goo blog サービス終了のお知らせ 

カジュアル・アミーガ         本ブログの動画、写真及び文章の無断転載と使用を禁じます。

ある日カッパ姉ちゃんとカメラおじさんの家に一匹の子犬がやってきた。
日々のうつろいの発見と冒険を胸に生きていこう!

愛するココロ-45-

2008年01月25日 | 投稿連載
愛するココロ 作者 大隅 充
             45
劇場正面の広くて真っ白なスクリーンのちょうど真ん中に真四角の
画面がやや小さめに投影されている。
 画面は、埃りヒゲやキズがちらちらと泳ぎ回っているが、黒バック
からフェードインしてススキの原と紅葉した里山が映し出されると
そんなキズや埃りは、気にならなくなって、寒々しい客席で誰もが
そのコマ落ちした戦前の風景と登場人物と字幕とに息をのんで
集中した。そして映写機の回る音も何時しか聞こえなくっていた。

字幕1
ときは、戦国時代。
とある山中に一人の名高い鍛冶屋がいた。
  カンカンカンカン
  真っ赤に焼けた刀を打つ音が響く。
  老齢な鍛冶屋、全身に汗を漲らせて刀を打つ。その真剣な顔。
  ほぼ流麗な太刀の形になっている。
  水桶に浸して、じゅっと冷却音。
  藁の戸を開けて鍛冶屋、月明かりにかざす。
  その見事な太刀の輝きー。

字幕2
出来た!
紫鎖鬼丸!ムラサキマル!
  満月が煌々と夜空に。
  刀、ひたすら研ぎ石で研がれる。

字幕3
関が原の戦い。
  石田三成の軍勢に紫鎖鬼丸をもった細川の武将が馬に跨り
  敵をバッタバッタと切り倒していく。 
  みるみる不利だった形勢が一気に逆転。

字幕4
その太刀・紫鎖鬼丸をもった者は、その者の数倍の力を
発揮できる。
  髭の武将、うれしそうに太刀を見つめる。
  戦から新たな戦へ。人から新たな人へ。
  紫鎖鬼丸は、手に渡っていく。
  若侍、大井の堰で20人切りをやってのける。
  
字幕5
ただしその太刀をもった者は、人を切らずにはいられなくなる。
京の町。
  河原で幼い元服前の若者が紫鎖鬼丸を腰に月夜に照ら
  されて歩いている。
  夏の河原。夕涼みしている老人が二人、
  縁台で将棋している。
  若者、通りかかりに太刀を一瞬で抜いていた。
  川の中に倒れている老人二人。

字幕6
時代は、移って江戸の吉原遊郭。
参勤交代でお勤めの最後の夜。
  大名たちのにぎやかな宴。
  華やかな遊女が大座敷で踊っている。
  大名一向十名が酒を呑みながら、大騒ぎをしている。
  床の間に紫鎖鬼丸が錦の鞘入れに包まれて飾られいる。
  酔った家老の一人が、幼いかむろ1に手を出して
  追い掛け回す。
  かむろ1、逃げて床の間の太刀にぶつかる。
  鞘入れが解けて、紫鎖鬼丸が転がる。
  かむろ1、咄嗟にその太刀を抜く。
字幕7
 太平の江戸の町を震えさせた吉原かむろ騒動。
  座敷が血の海になっている。
  侍十人が見事に切り倒されている。
    ×     ×     ×
  奥州道中、かむろ1血だらけで歩いてくる。
  手にもった紫鎖鬼丸を川に投げ捨てる。 
  そして自分も川に身を投げる。

字幕8
数年後。
船頭が太刀を拾った。
  船を漕いでいて、櫓に何かが当たる。
  拾い上げてみると錆びた太刀である。 

字幕9
 またまた時代は、変わって幕末。
 会津は若松城を見下ろす飯盛山。
 戊辰戦争ーそして白虎隊。
  12才前後の少年兵が無残に集団自決して何十人と
  血だらけで倒れている。
  8才の少年松島五郎が錆びた太刀をもって駆けつける。

字幕10
 お兄様ー。
 ぼくも死にます。
  腹を刺して自刀した兄三郎。
  一言呟いて息絶える。
字幕11
五郎、生きろ!
  涙がとまらない五郎少年。

字幕12
清水港。
成人して五郎は、写真師となった。
  闇箱カメラを構える青年五郎。
  清水の次郎長が指揮をとって護岸工事をしている。
字幕13
お前さん。写真を撮ってクンねえか。
わしのところにワラジを脱いで行きなせい。  
  頭を下げる松島五郎。
  背中に旅行李に布に包まれた太刀。
字幕14
それでは、しばらくご厄介になります。
   青春の笑顔ー。
   榎本建一ことエノケンその人である。
「エノケン!」
 映写室で思わずゲンちゃんが叫んだ。
どこか面影がある二十代のエノケン。顔も体も細い。
キラキラと輝く眼で大げさな演技をしている。でもまだ見ぬ未来
のウキウキするような夢を胸に抱いて若々しく何の迷いもないその姿。
それは、今そこに生きているかのようだ。
ゲンちゃんは、首に巻いたタオルで額の汗を拭いて、映写機の歯車
カムをフィルムがしっかりとかき出されて正しく回っているのを眼
で確認しながら、又タオルで顔を拭いた。
どうやらそれは、汗ではなく溢れる涙をぬぐっているのだった。

字幕15
 五郎は、次郎長の富士の裾野の開拓を手伝った。
 彼が後に次郎長伝を書く男である。
  富士の裾野で開墾している五郎と次郎長一家の子分たち。
  休憩しておにぎりを頬張る五郎。

劇場の一番後ろの通路でエノケン一号は、じっと音のないその
スクリーンに映る光と影の躍動を見つめている。
そしてふたつのロボットの目玉がピンクから薄いブルーに
ゆっくり変化した。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

チャヤテテ~シーちゃんのおやつ手帖32

2008年01月25日 | 味わい探訪
おやつに付きものが、お茶です。今回は、紅茶を紹介します。
桜新町に紅茶専門のチャヤテテがあります。
マスカット・ティーの香りと味を楽しみながら、清潔な店内で
いろいろな種類の紅茶を見て回るのもいいです。

紅茶の店チャヤテテのホームページは、こちら。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする