ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【罪なき者】森口記事続報 難波先生より

2012-10-13 22:28:35 | 難波紘二先生
【罪なき者】「汝らのうち、…石を投げよ」と新約聖書にある。昨日の「中国」には森口の記事が載っていなかったが、「共同」は配信したようだ。「時事」は配信していない。
 結局、「読売」、「日経」と「産経」が森口記事を報道し、「朝日」、「毎日」は報道しなかったようだ。(但し日経は2年前)
 「読売」、「共同」、「日経」は「検証記事を書く」と公表し、すでに読売は「森口の業績は捏造と断定」と土曜日の朝刊で報道している。
 「産経」は土曜日の「産経抄」で、「読売のスクープが大誤報だった」と書いているが、少なくとも「産経関西版」には読売と同じような「誤報」が載っていた。ちゃんと確かめてから書け。
 http://sankei.jp.msn.com/life/news/121013/trd12101303330002-n1.htm

 金曜日夜9時のNHKニュースを久し振りにみて、科学部の藪内ディレクターは事前に森口の取材をしたが、1)ボストン支局員により関連施設でのウラが取れなかった、2)森口の話に矛盾があった、などから放映を見あわせていたことがわかった。iPS細胞の臨床応用が成功したのが事実なら、これは世界的なビッグニュースで、まず「ネイチャー」のトップ論文に値する。
 http://www3.nhk.or.jp/news/web_tokushu/1012_02.html

 「旧石器捏造」事件のとき、帯広畜産大学の教授中野益男が「10万年前の石器からナウマン象の脂肪酸を検出した」と新聞発表していたことを知り、「ネイチャー」を調べたら論文として報告されていないことがわかった。そのとたん「これは捏造」と直感した。従来は3000年前の脂肪酸(洞窟からトウモロコシの脂肪酸を検出)が最古とされていた。それが10万年もさかのぼるなら、世界的大発見である。本物の科学者なら、「ネイチャー」に報告しないはずがない。しないのではなく、できないのだ、と思った。案の定、その通りだった。

 「報道ステーション」に佐野眞一が出ていて、「横並び報道」の危険性に警鐘を鳴らしていた。今回もその傾向があったが、幸い途中で止まってよかった。しかし問題は、「横並び」報道にあるのではなくて、メディア記者のあまりにも低脳さにあると思う。NHKはまだ科学部が取材していたからよかったが、他は社会部が取材したのではないか。今度のネタは社会部では対応できない。
 「読売」は「調査します」という報道を流したきり、その後、「音なしの構え」に移行した。過去記事もアクセスできなくなっている。

 ただ、<米ハーバード大学当局者は日本時間の12日朝、読売新聞の取材に対し、「iPS細胞移植に関する森口氏の話はうそだと確信している」と語り、今後、同氏の全研究成果を調査する方針を明らかにした。>
そうだから、米調査の結果は見えている。ORIも動くだろう。
 森口は、欧米の「科学社会」からは追放される。その名前と捏造の経歴は、ORIのHPに公開され、一切の科学研究費申請ができなくなる。もちろん彼を共同研究者とする研究にも補助はでなくなる。
 もし刑事罰に相当する犯罪があれば、FBIが動く。かつて研究材料を無断で持ち出そうとした日本人研究者が逮捕されたことがある。

 医科歯科大学は記者会見し、佐藤千史教授が釈明した。「自分はiPS細胞研究にはタッチしていない」というのだが、理由にならない。「名誉著者」にはなってはいけないことが、国際的ルールになっている。
医科歯科大のHPをのぞいてみて、目立つのが「研究者倫理」の強調だ。(そのくせ、研究者名簿が外部に公開されていない。今どき、珍しい横着さだ) 従って、当然佐藤教授は「連帯責任」をとるべきだ。
 もし一貫して騙されたと被害者面するのなら、森口を告訴すべきだ。それができないのなら、職を辞任すべきだろう。

 有名人で部下の「科学における不正」に共著者あるいは研究指導者として巻き込まれた人物に、免疫学のロバート・グッド、ノーベル賞受賞者のベナセラフがいるが、「知らなかった。騙された」という弁明は通用せず、いづれも社会的制裁を受けている。それが科学者社会の倫理である。それができないのなら、「医科歯科大学」ではなく「バカシカ大学」と改名しろ。

 「旧石器遺跡」捏造事件では、文化庁の岡村道雄は捏造を利用して文化庁の主任文化財調査官になったくせに、まったく責任をとらず定年まで勤め上げ、あつかましくも、「旧石器遺跡<捏造事件>」(山川出版, 2010)まで出版した。ふてぶてしい男だ。

