【火傷の治療】について、m3にこういう記事があった。
<「ラップ使うな」熱傷学会が勧告重篤な感染症の危険あり、特に乳幼児には禁忌
2012年11月8日 日本熱傷学会 カテゴリ: 一般内科疾患・一般外科疾患・救急
日本熱傷学会の川上重彦代表理事は11月5日、熱傷に対し食品用ラップなどの非医療材料を用いて湿潤環境下に管理する局所療法(いわゆるラップ療法)は行ってはならないとする勧告を発表した。
比較的深度が浅い熱傷に対し、創傷被覆材を用いて湿潤環境下に管理する方法は、一般的な治療法であると学会は認識している。医療材料である創傷被覆材には、常に感染には注意するよう明記されている一方、ラップなどの非医療材料にはそのような記載はない。学会によると、熱傷治療に精通していない医師がラップ療法を行い、未熟な管理を行った結果、感染症を生じたり、敗血症を起こして死亡したりする例が報告されているという。
学会は、「日本では、熱傷の局所療法に優れた医療材料が使用できる状況にある。医師が食品用ラップのような非医療材料を用いて治療を行うことは厳しく制限されるべき」と態度を示し、特に乳幼児は抵抗力が弱く、重篤な感染症の危険があるため決して用いてはならないと強く勧告した。>
サランラップという素材は、1965年頃日本の市場に登場したように記憶している。医学部の3年生の時だったと思うが、皮膚科の講義に比治山にあった放影硏(当時はABCC)から、アメリカ人女医さんが来て講義をしたが、そのなかに「火傷の治療にサランラップを使用するとよい」という話があった。すでに米国では利用されていたようだが、ラップそのものが日本では身近な素材でなかったので、私は「皮膚の傷にはラップを使用するもの」とだけ理解した。
食品用ラップが「細菌により汚染されている」という話は聞いたことがないし、ラップで保存した食べ物により食中毒が発生したという話も聞いたことがない。ラップのロール部分は密着しているので、菌の侵入は起こらない。汚染するとしたら、ロールと切り歯の間の空気中に露出しているわずかの部分である。しかしこの部分はたいてい手に持つので、食品をはじめものを覆う際には接着部としては使わず、余すのが常識だ。
ラップ療法で皮膚の創傷感染が生じるとすれば、1)皮膚常在菌によるもの、2)ラップ交換時に混入した菌によるもの、を考えるのが妥当だろう。
火傷は軽症から重症まで4段階に区分される:
Ⅰ度=皮膚の発赤。痛みが主体なので、冷水で冷却することが第一。表皮が破れていないので、感染の危険なし。「テラコートリル」のようなステロイド剤を塗り、泡が出るまで擦り込むとすぐに痛みは治まる。
Ⅱ度=水疱を形成するもの。本来はⅠ度の火傷でも手当が遅れるとⅡ度に発展することがある。できるだけ水疱を破裂させず、冷水で冷やし痛みを取り、消毒した木綿針で水を抜き、後はラップで巻いておけばよい。
水疱の皮は剥離した表皮であり、その下に新しい表皮の再生が起こるので、乾燥をさければ瘢痕形成をすることなく、元の状態に戻る。
Ⅲ度=表皮だけでなく真皮にも熱壊死が及んだもので、セーターなどに熱湯がかかり、脱ぐのが遅れると「火」でなくても、これが起こる。湯たんぽやアンカによる火傷もこうなる。熱の作用状況にもよるが、時に深い潰瘍を形成することがある。
この場合、壊死部は細菌感染の巣になりやすく、外科的に除去する必要がある。その後、欠損部には肉芽形成が生じる。
これを「瘢痕治癒」でなく「一次治癒」(原状回復)させるには、創部の乾燥を防ぐ、ラップ療法が有効なのである。
広島の原爆火傷の治療法には、医療材料が無く、むやみやたらにチンク油(亜鉛華と菜種油の混合物)を塗ったので、多くは瘢痕治癒して「ケロイド」となった。1970年頃、原爆の時の火傷治療で有名になった病院にアルバイトで行っていたが、まだチンク油が使われているのに驚いた記憶がある。
Ⅳ度=これは熱のために皮膚及び皮下組織に炭化が生じているもので、炎もしくは灼熱した金属が直接作用した場合に生じる。炭化部を外科的に除去しなければ再生は望めない。これをラップで治そうとする医者がいるとすれば、アホである。
皮膚の再生には、1)傷口の辺縁部からの表皮細胞の遊走、2)DNA合成が開始され新しく細胞分裂が起こる、という二つの機構が作用する。前者は受傷直後に始まり、後者は12時間後から始まる。従って火傷も「初期治療」が決定的に重要である。
「熱傷学会」の勧告は、火傷の程度分類をしないで、一律に「ラップ禁止」を主張するもので、病理学的にみると間違いである。
「医療用ラップ・メーカー」の工作があって、こういう声明になったのであろう。Ⅱ度までの火傷で医者に行く必要はない。テラコートリルがあれば自分で治せる。
