【書評】エフロブ「買いたい新書」のNo.232書評にサン=テグジュペリ「星の王子さま・オリジナル版」(岩波書店)を取り上げました。
http://www.frob.co.jp/kaitaishinsho/book_review.php?id=1408338961
いうまでもなく,フランスの飛行士・作家アントワーヌ・ドゥ・サン=テグジュペリが生涯に書いた唯一の寓話で,遺作となった。日本では1953/3の内藤濯(あろう)訳による岩波書店版の刊行以後に,20種以上の訳本が出ている。そんな本を今さら取り上げるなんて,といわれそうだがこの本は違う。
1943年,米国に亡命中の著者は絵本『星の王子さま(Le Petit Prince)』を書いた。ドイツ軍の占領下にあったパリでは出版できず,仏語版も米国で出された。45年11月にパリのガリマール書店が出版し,すぐさま世界中で大人気となった。実はこの時には著者が戦死していて,カラー原画は行方不明だった。そこでガリマール版は米国版を元に挿絵が復刻されたが,色調に不自然さがあった。99年になって原画が発見され,同書店から新版が出た。この邦訳が「星の王子さま・オリジナル版」だ。普通,日本語訳では横の文字を縦になおすが,本書の場合,表紙タイトル,本文ともに横書きで,原本のレイアウトがそのまま生かされている。旧ガリマール版の絵に見られた色調の毒々しさは消え,中間色が多いほのぼのとしたものになった。訳者は53年「岩波少年文庫」に本書を初訳した仏文学者だ。
エンジン不調のためサハラ砂漠の真ん中に不時着した「ぼく」は,不思議な小さな「王子さま」に出会う。小さな星に住む王子は,よその星から種が飛んできて咲いた一輪の花に別れを告げて,星を巡る旅に出た。第一の星には誰でも家来にしたがる王様が住んでいた。第二の星にはうぬぼれ男がいた。次の星には呑み助が暮らしていた。四番目の星には実業家が住んでいた。五番目の星はいちばん小さな星で,ガス灯の点灯夫が働いていた。第六の星には地理学者が住んでいた。地理学者が王子に訪問を奨めた星が地球だった。こうして王子は七番目の星のアフリカの砂漠に降り立った。砂漠を旅するうちに王子はヘビに会い,キツネと会話し,山の上でこだまと対話した後,長い道を歩いてやっと特急列車の転轍手と渇き止めの丸薬を売っている商人に会う。一話一話がみごとな寓話になっている。
八日目,飲み水がなくなった「ぼく」は王子にすすめられて井戸を探しに旅立つ。翌朝やっと井戸を見つけることができた。エンジンの修理が終わった日,王子は自分の星に帰ることを「ぼく」に告げる。王子と別れて六年後,「ぼく」はこの本を書いた。最後の二枚の絵は「王子がいた世界」と「王子のいない世界」を比較して描いてある。
文章も絵もとても美しい本で,漢字にはふりがながあるので小学低学年から大人まで楽しく読める。ギフトとしても喜ばれるだろう。
http://www.frob.co.jp/kaitaishinsho/book_review.php?id=1408338961
いうまでもなく,フランスの飛行士・作家アントワーヌ・ドゥ・サン=テグジュペリが生涯に書いた唯一の寓話で,遺作となった。日本では1953/3の内藤濯(あろう)訳による岩波書店版の刊行以後に,20種以上の訳本が出ている。そんな本を今さら取り上げるなんて,といわれそうだがこの本は違う。
1943年,米国に亡命中の著者は絵本『星の王子さま(Le Petit Prince)』を書いた。ドイツ軍の占領下にあったパリでは出版できず,仏語版も米国で出された。45年11月にパリのガリマール書店が出版し,すぐさま世界中で大人気となった。実はこの時には著者が戦死していて,カラー原画は行方不明だった。そこでガリマール版は米国版を元に挿絵が復刻されたが,色調に不自然さがあった。99年になって原画が発見され,同書店から新版が出た。この邦訳が「星の王子さま・オリジナル版」だ。普通,日本語訳では横の文字を縦になおすが,本書の場合,表紙タイトル,本文ともに横書きで,原本のレイアウトがそのまま生かされている。旧ガリマール版の絵に見られた色調の毒々しさは消え,中間色が多いほのぼのとしたものになった。訳者は53年「岩波少年文庫」に本書を初訳した仏文学者だ。
