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ある日カッパ姉ちゃんとカメラおじさんの家に一匹の子犬がやってきた。
日々のうつろいの発見と冒険を胸に生きていこう!

こちら、自由が丘ペット探偵局-39-

2008年12月05日 | 投稿連載
こちら、自由が丘ペット探偵局 作者 古海めぐみ
 (これまでのあらすじ)        
 自由が丘ペット探偵局の犬飼健太は、田村に頼まれてナナと
 いう迷子犬を探していると子供服店の上田祐二と新写真店の
 猫田春のお客であった佐藤沙織からネットの売買で問題のある
 怪しいブリーダーのワンニャン天国堂の捜査をも頼まれ、
 奥多摩湖に売れない犬を捨てていたり、ペット虐待などの
 正体を突き止めたが、ブリーダーの強姦魔の息子に捕まり
 多摩川の河原でコンクリ詰めにされそうになった。
  一方ナナの行方を捜していた田村は上田と一緒に多摩川ま
 で来てナナらしき野犬に出遭った・・・・
 
          39
「行っちゃったよ。ナナちゃん。いいの。田村さん。」
祐二が追いかけようとロープを跨いで二三歩踏み出しながら言った。
しかしあれだけナナ探しに必死になっていた田村から何の応答も
ない。振り返ってみると、田村良弘は何か憑き物が落ちたように
妙に涼しい顔で黙って立っていた。
今まで泣きながらナナ!と叫んでいたのがウソのように別人格の
通りすがりの人になっていた。ナナという犬がいたんですか、
今逃げて行った野犬がどうかしたんですか、と言いそうな目の色
をしていた。
「田村さん。今の、ナナでしょ。私も会ってるから、やや精悍に
なっていたけど確かに探していたナナでしょ。あれ。」
「はい。」
田村は抑揚のない返事をして、くるりと踵を返して土手を登ろう
と歩き出した。
「ええ?えええ!」
なんでそんなに変わっちゃうの。
納得いかない表情で祐二は田村の背中を睨んだ。
田村は、土手の草に足を滑らせて両手をついて踏みとどまって
から姿勢を立て直すと、又静かに上り始めた。ゆっくりと。
そして振り返らずに言った。
「ぼく、自分らの不幸をみんなナナ探しにかぶしていたんです。
なんかすべてがうまくいかないもんだから、ナナって叫んで走り
回っていると気が落ち着いたんです。」
「そんな・・・・・」
「そうなんです。わかったんです。今精悍なナナの顔を見たら。
あの、逞しい独立心に溢れた、きれいなナナの姿を見たら。本当
はナナなんかどうでもよかったのかもしれないんです。いや、
ナナの方が僕らなんか必要としてなかった気がしたんです。
さっきナナと目が合ってはっきりしたんです。そのことが。」
田村は土手に手をついた時濡れたれんげ草の汁が掌に着いたらしく
ズボンに何回もこすり付けて又上りだした。
「何だよ。あんた。勝手なことばかり言うんじゃないよ。ここ
まで来て・・・」
祐二は唇を震わしてその言葉を土手の田村に投げつけた。
田村は、振り向かずに「スイマセン」とぽつりと言ってさらに
歩き出した。
「あんたなんか絶対にペット飼うんじゃねえぞ。もう。」
飛び跳ねるように身体を揺すって土手を追いかけようと足を出
した祐二の頭を突然セイコちゃんが掠めて飛んで、大きな声で
カアと鳴いたかと思うと土手の途中の田村の肩を爪と嘴で攻撃
して満月の夜空へ舞い上がった。
背広の肩がベロリと破けて土手に倒れた田村は、今の攻撃がセ
イコちゃんのものではなく祐二が投げかけた非難の言葉だと一
瞬錯覚して、怯えたように両膝をついて土手下の祐二に「申し
訳ありません」と汗でくしゃくしゃになった額をびしょびしょ
のれんげ草の斜面にこすり付けて謝った。
なんとなく安物の田舎芝居のようにも見えたが、涙目の真っ直
ぐな輝きがウソではないのがわかった。
「自分です。自分が、しっかりしないとダメでした。すみませ
んでした。」
と初戦敗退した高校球児みたいにオイオイと泣き出した。
姿は見えないが闇空のどこかでセイコちゃんが再び鳴いた。
すると土手の上をパトライトを点滅させて黒のトヨタマーク�
がやってきた。
「ああ。セイコちゃんの声!」
マーク�の覆面パトカーの後ろの席から佐藤沙織が顔を出して
叫んだ。
そのマーク�を運転していた福田刑事は、土手道に駐車している
祐二のサーブと面を合わせるように向かい合って車を停めた。
土手下の葦原では、赤々とその真ん中で炎が燃え上がって周り
の葦に燃え移っていた。そしてその上空をセイコちゃんがぐるぐ
ると飛び回っていた。
「セイコちゃんが私たちを誘導してくれたのはココよ。刑事さん」
と佐藤沙織が立ち入り禁止の土手道へ出た。
「すごい。燃えてるわ。きれい。」
「火事です。」
と福田が冷静に答えるとびっくりして目を見張った沙織は、上田
らしい人影を見つけた。
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三月の羊~シーちゃんのおやつ手帖74

2008年12月05日 | 味わい探訪
お店の入口に飾られた「羊とびだし注意」の看板がとてもラブリー☆
店内には絵本スペースが併設されていて、地味ながら良い絵本が揃っています。

   
コメント (4)
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