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ある日カッパ姉ちゃんとカメラおじさんの家に一匹の子犬がやってきた。
日々のうつろいの発見と冒険を胸に生きていこう!

京とうふ藤野・豆乳落雁~シーちゃんのおやつ手帖150

2010年10月01日 | 味わい探訪
京とうふ藤野・豆腐落雁 1箱・1050円
可愛いウサギ型の落雁☆豆乳で作られているので、
比較的あっさりとした甘味で食べ易いです。
豆腐専門店ならではの和菓子で、
包装紙も素敵ですよ。

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さすらいー森の王者6

2010年10月01日 | 投稿連載
森の王者 作者大隅 充
     6
 チャータは、夢かと思った。
しかし仔犬は、さっきと同じ位置で同じ格好で倒れて
いた。違うのは、口とお尻からウジ虫が涌いていたこ
とだった。
 チャータは背中に寒気がして空を見上げた。赤い空
で黒い雲の蛇が渦を巻いてもうすぐ夜だぞと睨みつけ
ていた。あれだけ屯していたヤマイヌの姿はどこにも
ない。彼らはここから抜け出る道を知っているのか。
もしこのまま夜になると身動きできなくなり又同じ日
がつづく。山の夜は急激に冷え込む。森林の豊富なと
ころだとどこでもねぐらができるが、ここは枯れ木と
岩砂しかなく正に「飢餓の谷」だ。蟻地獄に嵌った虫
のようにただ飢えて死んでゆくのを待つしかない。
 やがてあたりは暗くなってきた。
どんなに強い体や賢い頭脳をもっていても地獄の世界
では何の役にもたたない。大きなヒグマですらこの飢
餓の谷にはまったら餓死するしかない。この世界には
力よりも強いものがある。それは、運命だ。これは自
分ではどうすることもできない。チャータは火成岩の
岩陰で体を丸めて息をひそめて星の瞬きに目をやりそ
のうちウトウトと眠りについた。
 寒さは深夜から明け方にかけてマイナス10度を下
回って凍りつくようだった。チャータは、夕張のシュ
ーパロ湖の夏の森を夢見ていた。とても心地いい水辺
の焼けた砂地で日向ぼっこをしている。そして母が黒
毛の背中をペロりと舐めてくれる。うれしくてうれし
くて自分はくるりとお腹を出して甘える。陽はぽかぽ
かとして冬毛を和らげさせる。このまま母の胸で寝れ
ればどんなにか幸せだろう。
 しかしもうひとりの自分が頭の上に出て来てダメだ
そこで眠ってはだめだと叫んでいる。気がつくとすっ
かり地面に霜が降りていてチャータは無意識に砂地を
掘っていた。後ろ脚の肉球が白くなって動かそうと思
っても感覚がなくなっていた。チャータはすぐに凍っ
た脚先をペロペロと舐めた。
ここを一刻も早く脱出しなければならない。
しかしどうすればこの谷から出ることがでるのだろう。
何度行っても風の峠へ出ることができない。もしか
したら風の峠は幻でないのではないか。蜃気楼のよう
に岩場の坂から見えるだけでそこには道はないのかも
しれない。
 チャータは、ふっとそんなことを思いながら眠らな
いために体を起そうと立ち上がった。自分では立ち上
がったつもりだったが地面が垂直に見える。つまり立
ち上がったつもりがコロンと横に倒れてしまったのだ
った。それでも意識のある限り四本の脚と首を少しづ
つ動かして氷の手錠を解いていった。夜明けが始まっ
ているのにあたりがまったく見えない。暗黒の中で手
足をただ動かしている。やがてどうして見えないかが
わかって来た。自分の目がおかしくなった訳じゃなく
それはたち込めていた霧のせいだった。それが証拠に
暗黒の闇がそのうち白い闇に変わった。
 そして誰かが火成岩の上でチャータを見下ろしてい
る気配がする。
 チャータは、体を動かしているうちにやっと立てる
ようになった。谷の夜明けで霧が流れ出した。陽の射
す方角では気温があがり対流が始まる。白い闇は変わ
らないがその明るい東へ霧はゆるやかに流れている。
 するとチャータの鼻先の岩にルリビタキが一羽止ま
った。さっきからチャータの様子を見ていたのは、こ
の鳥だった。チャータは、よろよろしながら霧が流れ
る方へ歩いた。ルリビタキは、ピチピチと鳴いて又チ
ャータの鼻先に降り立った。チャータは構わず歩いた。
ルリビタキはすぐに追ってチャータの前を飛んだ。
オレが死ぬのを待っているのかとチャータは訊ねた。
ルリビタキは、ピチピチピチと鳴いて、おまえなんか
突いてもうまくねえぞと笑った。
 チャータは、むっとして歩き出したがそうだなオレ
なんか美味くないよなとくしゃみして、ついでに尋ね
た。
おーい。アオタン。この谷から出る風の峠はどっちだ。
アオタン?なんだ。そりゃ。
君のことさ。青い顔してるからそう名付けたんだよ。
ふん。どうせこっちは名前なんかねえからそう呼びた
かったらそれでいいよ。ただな。この飢餓の谷には出
口はないのよ。風の峠は蜃気楼さ。
ええ。じゃ。どうしたらここから出れるんだ。
ルリビタキことアオタンは、ピチピチピチと又笑って
入り口が出口さと霧の中へ飛んでいった。
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