走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

変化

2014年12月12日 | 仕事
ベテラン精神科看護師のベスと話をした。精神科看護師と言ってもいろいろな分野がある。彼女は拒食症専門の治療センターで6年、救急精神科で6年、そして今のコミュニティー精神科ケアマネジャー。彼女の知識量は凄いし、患者さんへの対応の仕方も素晴らしいので、わからないことや困ったことがあるとついついベスに電話を入れてしまう。

最近かなり疲れ気味の私。偶然ベスとで会い立ち話。拒食症治療や薬物依存の治療の難しさに愚痴を漏らした私。

薬をやめたいと言いながらも使用の道に走ってしまう。自分の無力感を感じる。

そんな私にベスの一言。
誰にとってもいかなる状態に置かれている人でも「変化」は一大決心。一歩を踏み出すのも大変。慣れた環境ほど居心地の良いものをはない。楽な道を選ぶのが人間の習性だ。慣れた環境にいることが自分を破滅させるとわかっていてもだ。だからこのままではダメだと気づくだけでは不十分。荊の道を選ぶ決心がつき、一歩を踏み出すまでは、繰り返しは当たり前。そればかりは患者自身が決心しなければならず、私たちのせいではない。まるで壊れたレコードのように同じことを繰り返しているように思えても無駄にはならない。いつか届くからと。

あーそうだよ。「変化」は基本中の基本でヘルスケアに働くものはもちろん学ぶ。忙しさと苛立ちのために忘れていた。こうやって改めて仲間から聞くと、またゼロに戻ってやり直せる気がした。少し元気のでた金曜の午後でした。



ブッシュキャンプは線路沿いに多くあるので、線路脇をたくさん歩く。

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2 コメント

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虚しさ (Kay)
2014-12-13 21:44:59
こんばんわ。
いつも楽しく拝見させていただいております。
オーストラリアでRNをしているKayです。
ブログを読んで、私もがんばらなきゃ!と元気をもらうと同時にとても勉強になることばかりです。

今日のエントリーでも取り上げられていましたが、
いつもブログを拝見していて、聞きたいことがありました。
それは「虚しさを感じないのか?どうしてここまでがんばれるのでしょうか?」と言うことです。

私は一般内科病棟で勤務しておりますが、私の病棟にも「アルコールウィズドローアルの患者さん」「ドラックのウィズドローアルの患者さん」「拒食症の患者さん」が入院してこられます。

大抵の患者さんは良くなっても現状よりも悪くなって戻ってきます。
悪くなるたびに戻ってきて、病棟で亡くなった患者さんも沢山います。 みんな、お酒やドラッグが抜けると凄く良い人なんです。 私は公立病院勤務なので、この病院では患者さんは入院費、治療費を払わずに治療を受けることが出来ます。 そして、良くなると生活保護を受けてお金が入るとまたお酒や薬に手を出す。。。

7年勤務して、凄く虚しく感じます。
別に、私は一人のナースでその患者さんを助けることは出来ないのですが、、、
私はきっと勉強不足だからそう思うのでしょうね。

その道に走ってしまった患者さんも、患者さんなりの理由や原因があったのだと思いますが、こうやって、働いて納める税金でお酒や薬を買って、体を壊したり、ODで病院に来て治療を受けて(その治療費だって税金から賄われている)良くなって、もしくは調子が良くなると自己退院して、また生活保護で薬や長家の繰り返し。。。

最近では悔しささえ覚えます。
私はこの人たちとほんのちょこっとしかかかわらないので、そう思うのでしょうか?
もしかしたら、この患者さんだって繰り返して繰り返して自立する人だっているのかもしれませんよね。

愚痴になってしまいました。
すいません。

カナダはどんどん寒くなっている頃でしょう、お体を大事になさってくださいね。

これからも、応援しております。
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正直なコメントをありがとう (みか)
2014-12-14 01:51:17
Kayさんお久しぶりです。毎回読んでいてくれるなんて大変嬉しいです!

私も内科病棟で働いていた頃同じように思っていました。死んでしまう人、入院の度に悪くなる人、とても虚しく腹正しく思っていました。

大学院に進んで看護や医療を違う視点で見るようになりました。個の責任から社会の責任へ。ヨーロッパの社会福祉国では進んでいる考え方です。しかし米、カナダは資本主義の下疾病の原因を個に押し付けて社会的名責任を取ろうとしていませんよね。

例えば、肥満と糖尿病。不健康な食事をする人が悪い。しかしポップやジャンクフードが健康の害とわかっているにも関わらず商品として市場に出す。それは会社の利益を追求して国民の健康を二の次に考えているからです。
同じ$50でも私なら野菜や果物を購入する。何故この人たちはポップやジャンクフードを購入するのか?それは価格の安さです。貧困層の人のように食費に限りがあれば安くて高カロリーの物を買うのが一番。それがピザであり冷凍食品、かんづめとなるのです。ポップで空腹を埋めるのです。

大学進学中は訪問看護をしました。悪名高い貧困層の地域です。その時のショックはかなりのものでした。病院では皆が同じガウンを着ていて、一体どんな暮らしが疾病に影響を与えているのか考えたこともありませんでした。訪問で行く家々は狭く、古く、古い家電製品たち。一般人の想像を絶するものです。こんなところでは料理をする気も失せますよ。大型冷蔵庫もないから食品の保存も難しいし。病気になって働けなくなって生活保護が政府からもらえてもそれは微々たるもの。こう言うところしか住めないのです。そして食費に当てる金額は一人当たり月に$100-150で生きている。何の娯楽もなく煙草や薬物に快楽を求める姿は簡単に想像が出来ます。

社会の図式はこのbad vicious circle にハマると逃げ出せないようになっているのです。

健康で職があればそれなりに生きていける国。働きがしらが病気になれば個人の崩壊そして家族、特に子供の未来も崩壊させてしまうのです。

貧困層は北米で確実に増えています。それは統計でも明らかなように資本主義による利益追求に比例しています。資本は政治と強く連携しているのでそこからの抜本改革は非常に困難なのです。

私の患者で薬物依存者は数パーセントが普通の家庭で育ちトラウマもない。しかし高校で大学で職場でパーティーなどで薬物に手を出して、、、と言う人たち。残りの大半は虐待、家庭内暴力、家族がすでに薬物依存者で煙草、アルコール、薬物初経験は早い人で8ー14歳ぐらいから始めています。

自分を形成する大事な時期に家族から教わったものが薬物と暴力。普通に育てと言う方が無理なのです。こう言う患者を作っているのは社会の責任。そう思うと虚しさは軽減しますよ。

政治とヘルスケアの書物を読むことを勧めます。視点が変わりグローバルな目線を養うことが出来まよ。
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