走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

ダブルパンチ

2014年09月29日 | 仕事
ロンダは私と同い年。アルコール依存、鬱病で何度も仕事を辞め、家族との縁もなくなり、社会復帰に向けてリハビリ中。デーンっとした太っ腹のお母ちゃんと言う印象がある。いつも診察中に言い訳が多く、長い診察を嫌う。なので過去に何度か診察をしたがいつもフルの問診ができないし、検査にも行かない。薬の飲み忘れも多い。

そんなロンダが社会復帰の6ヶ月の職業トレーニングを終えたのだが終了試験に合格しない。アドバイザーにいろいろ促せられない限りシャワーを浴びることも忘れてしまう。と自立は無理そうだから障害者の申請を勧められてやって来た。今日はちゃんと自分と向き合うつもりで来たと言う彼女。

我慢強くじっと椅子に座って、質問にきちんと返答をしてくれた。申請に必要な長い問診を終えると彼女の障害の高さが浮き彫りになった。障害があっても働けないだけで一人で暮らせる人はいる。しかしロンダの場合、できないことが多すぎて自立は見込めそうにない。アドバイザーの助けがあったにせよ、よく今まで職業トレーニングをこなして来たと感心した。さぞかし辛かっただろうと思った。いつもイライラして逃げ腰だった理由がわかった。その一方彼女のニーズに合った介護がある住居を見つけること、メンタルヘルスのケアマネが必要なことなど私の治療計画も変わった。

診察を終えてロンダはありがとうわかってくれてと。寮でルームメイトとの喧嘩も絶えなかった彼女。自分の怒りを抑えて暴力沙汰にならないようにするだけで手一杯だったと。がんばってもできない自分への苛立ち、絶望、悔しさ、怒り。立派な母になろう、社会人になろう、お酒を絶とうと何度も挑戦してもダメと言う結果に行き着く。この人はなんて辛い人生を送って来たのだと胸が痛くなった。

ウィリアムとロンダ。メンタルヘルスの痛い現実にダブルパンチで落ち込んだ先週でした。

こんなのはいかがでしょう?廃屋にホームレスが住み着いていると聞き行ってみた。ひどいあれようで住んでいる気配なし。一応この土地は売りに出てるんですけど、誰がこのゴミを片付けるのでしょうね?!



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