走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

勘違いされた???

2019年12月17日 | 仕事

このブログでも何度も書きましたが高度実践看護師(APN)にとってミクロとマクロの視点が重要です。夏の東京でのシンポジウムに参加され、午後の私のワークショップに参加された方は特にその重要性の理由が理解できたと思います。

しかし最近思うのですが、もしかして勘違いされた????

セッション後に耳にした事が、看護師でも「公衆衛生的な視点」が大切なんですね、と。

この「公衆衛生的な視点」と言う感想を聞き逃していたように思うようになりました。看護学と公衆衛生学は異なる学問です。公衆衛生学を学ぶべきだとは言いませんでした。言いたかったことは目の前にいる患者をみているだけでは見えてこない問題を見えるようにする方法として、マクロレベルでの全人的な視点。つまり生活や社会、政治的(システム的な)な背景を理解し集団として介入する必要性があると言う事が言いたかった。ここが修士以上の力の見せ所です。

で、その為には統計を読み解く力と数字を扱う力が必要とも言いました。

統計を読み解く力とは何でしょうか?午前の部で朝倉が研究とEBPについて話しました。詳しく知りたい方は是非午前の部のビデオを購入してくださいませ。

これまた日本の方が誤解されていることです。以前にも書きましたが、統計学を詳しく学ぶことは看護のアカデミアやスカラーと呼ばれる研究者には必須です。しかしAPNには統計をクリティークできるレベルの統計学の理解があれば良いのです。実践者は研究者ではないから。シンポジウムで朝倉も言っていましたが研究者と実践者(APN)は違います(もちろん実践者から研究者へキャリアチェンジをする人や、朝倉のように実践者と研究者を兼ねている人もいます)。私のようにナースプラクティショナー(NP)で診療をする立場であれば、EBPはとてもとても重要です。EBPであるかどうかを見極める治療関係の統計学をクリティークする力は必須ですが、毎日の診療の中で一つ一つの研究を吟味する時間はありません。ビデオの中で伊東やキャンターも言っていますが、便利なサイトを利用して、時間短縮を狙います。

で、先の話題に戻って統計を読み解く力とは、、、統計学の知識そのものプラスとしてとても重要なのが看護学の視点です。私が大学院在学中の統計学を受けていた時にした事は、統計学の知識そのものも勿論ですが、プラスそれを看護にアプライして、集団にどう効果的に介入するかのディスカッションです。そう言う連鎖的な作業の繰り返しの結果、何を使い、どのアングルから評価するのか、システムのギャップなどを実践と絡めて、級友や教授とディスカッションするうちに、マクロレベルの自分の看護のビジョンが持てるようになりました。

何が言いたいかと言うと統計学を詳しく勉強する事だけが私がワークショップで言っていた事に繋がるのではありません。

以前にも書きましたが、もし研究者にならずして研究をやってみたいと思うのなら、統計学のエキスパートになる必要はありません。統計のエキスパートに研究チームに加わってもらえば良いのです。北米では学部を超えたチームを作って研究する事は普通に起こります。研究チームに加わらずともコンサルタントとして助言をもらうのも手です。もし研究者になって、自分でしっかり統計を使った研究者になりたいと思うなら博士号の取得をお勧めします。研究者になるのか、研究を一度だけしたいのかで統計学を学ぶ量が変わると言う事です。

修士以上の看護学的な思考過程はそう簡単に手に入れられるものではありません。統計学のみならず全ての学科を通して似たようなディスカッションの繰り返しで得られました。日本にはこのような後輩を育てる事ができる世界と並ぶ看護教育者が希薄なのに院は乱立したと言う問題がある背景は分かっているのですがね、、、勘違いされている方がいたら嫌なので書いてみました。

そして蛇足ですが、仕事上研究をしないといけないからね、、、なんて言う事を言っている人には看護研究を舐めるんじゃない!と喝を入れたくなります。是非こちらを読んでくださいませ。修士を持っていようが看護論文のクリティークのやり方もわからないような方や自分のビジョンもないような方に研究ができるわけないし、仕事の傍にちょこちょこすれば出来るようなものではないのですからね。そんな事を貴方に課す上司も研究がなんぞやEBPが何なのかもわかっていない証拠ですからね!看護研究は小学生の夏休み研究とは違います!!!!

シンポジウムに来た方も、来なかった方も何度もビデオの視聴を繰り返し演者が伝えたい事をしっかりと咀嚼して欲しいと思います。
ビデオの購入はこちらから





写真は今年の母校のリサーチレポートです。22ページも読み応えある数々の功績がわかります。これが世界で言う世界の看護研究ですよ!研究費も日本の方にとって驚くような金額でしょうね(悲










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