走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

叫び

2014年12月11日 | 仕事
最近非常に忙しい。患者数が多いのもだが、一人一人のケースが重すぎる、、新患は難しいケースばかりで、問診をしながら顔が青ざめそうになる。

その筆頭がラリー、58歳のホームレスのおじさん。昨年襲われて脊髄を損傷、脾臓も失い、三途の川から2度生還した方。

足の感覚がなく1ヶ月前に焚き火で暖をとっていた時、火の中で自分の足が燃えていたことに気づかなかった。そしてその後も火傷を放置。ホームレスアウトリーチワーカーのデニーに呼ばれて診察に向かった。火傷のあとは思ったより悪くなかった。抗生物質の内服と毎日の包交。骨が感染しているかもとレントゲンに行ってもらう。問診をとって愕然。自殺企図、、、前日、2回も道路に身を投げてERに行っている。病院のレコードを見ると素晴らしいぐらい頻回にERへいろんな理由で訪れている。はっきりしたメンタルヘルスの診断はない。しかし襲った人を殺したい気持ちははっきりあるようで殺意を話す。警察の中でも一目置かれているラリー。

火傷の治療は非常に難しい。訪問看護のクリニックに行けば色々なプロダクトが使える。紹介したが待ち状態。長い患者リストで順番が回ってくるまで私の下での治療。

そして今は冬。BC州は雨の冬。毎日土砂降り。なのでラリーはいつもずぶ濡れの靴と靴下で登場。足はまるで長い間お風呂にでも入っていたかのようにふやけ、、、創はどんどん悪くなる。デニーに頼んで長靴を買ってもらった。
しかし履けない。損傷で足首が動かない。紐やチャックの靴だとそこから水が侵入。感覚がないので水たまりを歩いていることも気づかないラリー。そしてブッシュキャンプに行くためには大抵ぬかるみを歩き続ける。

抗生物質の飲み忘れ、予約を忘れることも頻回。処方した感染防止用のクリームを失くす、そのくせ睡眠薬は処方以上に飲むし、、危ないったらありゃしない。薬剤師に頼んで一日ずつの処方にしてもらったり、、、、
私が、ぐとぐち質問をすると突如表情が変わり、やっぱり自分は死んだ方がいいんだと言い出すし、、、。

で、レントゲンの結果、骨まで感染していることが判明。点滴で抗生物質を投与しなければならない。ここまで来ると感染の専門家の介入が必要。しかし我が街にはなく、隣町まで通わなければならない。誰が毎日連れて行くんだ?それにラリーは薬物使用者。外来抗生物質点滴治療には血管の確保でPICCラインなるものを入れるのだが。薬物使用者は禁忌。だって勝手に使ってしまい敗血症とかになるから。だーどうしたらいいんだ?!紹介を出したら診てくれるような返事は来たけど。車の手配やら、彼が時間通り現れるか非常に不安。

足の感覚がない人に起こりやすい足の状態がチャーコルフット。足底の体重移動がうまくいかないためには筋肉などが移動してしまう。手術が必要になることも。
その兆候も見られるのだ。足底の形が変形し出している。そうなったらクラッチを使って体重をかけないように10週ぐらい安静にしなければならない。そんなことを守ってくれるような人には見えない。
そもそも、神経障害がある人はチャーコルフット予防のために特別な靴が必要だ。なんでも昔は履いていたと言う。皮膚が合わなかったからと言う理由で何処かに捨てたって、、、、7万円ぐらいするんだよ!その靴!!!!
OMG!

あーラリー!私は責任に押しつぶされそう、、、、。


ラリーを探し回っていた時に見つけたブッシュキャンプの廃墟


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