカをするために来たのなら裁判で白黒つけるしかない”と言い席を立って帰ったんですね。こう言ったものの、翌日から付け狙われるのではないか、後ろからブスリと刺されたらどうしよう、と気が気ではありませんでした。
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その日から毎日、午前2時から4時まで私の自宅に無言電話がかかって来ました。何日か続いた後、電話の向こうでガチャガチャ言い出した。やはりこの前の業者だ。これはちゃんと裁判をするしかないな、と思いました。債務不存在確認訴訟といって、すでに借りた金は返している。もう借金はないはずだ、と。
裁判始めたら無言電話もパタッと止まりました」
いまコロナ過にある東京都民にとって、このような弱い者のために「体を張って動いてくれる」リーダーが必要なのではないか。
こざかしく「いつつの小」などとプラカードを掲げることではあるまい。
「弁護士は依頼があればどちらかの側につくものです。しかし違法行為はやめさせないとダメ。それが弁護士の仕事ですから。その意味では武富士側についた弁護士たちに倫理的・道義的な責任を感じてほしいですね。業界のトップを走っていた武富士が断罪されたので、その後のグレーゾーン金利撤廃の声が高まって、その後の法改正につながりました」
大阪府の吉村知事やその師匠の橋下徹弁護士は、宇都宮健児の発言をどんな思いで聞くのであろうか?
吉村知事は武富士の顧問弁護士をしていた。当然武富士の悪辣さは認識していただろう。
橋下徹はアイフルの子会社になった商工ローン会社の代理人をしていた。
宇都宮健児の次の発言も極めてこの国の抱える問題点を指摘している。
つまりこの国は経済の効率性だけを追い求めて、病院や保健所すらリストラしてきた。
国民の命より経済効率の方を大事にしてきたのです。
そしてコロナがやってきた。この社会は一見すると強そうに見えますが、実は大変脆弱だった。