愛するココロ: 作者: 大隅 充
7
エノケンの家までは、JR折尾駅から一時間に一本のバスに乗って
三十分はかかった。トオルは、おばさんの家からちょうど一時間だった。
由香と駅で待ち合わせて通った。
その家は平屋の安普請の一戸建てで岩屋海岸へ向かう県道を一歩入った
山の中にあった。
敷地には、同じ2DKの平屋が三つ並んであったが他の二軒はどこかの
建設会社の倉庫になっていたり、空き家だったりしてエノケンの住まいだけ
が生きた民家の顔をしていた。
地主のオーナーは、早くこのアパートを取り壊して産廃業者の用地として
売りたかったようで加藤教授が引渡し期限の最後の日に鍵を返しに行ったとき
には、満面の笑顔で早口で事務的に「ごくろうさまでした」と言い切らない
うちに玄関の扉を閉めた。
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エノケンの家までは、JR折尾駅から一時間に一本のバスに乗って
三十分はかかった。トオルは、おばさんの家からちょうど一時間だった。
由香と駅で待ち合わせて通った。
その家は平屋の安普請の一戸建てで岩屋海岸へ向かう県道を一歩入った
山の中にあった。
敷地には、同じ2DKの平屋が三つ並んであったが他の二軒はどこかの
建設会社の倉庫になっていたり、空き家だったりしてエノケンの住まいだけ
が生きた民家の顔をしていた。
地主のオーナーは、早くこのアパートを取り壊して産廃業者の用地として
売りたかったようで加藤教授が引渡し期限の最後の日に鍵を返しに行ったとき
には、満面の笑顔で早口で事務的に「ごくろうさまでした」と言い切らない
うちに玄関の扉を閉めた。