米戦略国際問題研究所(CSIS)の上級顧問エドワード・ルトワックによれば、
中国の習近平がとっている「全方位強硬路線」(すべてに対して攻撃を仕掛けるやり方)は、戦略上もっとも愚かなことである、と切って捨てる。
確かにインドでは小競り合いの戦闘を繰り返し、南シナ海では傍若無人の振る舞い、香港では一国二制度を無視して政治的弾圧を加えている。
そしてこのところ極東アジアの火種になりそうなのが「台湾問題」である。
中国は、平和的解決をあきらめて武力による支配を目指しているように見える。
世界規模の「反中同盟」が出来上がりつつある。
米中対立はトランプ大統領時代から続いているが、バイデン大統領はさらに人権問題にも思い入れがある。
習近平にとってトランプ以上に手ごわい。
そして中国の動きに反応の鈍かったヨーロッパの国々も対中警戒感をあらわに示すようになった。
ドイツ、イギリス、フランスなどが極東に最新鋭空母を派遣するようになった。
このような動きは、中国大陸に戦線を拡大した日本に対し、ABCD(アメリカ、イギリス、中国、オランダ)包囲網を敷かれたことを思い出さざるを得ない。
バイデンが敢えてアフガニスタンを捨てたのは、「中国問題」に専念する狙いもあると考えたほうが良いだろう。
日本もそうだが中国は海軍力(シーパワー)と海洋力(マリタイムパワー)の違いが理解できない。
イギリスの強さは、単に狭義の海軍力、船の性能だけによるものではない。友好国との軍事、外交、経済、文化など総合的な結びつきの強さに基づく。
それに対し、中国はせっせと海軍力を質量ともに増やし、意味なく周りの国を威圧する。
そのこと自体が周りの国の警戒心を高める。そして友達を無くしていく。
ルトワックに言わせれば、
「中国の同盟国を数えてみればいい。貧しく腐敗した指導者を持つ国か、ロシアのような「偽りの恋人」しかいない。
日本が海洋国家として目指すべき方向は「イギリス」のようなしたたかな戦略を持った国であろう。