走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

投資の具体例

2019年04月16日 | 仕事
おととい地域の薬局が看護師を雇い、看護師が服薬確認をしたり、インスリンの投与をしたり、、、と独居の方のケアをしていると書きました。

看護師を雇うと言うことは、薬局はお給料を支払わなければならない。その資金源はどこから来るのでしょうか?

それは政府からです。

1日ずつの処方には政府からおよそ日本円で1日あたり3000円ぐらい別途に支払われます。1ヶ月で9万円。10人いれば90万円のエキストラの収入です。これはかなり美味しい話。

もともと1日ずつの処方は麻薬の依存治療のために始まりました。管理が厳しい薬なので服薬確認をしなければなりません。飲み込んだふりをして袖に隠したり、口から吐き出し、それを道端で高値で売るという強者がいるので、確実に服薬確認をするには時間がかかるとこのような特別金が支払われるようになりました。薬局は薬物依存者が多い地域にこぞってお店を構えた時期もありました。

そして1日ずつの処方が薬物依存者だけではなく薬の飲み忘れが多い独居の老人や、精神科系疾患の患者に有効と、そこに気づき服薬確認を在宅でする、そのためには配達も毎日しますよ、と言うサービスが生まれました。法の規制で投薬は介護職はできないようになっています。薬剤師が出向くのでは効率が悪い(運転の時間に他の薬剤師ならではの仕事が出来る)。なので看護師、特に給与の安い准看護師を雇うようになりました。

うちは血糖値も測ります。うちは血圧も測定します!と付加価値はどんどんついて行きました。

もちろんカナダには訪問看護も確立しています。しかしこちらは介護度が高い方の療養を在宅で行なっている人のケアが中心で、看護師はケースマネージメント、症状観察、褥瘡のケア、術後のケア、緩和ケアが行われ、療養上の世話はケアマネが計画する時間割り当てにより介護士が行なっています。

上記に当てはまらない人には訪問看護は行われません。しかし毎日薬を服用していれば入院を避ける事が出来る程度の疾患の人は多く、その人にふさわしいのがこの薬局からのケアになったと言うわけです。

私もこのサービスで入退院の繰り返しが激減したケースが何人かあります。

一人当たり1日3000円が高いか低いか?カナダでは一般病床にかかるコストは1人一晩でおよそ20万円と言われているので3000円で20万円を節約できるのなら安いもんです。

もちろん審査は厳しく、処方者として書かなければならない書類やルールに沿って行わなければなりません。悪用防止策は既にあると言うこと。

在宅/地域医療に投資する事で急性期医療の支出を抑える良い例だと思い書いてみました。目から鱗ですか?



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