走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

医療全体のシフトの必要性

2019年04月15日 | 仕事
私は看護師のキャリアを病院看護師から始めました。日本ではそれ以外の就職先が全く考えられませんでした。カナダへ来てからもやはり病院の急性期病棟からスタートしました。ホスピス緩和ケアを始めた頃、ホスピス病床は急性期のベッド数には数えられず、療養型病床と数えられました。急性期型病床と療養型病床では政府から支払われる金額は異なり、スタッフの数や職種の割合も変わります。ここで違う医療を経験しました。

そして次に私は訪問看護に興味を持ちました。そして病院や療養型施設以外で行われる医療を知り体験しました。これまた政府から支払われる料金体制や患者負担など病院で働いていた頃には全く知らなかった事を学びました。この頃大学院へ行き始め高度な看護理論を学んだことは一連の経験を裏打ちしていく事となりました。

ナースプラクティショナーとなり精神疾患系で在宅や施設で生活されている患者やホームレスや薬物依存がある患者たちののプライマリーケアを行うようになりました。ここで今までの看護師としての経験と知識と大学院で学んだ看護理論が全て統合して開花したと思っています。

もし急性病棟しか知らず、大学院へ行っていたら、学んだ事が具体化できず苦しんだと思います。疾病が抱える問題は疾病の病態生理だけではなく生活や財政、政治(社会)が大きく関わっている事を理解でき、それを自分のケアに生かす事が出来たのも自分が歩いてきた道があったからこそ、と思っています。

なんだか抽象的な事で分かりにくいですね。何が言いたいかと言うと医療はここ十数年、急性期から療養型、在宅型へシフトしてきているのです。急性期にお金をつぎ込むだけでは膨大な医療費は抑えられない、お金を有効に医療に投資するのなら予防、在宅、療養型へ注ぎ込まなければならないと先進国は動いてきているのです。意識的にしたのではないけれど偶然にその流れを自分のキャリアの中で感じ取れたのはとてもラッキーだったと思っています。

以前にも書きましたが、日本はここでも出遅れています。診療報酬体制をどう変えれば、病院以外の医療が有効的に動くのか、どんなインフラを構築すれば良いのかビジョンが持てないように思えます。医師、薬剤師、看護師、保健師、助産師、理学療法士、作業療法士、呼吸療法士、、、、どの医療分野からも政府に物申す事が出来る学識者が日本にはいないのですか?それとも政府がそれらの声を無視しているのですか?

超高齢化社会はそこまでやってきています。いえいえそれだけではありません。引きこもり問題、精神科疾患系患者の長期入院問題、平均所得の低下、進む少子化。日本の未来の雲行きはかなり怪しいですよ。



綿毛に未来の希望を乗せて

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