エンジン不調のためサハラ砂漠の真ん中に不時着した「ぼく」は,不思議な小さな「王子さま」に出会う。小さな星に住む王子は,よその星から種が飛んできて咲いた一輪の花に別れを告げて,星を巡る旅に出た。第一の星には誰でも家来にしたがる王様が住んでいた。第二の星にはうぬぼれ男がいた。次の星には呑み助が暮らしていた。四番目の星には実業家が住んでいた。五番目の星はいちばん小さな星で,ガス灯の点灯夫が働いていた。第六の星には地理学者が住んでいた。地理学者が王子に訪問を奨めた星が地球だった。こうして王子は七番目の星のアフリカの砂漠に降り立った。砂漠を旅するうちに王子はヘビに会い,キツネと会話し,山の上でこだまと対話した後,長い道を歩いてやっと特急列車の転轍手と渇き止めの丸薬を売っている商人に会う。一話一話がみごとな寓話になっている。
八日目,飲み水がなくなった「ぼく」は王子にすすめられて井戸を探しに旅立つ。翌朝やっと井戸を見つけることができた。エンジンの修理が終わった日,王子は自分の星に帰ることを「ぼく」に告げる。王子と別れて六年後,「ぼく」はこの本を書いた。最後の二枚の絵は「王子がいた世界」と「王子のいない世界」を比較して描いてある。
文章も絵もとても美しい本で,漢字にはふりがながあるので小学低学年から大人まで楽しく読める。ギフトとしても喜ばれるだろう。
圓楽さんもいつのまにか本当に星の彼方に行ってしまわれました。
箱根の温泉にでも行く機会が有りましたら、立ち寄らせて頂きたいものです。
箱根に行ったついでに立ち寄られるのならばお土産話になり良いと思うのですが、このミュージアムのためにわざわざ行かれると(私の時と同じだと)、少しがっかりされるかも知れません(ミュージアムの方、ごめんなさい)。
Unknownさんの心の中の星の王子さまの世界の方がきっと素敵ですよ。
アフリカの砂漠で王子様にめぐりあう事は叶わないかもしれませんが、箱根ならば何とかなりそうです。
一番好きなところはキツネと王子さまの出会いと別れの場面です。
キツネの、(友だちがほしいなら)「しんぼうが大事だよ。」、(特別な日を作りたければ)「きまりがいるんだよ。」、(王子さまとせっかく仲良しになったのに別れていく時刻が近づき、なんにもいいことはないじゃないか、と言われたことに対し)「いや、ある。麦ばたけの色が、あるからね」。
一つ一つの言葉が、とても単純なのに美しく、まるで真珠の粒のような輝きを放っています。
最後に王子さまと別れる場面でキツネは人生の最も深い秘密を王子さまを通して私たちに教えます。
「心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。かんじんなことは、目に見えないんだよ」
62年版(私が持っていますのは95年第59刷発行版)をずっと大切に持っており、時々読み返していますが、先生ご推薦のオリジナル版もいつか手に取ってみたいと思いました。
サン=テグジュペリの妹の孫に当たるというフレデリック・ダゲー氏のまえがきが有りました。「ウワバミ」という言葉がひどく印象に残っておりましたが、矢張り挿絵とともに記憶が正しかったようです。
サン=テグジュペリの妹の孫に当たるというフレデリック・ダゲー氏のまえがきが有りました。「ウワバミ」という言葉がひどく印象に残っておりましたが、矢張り挿絵とともに記憶が正しかったようです。