【阪大入試問題】大学に在職中、「大学入試センター試験」ほど緊張した行事はない。当番日には定刻前に、大会議室に集合し、試験本部からの指示を聞き、時計合わせをした後に、副試験監督の助教授と共に試験会場に赴いた。
校内放送での指示に基づいて、試験要綱を読み上げ、「開始!」と指示し、時間が来ると「終り!」と声を出し、答案用紙を回収する。日本中、1秒の狂いもなく、これが行われていると思うと、何やら「全体主義社会」にいるような気がした。
もともと大学入試は、旧帝大を中心とした国立「一期校」と新設国立を中心とした国立「二期校」に分かれていた。後者は受験日が遅れており、前者の「滑り止め」になっていた。よって明らかな格差があった。これを止め、フランスの「バカロレア」、ドイツの「アビテュア」のように、「大学進学資格試験」として始まったのが、「共通一次試験」で、後の「大学入試センター試験」だ。だが各大学のエゴのため、これも形骸化してしまった。
1/8の新聞は「毎日」を除き、各紙が「阪大入試・物理学問題」のいいかげんさについて報じた。(「産経」が一番詳しかった。)が、各紙とも物理の問題全文と具体的にどの部分に問題があったのかを報じなかった。(唯一、NHK・TVが出題の問題文を流しただけだった。)
これは読者としては大いに不満である。阪大の出題に手落ちがあったというのなら、読者が検証できるように、別の面で問題そのものを再掲するのがすじではないか。
明らかに阪大当局の報道をたれ流したとしか思えない紙面構成を見て、「これではフェイクニュースと変わらないな…」と思ったことだ。
事件の本質は問題の物理学の出題を担当した教授二人が、第一問の解が複数あることに気づかなかった点にある。自己の「正解」に基づいて、第二問以下を設問したのだ。これ自体は設問した教授が「アホだった」というにつきるだろう。個人ミスだ。
1966(昭和41)年、広島大学で大学入試問題の漏洩事件が起ったことがある。当時、広島大の入試問題の印刷は、漏洩を恐れ吉島町にあった刑務所内で印刷していた。そのゲラ刷りが、外部に持ち出され、入試業者の手に渡り、転売されたのだ。その詳細は私も知らない。
事務官3人が懲戒免職になり、学長が引責辞職している。
http://home.hiroshima-u.ac.jp/hua/chronika/chro04.html
不正に入手した問題で合格した学生の数は記憶にないが、医学部入学を含めて、全員辞退するか、取り消しになった。
今度の事件で、大阪大学がどのようなかたちで、自らの責任を明らかにするか、注目したい。
〔1/13付記〕各紙が「阪大の処分」を報じていた。「毎日が」38行ともっとも詳しい。
<学長は月報の10%を3ヶ月分、他の常勤役員9人は月報の10%を1ヶ月分返納し、総額は約114万円になり、これを追加合格になった受験生への補償費の一部にする>という。
出題ミスの原因についてはこれから「検証委員会」を立ち上げて調べるそうだ。「4答1択」形式の設題で、2答(新聞によっては3答とも)の正解がある設問そのものがおかしいので、出題者と入試委員会の責任は大きいと思うが、そこが解明されないうちに上層部の処分を決定した。場合によっては上層部の管理責任はもっと重いかも知れないのに、さっさと軽い処分を決めた。「関西の大学らしくみみっちいところが良い」と言ってしまえばそれまでだ。
「記事転載は事前に著者の許可が必要です。必ずご連絡いただきますようお願いいたします」
校内放送での指示に基づいて、試験要綱を読み上げ、「開始!」と指示し、時間が来ると「終り!」と声を出し、答案用紙を回収する。日本中、1秒の狂いもなく、これが行われていると思うと、何やら「全体主義社会」にいるような気がした。
もともと大学入試は、旧帝大を中心とした国立「一期校」と新設国立を中心とした国立「二期校」に分かれていた。後者は受験日が遅れており、前者の「滑り止め」になっていた。よって明らかな格差があった。これを止め、フランスの「バカロレア」、ドイツの「アビテュア」のように、「大学進学資格試験」として始まったのが、「共通一次試験」で、後の「大学入試センター試験」だ。だが各大学のエゴのため、これも形骸化してしまった。
1/8の新聞は「毎日」を除き、各紙が「阪大入試・物理学問題」のいいかげんさについて報じた。(「産経」が一番詳しかった。)が、各紙とも物理の問題全文と具体的にどの部分に問題があったのかを報じなかった。(唯一、NHK・TVが出題の問題文を流しただけだった。)
これは読者としては大いに不満である。阪大の出題に手落ちがあったというのなら、読者が検証できるように、別の面で問題そのものを再掲するのがすじではないか。
明らかに阪大当局の報道をたれ流したとしか思えない紙面構成を見て、「これではフェイクニュースと変わらないな…」と思ったことだ。
事件の本質は問題の物理学の出題を担当した教授二人が、第一問の解が複数あることに気づかなかった点にある。自己の「正解」に基づいて、第二問以下を設問したのだ。これ自体は設問した教授が「アホだった」というにつきるだろう。個人ミスだ。
1966(昭和41)年、広島大学で大学入試問題の漏洩事件が起ったことがある。当時、広島大の入試問題の印刷は、漏洩を恐れ吉島町にあった刑務所内で印刷していた。そのゲラ刷りが、外部に持ち出され、入試業者の手に渡り、転売されたのだ。その詳細は私も知らない。
事務官3人が懲戒免職になり、学長が引責辞職している。
http://home.hiroshima-u.ac.jp/hua/chronika/chro04.html
不正に入手した問題で合格した学生の数は記憶にないが、医学部入学を含めて、全員辞退するか、取り消しになった。
今度の事件で、大阪大学がどのようなかたちで、自らの責任を明らかにするか、注目したい。
〔1/13付記〕各紙が「阪大の処分」を報じていた。「毎日が」38行ともっとも詳しい。
<学長は月報の10%を3ヶ月分、他の常勤役員9人は月報の10%を1ヶ月分返納し、総額は約114万円になり、これを追加合格になった受験生への補償費の一部にする>という。
出題ミスの原因についてはこれから「検証委員会」を立ち上げて調べるそうだ。「4答1択」形式の設題で、2答(新聞によっては3答とも)の正解がある設問そのものがおかしいので、出題者と入試委員会の責任は大きいと思うが、そこが解明されないうちに上層部の処分を決定した。場合によっては上層部の管理責任はもっと重いかも知れないのに、さっさと軽い処分を決めた。「関西の大学らしくみみっちいところが良い」と言ってしまえばそれまでだ。
「記事転載は事前に著者の許可が必要です。必ずご連絡いただきますようお願いいたします」