 東大はもっとけしからん。先端研も東大病院も記者会見を開かない。調査委員会を立ち上げるという話もない。だいたい、日本の大学で一番に多額の国費を使いながら、ろくにノーベル賞受賞者も出さない。「医学生理学賞」はすべて京大ではないか。少しは恥を知れ。大学として「説明責任」を果たさないようでは、社会から見放されるだろう。

 共同研究者の三原誠というのは、東大病院形成外科の助教(助手)ですな。(本人は知らぬ間に投稿された、と釈明していた=NHK)
 http://www.h.u-tokyo.ac.jp/plastic/staff/index.html
 しかし、特任研究員を雇ったのは教授の光嶋勲なんだから、ちゃんとメディアに応対すべきであろう。
 それよりも、長年にわたり森口を雇っていた先端研の所長が会見すべきだろう。

 「再生医療」について、世人や企業の多くは無知から来る多大の夢を抱いている。それにつけ込んで「投資話」で詐欺が横行する恐れがある。すでに徳島で老人が500万円を騙し取られかかった事件が起きている。森口のような詐欺師を完全に叩きつぶすことが、そのような犯罪を予防し、第二第三の森口の出現を防ぐことになるのである。韓国でも2005年にソウル大学黄教授のES細胞捏造事件が起こったではないか。韓国はあの教訓を忘れてはいない。

 「社会的説明責任(アカウンタビリティ)」を無視したら、東大に明日はないと思ってほしい。最初に森口を雇った「先端研」の責任がもっとも思い。
 また、最初に就職した「医療経済研究機構」で何をしていたのか、誰が上司だったのか、どういう論文を書いたのか、これもきちんと調査すべきだ。

 NHKは<ニューヨークで今月10日開かれた国際学会で、日本人研究者の森口尚史氏が、iPS細胞から変化させた細胞を世界で初めてヒトに移植したと発表しました。>と報じているが、
 http://www3.nhk.or.jp/news/web_tokushu/1012_02.html
 「第7回インターリレーショナル幹細胞学会」のスピーカーと座長は合わせて30人ほどで、一般演題はすべて「ポスター」であるから、「発表」とは言えない。それに森口は発表時間には会場に姿を現さず、ポスターは主催者側により撤去されている。せっかく科学部が裏取りして、放映を見あわせたのに、無知な社会部が誤情報を流すのは残念なことだ。

2.【森口と佐藤教授】金曜日夜9時のNHKニュースで、森口は大学院修士課程「修了」で医学博士の学位はないらしいことがわかった。大学院の指導教官だったという。

  森口の業績をPubMed検索したら27本の英文「論文」が見つかった。そのうち自分が書いたのは、20で「完全論文」(抄録があるもの)は3本だけ、他はすべて「投書」である。
 この業績一覧を分析して、脂肪酸分析の帯広畜産大学教授中野益男と同じだ、と思った。彼はデータが捏造だから、フルペーパーが書けなかった。ネイチャーに投稿できなかったのである。
 その代わり、新聞で取り上げられ、日本考古学会で持ち上げられ、「発掘調査報告書」にデタラメを書き込み、岩波新書の分担執筆もした。
 彼にとって、それで十分だったのである。(帯広畜産大学の名誉教授にもなっている。ヘルシー・ペットフッドで「朝日」にも取り上げられた。)

 「投書」あるいは「編集者への手紙」、「短報」の類は新聞の投書欄と同じで、査読がない。編集記者がおかしいなと思えば、念のために専門家の意見を聞く程度である。従って、ある意味ここは一流国際誌の盲点である。査定の厳しいフル論文も「投書」も結果として「掲載された」という事実には変わりがないから、悪用しようとすればいくらでもできるのである。

 さて森口が第一著者になっている共著論文18本(残り2本は森口の単著)のすべてに医科歯科大学佐藤千史教授は「責任著者」として名をつらねている。
 金曜日午後に行われた記者会見で「学会の抄録を見て、矛盾がないのでいいのかなと判断した」などという生易しいものではない。
 特に、添付書類17番の「日本は胎児性幹細胞研究に力をいれるべきだ」という「ネイチャーへの意見投稿」など、知見の報告でなく研究者の意見の表明であるから、「論旨に矛盾がないから、いいのかな」で共著者になるなど、あってはならないことである。

 さらに、20番の「進行性非小細胞性肺がんに対するゲフィニチブの効果」など、医療に関しては「ネイチャー」以上に影響力の大きい「ランセット」に投稿されており、医師免許がない森口にこのような論文が書けないことを察知して、投稿を阻止すべきだった。これが2006年のことだから、この時点で詐欺師であることに気づいて、しかるべき措置をこうじていれば、事態は今日のようにならなかった。(添付1,2)

