行雲流水

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酒井雄哉師が『絆』を語る

2012年01月27日 | 禅の心
「絆」っていう言葉があるでしょ。親子の絆とか、夫婦の絆っていうよね。この絆が今は、あまり大事にされなくなってきちゃってる。
 「絆」っていうのは、もともとは牛や馬をつないでおく綱のことだったんだ。馬の鼻に輪がついていて、そこに紐が結びつけてあるでしょ。あの紐のことを「絆」って言っていたらしい。その紐を人間が引っ張ってリードしていた。
 大事なのはその紐を持ってリードする人間なんだ。今は、絆を持ってリードする人が少なくなっちゃった。いい道へ導いてあげる人がいて、その人に導いてもらう。それがもともとは「絆」なんだよ。
 だけども今は「絆」っていうと単なる「つながり」のことだと思っている人が多いよね。
本来の人間の「絆」というのは、自分をいい方向に導いてくれる人がいて、導いてもらう。それで、その人に感謝するから「絆」が生まれていく。
 親にいい方向に導いてもらって、子どもはそれに感謝して、「親子の絆」が生まれる。お兄さんやお姉さんにいい方向に導いてもらって、「兄弟姉妹の絆」が生まれる。お師匠さんに導いてもらって「師匠と弟子の絆」が生まれる。夫婦の場合は、夫婦で導き合って「夫婦の絆」が生まれるんだからね。
昔は、隣のおじさん、おばさんも、悪いことをすると叱ってくれたんだ。僕なんか、豆腐屋のばあさんに、竹箒を持って追いかけられたよ。(笑)こら、悪戯するんじゃないよって、導いてくれたのかなあ。(笑)
今は、竹箒を持って子どもを追いかけたりしたら、「暴力だ!」って言われて訴えられちゃうからね。みんなお上品になっちゃった。(笑)
そんなふうで、子どもたちがご近所の人たちから導いてもらってないから、「ご近所の絆」もなくなってギスギスするんじゃないのかな
(『賢バカになっちゃいけないよ』(PHP研究所)より)

酒井雄哉師

1926年(大正15年)大阪市に生まれる
1966年(昭和42年)比叡山に入る
1973年(昭和48年)から1987年(昭和52年)まで、史上3人目となる2度の千日回峰行満行を達成する。

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