【真実は…】
「真実は、例のごとく、はるかに異様であるにちがいない。」ハーバード大医学部生化学教授で、SFの名作「2001年宇宙の旅」を書いた作家A.C.クラークの同名書の序文末尾にある文章である。英語原文の方が味わい深いのだが、いま原本が出てこない。
(その後出てきた。洋書の棚でなく和書の棚に紛れ込んでいた。
原文は<The truth, as always, will be far stranger.>だった。)
経済学者の金子勝と医学・生物学者の児玉龍彦は12年前に、経済システムと生命システムを比較して論じる「逆システム学:市場と生命のしくみを解き明かす」(岩波新書, 2004)という共著を書いた。残念ながら当時は私の頭が錆び付いていて、生命体と経済システムをともに「複雑系」としてとらえ、相互比較の上に、日本経済の問題点や医療システムの問題点を解明するという問題意識が不十分だったので、内容がよく理解できなかった。
今度同じ二人が「日本病:長期衰退のダイナミクス」(岩波新書, 2016/1)という本を出しているのを書店で見つけ買ってきた。2008年のリーマンショックが「100年に1度の世界金融危機」だったこと、「世界史が今、大きな転換期に差しかかっていること」が読むと非常によくわかる。
この10年の間に、ヒトゲノムが解明された後、遺伝子発現を調節するより上位の遺伝子群の存在が明らかになり、がんや発生にかかわる既存知識が革命的に変化しつつある。それらをアナロジーとして引きながら、フィッシャー流の確率統計学でなく経済予測に「ベイズ推計」を活用しようという視点がまことに面白い。
「真実は、例のごとく、はるかに異様であるにちがいない。」ハーバード大医学部生化学教授で、SFの名作「2001年宇宙の旅」を書いた作家A.C.クラークの同名書の序文末尾にある文章である。英語原文の方が味わい深いのだが、いま原本が出てこない。
(その後出てきた。洋書の棚でなく和書の棚に紛れ込んでいた。
原文は<The truth, as always, will be far stranger.>だった。)
経済学者の金子勝と医学・生物学者の児玉龍彦は12年前に、経済システムと生命システムを比較して論じる「逆システム学:市場と生命のしくみを解き明かす」(岩波新書, 2004)という共著を書いた。残念ながら当時は私の頭が錆び付いていて、生命体と経済システムをともに「複雑系」としてとらえ、相互比較の上に、日本経済の問題点や医療システムの問題点を解明するという問題意識が不十分だったので、内容がよく理解できなかった。
今度同じ二人が「日本病:長期衰退のダイナミクス」(岩波新書, 2016/1)という本を出しているのを書店で見つけ買ってきた。2008年のリーマンショックが「100年に1度の世界金融危機」だったこと、「世界史が今、大きな転換期に差しかかっていること」が読むと非常によくわかる。
この10年の間に、ヒトゲノムが解明された後、遺伝子発現を調節するより上位の遺伝子群の存在が明らかになり、がんや発生にかかわる既存知識が革命的に変化しつつある。それらをアナロジーとして引きながら、フィッシャー流の確率統計学でなく経済予測に「ベイズ推計」を活用しようという視点がまことに面白い。
生命体の複雑系を、細胞を一つの単位として、システムとして理解する「創発生物学」を提唱していた笹井先生が亡くなった事は本当に大きな損失だと思う。誰も後継者がいない。
創発生物学については、過去の実験医学に総説が載っているから興味があればどうぞ。