 「旧石器遺跡捏造」事件では、主犯の藤村新一の捏造に周囲はうすうす気づいていたが、むしろそれを利用して自分たちも利得をえようと考えた。それが30年も捏造が続いて、結果、東日本の旧石器考古学は回復不能に近い大ダメッジを受けた。岡村道雄と中野益男は最大の利得者である。

 佐藤教授も、6年間に18本の共著論文(実際は大半が詳録のない、従って検証不能の「投書」だが)に名を連ねて、大いに得をしたはずである。「判断がうかつだった」ですむ話ではない。森口の「投書」内容が真実であると信用したのなら、ぜひフルペーパーを書くように指導する義務があったはずだ。研究内容の重要性もわからないまま、共著者になったなどという言い訳は通用しない。
 科学者として良心があるなら、きちんと世間に対して説明をし、自らの責任をあきらかにするべきだろう。

 私は山中教授の対応が美事だと思うのは、「論文を見て判断したい、コメントしたい」と述べている点だ。つまり、かれは森口の研究がにせ物だと知っている。従ってフル・ペーパーになりっこない、ことを知っている。直接、「あれはインチキです」といえば、差し障りがあるに決まっている。だからああいうコメントにとどめているのだ。
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5 コメント

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すっきりしました。 ( @MS_81)
2012-10-14 23:58:49
不意に検索でこのブログを読ませていただいたのですが、おかげさまで モヤっとした部分が理解できました。
自分は論文にならないような論文をたまに書く破目になるのですが。
(院内の持ち回り研究なので到底一般的研究対象ではなく、稚拙なもので、資金も1万あれば余りまくります(恥))
それでも最低限の論文の仕組みやまとめ方、引用文献の引用の仕方、ポスターセッションの意味はわかります。


彼の看護師資格では、侵襲性の高い医師免許範囲の行為は一切さわりもできませんよね。
それなのに どこから先端医療に関わり、教授クラスに整合性の検証依頼してるし、それを適当とはいえ一応見たことにして共同研究者列記を許してる(?!)人もいるし、よっぽど人脈や他の知識が蓄積された人なのか?と、頭の中がモヤモヤしてました。

基盤から偽証だとは恐れ入ったorz
てか、こんなこと何でしたのかな。
悪い方の売名にしかならないし。不思議ですね。
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Unknown (Unknown)
2014-08-09 14:59:22
老婆心ながら議員さんであればもう少し慎重に記事にされるのがよいと思います

中野益男氏は考古学者ではありませんし、石器の年代について何かをいう立場にもありません。

考古学者により持ち込まれた石器や土器に付着している脂肪酸分析を行ったに過ぎません

現代ある物質の脂肪酸組成を分析し、持ち込まれた異物のそれを分析し、その組成の近さからおそらくこういう物質だろうという推論をしたわけです

あなたの文章によると中野益男氏が10万年前の石器であると言ったかのような印象を与えますが、それはまったくの間違いです

そして当時すでにそのことは明らかであったためなんらの咎めもなかったわけです

不用意ですね
返信する
これはひどい (Unknown)
2014-08-09 17:07:48
中野氏にたいする誹謗中傷じゃないか。これは名誉棄損で訴えられるレベルですね。
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ひどい誹謗中傷だな (とおりすがりの内科医)
2015-03-26 17:18:23
20番の「進行性非小細胞性肺がんに対するゲフィニチブの効果」など、医療に関しては「ネイチャー」以上に影響力の大きい「ランセット」に投稿されており、医師免許がない森口にこのような論文が書けないことを察知して、投稿を阻止すべきだった。

・・・この難波という方は臨床疫学という学問を全くご存知ない。森口氏はその専門家だったし、それなりの英文業績を残している。訴えられたら負けますよ。


返信する
少しは勉強しろ! (とおりすがりの内科医)
2015-03-26 17:47:18
彼の1例が仮に(ありえないが)本当だったとしてもNatureは臨床医学の論文を載せないので対象外。
LancetやNEJMだろう。
医者のくせに、元 大学教授のくせにそういうことすら知らないとはね(笑)。

それから、リアル世界初のiPS臨床応用(移植分野)をした高橋(政)先生のは、論文はおろか、学会でも発表してないよ。マスコミ発表が最優先。
なお、その基盤となる動物実験論文はマウスまで(1本)。カニクイザルでの実験論文はいまだにでていない。

まともな専門家なんだったらこういう状況をコメントしてみな(笑)?
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