ミクロネシア 青年海外協力隊環境隊員のブログ

ミクロネシア連邦国において環境分野で活動する青年海外協力隊、シニアボランティアからの報告。コメントお待ちしています。

環境クラブ その8-コンポストー

2014-08-27 10:42:41 | ポンペイ州
 2014年3月21、24日。環境クラブ8回目の今日は「水」シリーズ第三弾、コンポストである。水とコンポスト(堆肥)がなぜ繋がるのか?それはポンペイのライフスタイルと密接な関係がある。これまでにお伝えしてきたようにポンペイで最も重要視されるものの一つに豚がある。その豚小屋から出る糞尿が水の汚染源の一つなのである。この糞尿を水質汚染せずに有効利用するのが「ドライリターメソッド」(僕なりに訳すと「乾式豚糞処理方式」)と言われるコンポストの生成法である。
 
 子どもたちはスクールバスに乗り込み、一路コンポストを作るテストサイトがあるミクロネシア短期大学農業科へ向かう。
 車内は完全に遠足気分である。

 このスクールバス。日本から供与されたもので、幼稚園で使われていたもの。車内はケロケロケロッピのシートが配置されファンシーな雰囲気。ボディには「○○幼稚園」とネームが入っている。
 30分ほど走り、丘の上に建つ短大に到着。


 豚舎にはたくさんの豚が。


 豚舎はわずかに傾斜があり、谷側に木質チップが供給される。豚の糞尿は自然とチップと混ざり、谷側に切られた溝に自然と落ちていく。溝にたまったチップと糞尿は養生するための区画に移され発酵していく。発酵段階に応じて順に隣の区画に移されていく。一つの区画が10日から2週間ほどで、4つ区画を進む。およそ2月ほどでコンポストの完成となる。


第一区画では発酵熱が大きく、空気を取り入れるためのパイプに手をかざすと蒸気が立ち上ってくるのがわかる。この過程で糞尿が滅菌され、衛生的な堆肥となる。ポンペイでは生活用水として河川の水を使っていることが多いため、糞尿をそのまま河川に流すと菌よる感染症が起こることがあり、最近このことが問題視されている。そのため、このシステムは水を汚さない、衛生的である、堆肥を得るというまさに一石三鳥の方法なのである。



 
 できたコンポストの匂いを嗅ぐ。糞尿のにおいは全くない。



 子どもたちは一人一本枝を持ってきた。木質チップを作るチッパーに枝を投入し、チップ作りを体験する。このチッパーまたもや日本から供与されたものである。機械はメイドインカナダである。



かなりの騒音、大きな枝でも一瞬でチップにするチッパーに子どもたちも興奮。



 現状この方式は、アメリカの援助によりポンペイの数か所に試験的に導入されているのみである。豚舎を新設しなければいけないこと、チップの供給の問題があり、市民レベルにはまだ広がってはいないが、ポンペイにおいて非常に有効なものであると思う。作成したコンポストは販売もされており、そこそこ売れているらしい。現金を手にすることができるという点でも魅力的な方法である。

 因みに、豚のし尿よる水質汚染の解決策として中国が援助、展開しているメタンガス発酵槽がある。し尿を集め嫌気発酵をさせ、メタンガスを生成させ、ガスとして使えるようにしたものである。ガスはガス灯やガスコンロとして使われている。これも一部の家庭に数か所導入されているが、導入後のフォローがなく、広がりを見せていない。


 次回のテーマは「海」。ポンペイの自然について学でいく。


 24年度2次隊 浜川喬弘

環境クラブ その7-廃油キャンドルー

2014-08-27 09:07:55 | ポンペイ州

 2014年3月12日、18日。環境クラブ7回目の今日は廃油キャンドルを作る。テーマ「水」シリーズの第2弾。前回は水の汚染について学び、今回はその汚染源の一つ、台所から出る廃油を使ってキャンドルを作った。冒頭、油がどれくらい環境に悪いのかを知る。油の中では生物、微生物は呼吸ができないため窒息死する。それではコップ一杯の油を環境にダメージを与えないようにするにはどれくらいの水で希釈する必要があるのか?


 当初、廃油キャンドルではなく、廃油石鹸を作ることを考えた。ココナッツ油から石鹸を作る会社から硬化剤となる苛性ソーダを分けてもらい試作した。しかし、なかなか固まらない。いろいろ調べてみると油の種類、状態によって硬化剤の適正量はシビアに異なり、集めた油で作るのは難しいことが分かった。どうしようかと思っていると、ポンペイにあるではないか!「固めるテンプル」!日本からの輸入物資を扱う「ヨシエ」に。恐るべしヨシエ!(ちなみにヨシエには日本のおなじみの品が何でもある。カラムーチョ、ポッカのコーヒー、洗剤のアタックなどなど。他州の隊員はポンペイに来るとヨシエで日本食を大量に買い込んで帰る。)

 さて、子どもたちに小さめのビンと家庭から出る廃油を持ってきてもらう。作り方はいたって簡単。キャンドルに色を付けるために好きな色のクレヨンを削る。凝固剤を溶かした廃油をビンに流し込み、芯となる紐を割り箸ではさみビンに入れる。あとは温度が下がれば、廃油が固まりキャンドルの完成。

クレヨンを削る。




EPAのスタッフが廃油を温めるのをサポート。


オオミネ小のJICAボランティアとピースコーボランティア。


冷えるのを待つ。


一晩待って、完成の図。


 この廃油キャンドル作りの良いところに、キャンドルを通して家庭との交流が生まれることがあると思う。持ち帰ったキャンドルは実用的であるし、なぜこれを作ったのかを伝えることで、家族を巻き込んでいくことができる。
 しかし、ポンペイでの実践は良い面と難しい面があることが分かった。まず、良い面とは停電がたびたび起こること、離島では電力供給もなく明かりがとれることから実用的であるという点。知り合いのポンペイ人に作り方を紹介したところ、実際にデモを頼まれ、彼女は離島でのワークショップでこれを紹介したいと息込んでいた。
 一方、難しい面とはポンペイのライフスタイルに関係する。そもそも台所からでる廃油がかなり少ないのである。揚げ物が大好きなポンペイ人。ホームステイ先でも毎日のようにフライドチキン、揚げ魚、揚げバナナがでる。油がかなり古くなっても使う。さらに古くなった油は炒め物に回される。実際、子どもたちが持ってきた油の中には、白くなり個体化した脂肪のようになったものもあった。このように家庭では徹底的に利用されている。当初レストランからは大量に廃棄されていると思い、レストランに廃油を貰いに行った。しかし、全てのレストランで廃油は決まった日に従業員がまとめて持ち帰るようになっていた。見た目かなり黒い油が引き取られていく。
 このような現状を知るに至り、ポンペイでの実践的な導入は難しいと感じた。しかし、教育的側面から見れば、廃油が環境に悪いものだと認識してもらうための体験学習として十分に意味があると思い実施した。


 廃油キャンドル作りについてスタッフと相談していると、こんなもの↓を見せてくれた。お隣の国パラオで昔使われていたランプ。土の器にヤシ油を入れ、火をともすことができる。


 次回は水シリーズ第三弾。コンポスト。


24年度2次隊 浜川喬弘