走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

性的暴力を受けた後に

2016年08月30日 | 仕事
週末は裁縫をしていました。末娘の部屋にウィンドーシートを付けたくてそのカバーと筒型のクッションのカバーを2枚。簡単でした。ま、ミシンに向かったからか腰や首が痛くなり、あいたたた、と久しぶりにマッサージやカイロを予約しました。こちらはその作品。



さてさて、その末娘を妊娠中の頃にカジュアルのポジションでSANE コースの募集がありました。
Sexual
Asult
Nurse
Examiner
の略でSANE と呼びます。性的暴力を受けた人を診察するナースです。知らない職業だったので説明会に行ってみました。

救急室から要請があった時に出勤。しかしシフト中はポケベル(いや〜あの時代はまだそうだった)を持っているので待機料金がもらえ、呼ばれたら30分以内に救急室に来れる距離にいる事が条件。
仕事の内容は被害者の心と体のケア、法的物的証拠の採集、法的手続きなど本人の希望に沿ってアシストすること。

その道何年のナースは言っていました。1:1の看護がじっくり行える、と。その頃はとても忙しいステップダウンユニットで働いていて、ナースコールの嵐の中で毎日働いていました。雑音なしに1人の患者に集中できる。夢のような職業に思えました。

そして、そのナースが言っていたことがもう1つ。SANEだと言うと辛い過去を持つ女性に過去を打ち明けられることが多いと。カナダは社交社会。教会でも近所でも職場でもパーティーは多い。夫婦同伴で出席も多い。そう言うところに行くと仕事の事を聞かれる。そうすると伴侶がいない所で、打明け話が始まると。それほど過去を隠して生きている人が多いと言っていた。被害に遭う人の全てが警察に通報するわけではない。リベンジを恐れ、社会の目を恐れ、泣き寝入りする人が昔は多かったとか。

今はプライバシーの保護、パブリケケーションバンと言う法律も整備され、メディアが被害者の情報を公表すれば犯罪となる。損害賠償だって請求できる。被害者の情報が手参加者厚く守られているのだ。

今、日本で話題になっている暴行事件の被害者の方の心の状態が気になる。個よりも社会を優先する日本。それに乗じて個人の権利が踏みにじられているようで心が痛む。

ネットで調べてみました。日本では相談先のようなホットラインはあるようですが、全国共通の法的や医療的なシステムは存在していないようですね。早急なシステム設置を願いたいものです。

北米に在住の方:
知らない方のために情報を。もし性的暴力を受けた時はそのまま直接、法的物的証拠を採取してくれる場所へ行かなければなりません。汚らわしいと思いシャワーを浴びてしまう人がいます。証拠は性器や口内だけでなく、髪の毛、爪、衣服にも付着しているので、全てを1つ1つ丁寧に採取しなければなりません。SANEはそう言う事を熟知しているナースです。どこの病院にもいるわけではありません。指定された病院のみです。私の働いているHAではサーレーとアボツの2つです。間違って他の病院へ行った場合、指定病院に行く事を説明してもらえます。

性的暴力の対象は女性だけではありません。男性、子供そして老人もです。こう言う事のお世話にならないのが一番ですが、もしもの時の為に知っておくと便利です。SANEに会うことが通報になるのではありません。それに関わりなく証拠の採取(後で考えが変わった時の為に)やアフターケア(心のケアのみならず性病、妊娠のケアも含む)をするためです。とりあえずプロに会いケアを受けましょう。

で、話は戻ってSANEコースの受講はかなり迷ったけど断りました。返事をする頃ちょうどホスピスでの採用が決まったので、新しい事を2つ同時には始められないと思い。それきりです。




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