走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

病気と性

2020年09月22日 | 仕事
疾病を持たれている方の性を考えた事がありますか?私は大学院に在籍中、がん患者の性を専門に勉強していました。きっかけになったのはホスピスで働いている時に家族から相談を受けて戸惑ったから。

以前は医療は病気と向き合う事。しかし病気だけではなく全人としてケアをした方がより良い結果が出てくる証拠が増えたので医療はそちらへ向かっています。全人的なケアと呼び、心のケアや宗教、社会的背景などもくみ取りケア計画を立てます。で、この全人と言う中には性嗜好や性行為も入っています。しかし性に関しては目をつぶってしまう。人間の3大欲求の一つと言われても面と向かって患者や家族と堂々と話を聞いたりアドバイスできる医療者は多くありません。

そんな背景からか、患者は性欲がないと考えがち。しかしそう思うのは大間違い。同じ人間ですから同じようにあるのです。貴方が患者のサインに目を瞑ればとんでもない方向へ行く事だってあるのです。だから?と思った時、オープンに話せると症状緩和に繋がったり、回復への第一歩となります。

このような事を書くと、患者に胸やお尻を触られるても人間の欲求として受け入れて我慢しないといけないのですか?と勘違いする看護師もいます。患者だからと言って何をしても良いわけではありません。同じ人間として道徳、理性に基づいて行動すべきですから、病院での性的暴力(相手の承諾なしに触る、言葉にすることは立派な暴行です)は許されません。そこはきっちり話して然るべき処分も考慮しなければなりません(カナダでは警告をして改善しない場合は強制退院になります)。しかしこの司法的な対応のほかに医療的対応として、性について患者の声を聞くと言うのはありです。

先の患者さん。男としての証明として奥さんを絶頂へみちびく事ができるかどうかを癌が進行する過程の中で悩んでいたのです。その為に痛みのコントロールがうまく出来ず、奥さんとプライベートな時間を十分確保(誰も部屋を訪れない時間を作る事でお互いが話し合ったり試す事ができた)する事で痛みがコントロールできるようになったのです。癌の痛みそのものより心の痛み、性的不安が癌の痛みとして現れていた典型的な例です。

入院歴が多い小児患者の成長過程でも、向き合う大人がいなければ、衝動をどう扱って良いか分からず怒りとして表すようになったり、と。エチケットを教えなければ子供は知らないままです。積極的に話し合うとは言っていません。サインを見逃さず、サインがあるときは向き合ってと言っているのです。

そして患者や家族側も性の相談を医療者へすることは恥ずかしい事ではない、と言うのを知って欲しい。例えば前立腺癌の治療が勃起機能に影響を与える可能性を知らずに手術をしてしまう人も少なくありません。質問をする事は間違いでないし、医師も濁さず真摯に返答をするべきです。

一人でも多くの人に知って欲しい病気と性のお話でした〜

今日の冒頭写真は昨日の冒頭写真に使った植物を上から写したもの。
カップ状になっていて面白い。花はこちら。名前?わかりませーん。






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