<「ラップ使うな」熱傷学会が勧告重篤な感染症の危険あり、特に乳幼児には禁忌
2012年11月8日 日本熱傷学会 カテゴリ: 一般内科疾患・一般外科疾患・救急
日本熱傷学会の川上重彦代表理事は11月5日、熱傷に対し食品用ラップなどの非医療材料を用いて湿潤環境下に管理する局所療法(いわゆるラップ療法)は行ってはならないとする勧告を発表した。
比較的深度が浅い熱傷に対し、創傷被覆材を用いて湿潤環境下に管理する方法は、一般的な治療法であると学会は認識している。医療材料である創傷被覆材には、常に感染には注意するよう明記されている一方、ラップなどの非医療材料にはそのような記載はない。学会によると、熱傷治療に精通していない医師がラップ療法を行い、未熟な管理を行った結果、感染症を生じたり、敗血症を起こして死亡したりする例が報告されているという。
学会は、「日本では、熱傷の局所療法に優れた医療材料が使用できる状況にある。医師が食品用ラップのような非医療材料を用いて治療を行うことは厳しく制限されるべき」と態度を示し、特に乳幼児は抵抗力が弱く、重篤な感染症の危険があるため決して用いてはならないと強く勧告した。>
サランラップという素材は、1965年頃日本の市場に登場したように記憶している。医学部の3年生の時だったと思うが、皮膚科の講義に比治山にあった放影硏(当時はABCC)から、アメリカ人女医さんが来て講義をしたが、そのなかに「火傷の治療にサランラップを使用するとよい」という話があった。すでに米国では利用されていたようだが、ラップそのものが日本では身近な素材でなかったので、私は「皮膚の傷にはラップを使用するもの」とだけ理解した。
食品用ラップが「細菌により汚染されている」という話は聞いたことがないし、ラップで保存した食べ物により食中毒が発生したという話も聞いたことがない。ラップのロール部分は密着しているので、菌の侵入は起こらない。汚染するとしたら、ロールと切り歯の間の空気中に露出しているわずかの部分である。しかしこの部分はたいてい手に持つので、食品をはじめものを覆う際には接着部としては使わず、余すのが常識だ。
ラップ療法で皮膚の創傷感染が生じるとすれば、1)皮膚常在菌によるもの、2)ラップ交換時に混入した菌によるもの、を考えるのが妥当だろう。
火傷は軽症から重症まで4段階に区分される:
Ⅰ度=皮膚の発赤。痛みが主体なので、冷水で冷却することが第一。表皮が破れていないので、感染の危険なし。「テラコートリル」のようなステロイド剤を塗り、泡が出るまで擦り込むとすぐに痛みは治まる。
Ⅱ度=水疱を形成するもの。本来はⅠ度の火傷でも手当が遅れるとⅡ度に発展することがある。できるだけ水疱を破裂させず、冷水で冷やし痛みを取り、消毒した木綿針で水を抜き、後はラップで巻いておけばよい。
水疱の皮は剥離した表皮であり、その下に新しい表皮の再生が起こるので、乾燥をさければ瘢痕形成をすることなく、元の状態に戻る。
Ⅲ度=表皮だけでなく真皮にも熱壊死が及んだもので、セーターなどに熱湯がかかり、脱ぐのが遅れると「火」でなくても、これが起こる。湯たんぽやアンカによる火傷もこうなる。熱の作用状況にもよるが、時に深い潰瘍を形成することがある。
この場合、壊死部は細菌感染の巣になりやすく、外科的に除去する必要がある。その後、欠損部には肉芽形成が生じる。
これを「瘢痕治癒」でなく「一次治癒」(原状回復)させるには、創部の乾燥を防ぐ、ラップ療法が有効なのである。
広島の原爆火傷の治療法には、医療材料が無く、むやみやたらにチンク油(亜鉛華と菜種油の混合物)を塗ったので、多くは瘢痕治癒して「ケロイド」となった。1970年頃、原爆の時の火傷治療で有名になった病院にアルバイトで行っていたが、まだチンク油が使われているのに驚いた記憶がある。
Ⅳ度=これは熱のために皮膚及び皮下組織に炭化が生じているもので、炎もしくは灼熱した金属が直接作用した場合に生じる。炭化部を外科的に除去しなければ再生は望めない。これをラップで治そうとする医者がいるとすれば、アホである。
皮膚の再生には、1)傷口の辺縁部からの表皮細胞の遊走、2)DNA合成が開始され新しく細胞分裂が起こる、という二つの機構が作用する。前者は受傷直後に始まり、後者は12時間後から始まる。従って火傷も「初期治療」が決定的に重要である。
「熱傷学会」の勧告は、火傷の程度分類をしないで、一律に「ラップ禁止」を主張するもので、病理学的にみると間違いである。
「医療用ラップ・メーカー」の工作があって、こういう声明になったのであろう。Ⅱ度までの火傷で医者に行く必要はない。テラコートリルがあれば自分で治せる。
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