宇佐見りんさんの「推し燃ゆ」という本を読んでみた。
書店の店先に芥川賞受賞作、世界で80万部という見出しにひかれての衝動買い。
だいたい「推し」なる言葉が意味不明だったのに。
主にアイドルや俳優について用いられる日本語の俗語であり、人に薦めたいと思うほどに好感を持っている人物のこと。
主人公(高校生)が学校や社会(バイト先)からも、そして家族からも切り離されて(と思い込んで)、ただ、推し(アイドル)に全てをささげる心情が綿々とつづられている。
その心持を何とか理解しようと思ったがまず無理だ。
自分が中学・高校のころはやっとテレビが出回り始めたころで、アイドルと言えば坂本九ちゃんくらいか。
「上を向いて歩こう」の歌がこの時代を象徴していたと思う。
高校時代は受験か就職かで揺れ動く時期だし人生で悩み多き時代かもしれないが、みな上を向いて歩いていた。
著者の宇佐見りんさんは小説家だけに人間の観察眼は優れていると思う。
(1999年生まれでまだ若いのだが)
あとがきの言葉が心に残った。
頼れる大人は一見厳しく、寡黙で、とっつきにくく見える。
頼れない大人は自分を持ち上げてくれる生徒にだけ調子のいいことを言い、そうでない生徒を、言葉を持たない未成年であるのをいいことに傷つける。
口を閉じている存在を軽んじる先輩や大人にはどうか背を向けて、心の柔らかい部分を守ってもらえたらと願っている。