走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

置いてけぼり

2018年01月28日 | 仕事
BC州でナースプラクティショナー(NP)が生まれたのは、医師不足の解決策としてだった。プライマリーケア(PC)を提供する家庭医(GP)が不足し、特に過疎地は深刻な問題だったから。

構想としてはPCを提供できるNPを作り出し医師不足の場所へ送り込む。病状は安定していて、基本的なPCの知識で対応できる患者が対象だった。

過疎地でのポジションは村や町のPCクリニック。村民、町民全体の健康を預かる。都会では医師が嫌がる患者層へのPCがNPへ向けられた。それは移民層、貧困層、高齢者だった。一筋縄ではいかない複雑なPCがNPに要求された。

GPの受け持ち患者数は大体1500〜2000人。NPは200〜500人。GPが患者と過ごす時間は5-10分。NPは20-30分。理由はNPは難しい患者で、昨日書いたように医師に比べ知識は限られているので診察にも時間がかかるからだ。

NPが誕生した当初、州民はNPを拒絶した。GPがいないからNPで補う。GPを一級と言うならNPは2級のケア。低いケアを受けるのは嫌だと。しかし蓋を開けてみればNPのケアを好む人が多くなった。それはやはり診察に時間をかけてくれるから患者は丁寧に診察してもらっていると感じ、訴えもよく聞いてもらった上での診断、治療だと感じるからだ。

GPほど知識のないNPに診てもらうのは不安だと思う人もいた。NP自身だってそれは重々承知だ。だから私たちは丁寧に診察を行う。下調べも良くする。学会や医学雑誌で最新のエビデンスを見逃さない。それは自分を守る為であり州民を守る為でもあるから。患者数のボリュームは同じでなくてもGPと同じPCを提供している。

反感を買うこと承知で書く。私はこれがNPの良さであるとも思う。スタートラインがGPと異なるから、慎重に仕事ができる事がNPの強みだと。大学や研修医時代に十分な知識を得たからと学会にも勉強会にも行かないGPは多い。ガイドラインが変わっても昔のやり方にしがみつくGPも。

教科書しかなかった昔。現代の情報の伝達の速さは半端ではない。病態生理の基本は変わらないが(ミクロな新発見を除いて)診断、治療方法はどんどん変わっていっている。過去5年に販売となった慢性疾患の治療薬の数はとても多く、それを反映してガイドラインはガラリと変わった。そう言う時代だからこそNPはBC州で成功を収めたのではないでしょうか?

こう考えると昨日の研修が???な理由がわかる。加速する医療の進化について行けなければ置いてけぼりをくらう。それだけです。


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