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ある日カッパ姉ちゃんとカメラおじさんの家に一匹の子犬がやってきた。
日々のうつろいの発見と冒険を胸に生きていこう!

こちら、自由が丘ペット探偵-32-

2008年10月17日 | 投稿連載
こちら、自由が丘ペット探偵局 作者古海めぐみ
     32
首輪のついたカラスを追う春の自転車は、環八をどんどん
砧公園へ向けて走っていった。途中途中信号で春が止まると
セイコちゃんも電線や信号灯に羽根を休めて春がペダルを
再び踏み出すまで待った。サイクリング車のサドルに跨
って加速しながら見上げる春の眼と低空飛行で道路の架線
をくぐり嘴を下に向けて飛行速度を加減しているセイコちゃ
んのクリクリ動く眼とは、明らかに意志が通い合っていた。
一羽のカラスが人間に何かを伝えようとしている。
まるでカラスと人間がチームを組んでコーチと選手でマラ
ソンをしているみたいだった。
環八を走行する車両からはわからないが下校する小学生
やオートバイの運転手らからすると、カラスを追いかけ
ているサイクリング車の女の子が奇異に見えただろう。
それが証拠に気がついた子供やライダーは、口に出して
何だ!ありゃと一様に振り返った。
セイコちゃんは、ときどきカアと鳴いて春が大型トラック
や路肩駐車の車に行く手を阻まれたりして遅れをとる
と力強く励ました。
『健太が大変なんだ。頑張ってついて来て。』
セイコちゃんはそう言ってカアカアとホバーリングしな
がら鳴いた。
春は一生懸命ペダルを漕いだ。
 車を縫うように走る春の腕にバンド帯していたケイタイ
が鳴って、片手で外して見ると祐二からのメールだった。
「今探偵局に着いた。ダックスにエサをやって自分の店
へ行く。何かわかったらメール頂戴。すぐに車で行く。」
ちょうど次の信号が赤になって停車線で止まると春は祐二
への返信を打った。
「了解。只今砧公園。」
信号が青になるとセイコちゃんは公園の入口で方向転換した。
春の自転車も砧公園で環八を外れて緑の園内を横切り草原
のスロープを下り、橋を渡って丘陵を上り砧公園の敷地
を突き抜けて、野川の住宅街を進み狛江の多摩川沿いの
土手道に出た。
そこでセイコちゃんは、多摩川の河川敷の松の木に止まった。
その松の木のある砂州は、人の背丈ほどの葦原が広がっ
ていた。ここには、いくつかの浮浪者の青いテントハウス
が点在していた。
春は、自転車を土手に置いて葦原へ斜面を降りていった。
セイコちゃんが葦原の真ん中にちょうどお化け屋敷の門の
ように通路穴が開けられ、人一人が入ることが出来るよう
に刈り取られた入口の前に急降下して降り立った。
その入口には、板に手書きで天国の門と書かれたプレート
が立て掛けられていた。
 春は、ゆっくりとその入口に近づいて行った。
暗い奥の通路から生暖かい風が吹いてきていた。
「誰かいますか。」
春は、中に声をかけて聞き耳を立てたが風の唸り声しか
返って来なかった。
「健太さーん。ネコタでーす。」
より大きな声を出したが又風にかき消されたので、振り
返って草地でぴよんぴょん飛び跳ねているセイコちゃん
の方を見た。カアカアカアカア、首輪のついたカラスは、
嘴を震わして鳴いた。
『中へ』とセイコちゃんの明確な意思表示だった。
胎をきめて春は、その葦の微かな木漏れ日のさす薄明
かりの『天国の門』の通路へ足を踏み入れて進んだ。
天井は、両側から伸びた葦を一本一本結んで円錐形の
ドームのような形になって、長い回廊となって曲がり
くねってつづいていた。
やがて右へ大きく曲がって左へ進路が変わった辺りから
芳ばしい肉を焼く匂いの混じった煙が漂ってきた。
その煙の流れてくる先に竹編みの扉があり、その隙間
から明るい光が洩れていた。
「いいから。入りな。お嬢ちゃん。」
潰れたカエルのような男の声がした。
春は、扉の前で足が竦んだ。
「ちょうどロースが焼けた処だ。あんたも一口どうだね」
扉がパタンと内側に開いた。
そこは、大きな丸い部屋になっていた。
天井に透明なプラベニが屋根として張られ骨組みの垂木が
しっかりとそれらを支えて、ちょうど砂漠のベドウィン
族のチュームテントのような形の部屋だった。
白髪頭の五分刈りの男が中央の鉄板台の前で肉を焼いて
いるところだった。
「わしゃシラネって言うが。あんたは。」
「ネコタといいます。」
シラネは何日も風呂に入っていない黒い垢まみれの顔で
じろりと春を見た。汚れて破れたスタジアムジャンバー
と穴の開いたバッシュから長い年月ホームレスをやって
いる年季が漂っていた。
「こういう生活しとると、なかなか若い女の子と接するこ
ともないでね。なんでもいいから、一緒に夕飯でも食わん
かね。肉はちゃんとスーパーで買った岩手産のもんだが。」
春は、一歩部屋に入ってぴたりと両足を揃えて直立姿勢
でいた。
「すいません。勝手に入って。友達を探してるんです。
犬飼という男の人です。」
「さあ。知らんね。ご覧の通り。わししかおらんが。」
とロースを歯の抜けた口に運んでムシヤムシャ噛むと
ニタっと笑った。
ゴクリと生唾を呑んで春は、部屋を見回したが、シラネ
と鉄板の台と七輪と酒のビンしかその部屋にはなかった。
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あけぼの~シーちゃんのおやつ手帖67

2008年10月17日 | 味わい探訪
バレンタインに和菓子?というミスマッチが素敵。
老舗の和菓子店ですから、味の良さも折り紙付きです☆
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