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ある日カッパ姉ちゃんとカメラおじさんの家に一匹の子犬がやってきた。
日々のうつろいの発見と冒険を胸に生きていこう!

待つ犬

2010年10月29日 | めんちゃん日記
スーパー・マーケットの前。
ひたすら待つワンちゃん。
心配そうにキョロキョロ。
やっぱり犬は忠犬。寂しがりやさん。
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さすらいー森の王者10

2010年10月29日 | 投稿連載
森の王者 作者大隅 充
            10
一瞬世界が真っ暗になった。
そして怖ろしく静かな白い闇の海に投げ出された。
チャータは、シロの首の肉を咥えていた。少なく
ともまだ温かいシロとチャータだけは生きている。
後は、まったくわからない。ただ冷たい感覚と視
界がふさがれた闇があるだけだった。片耳も黒ヤ
マイヌもクンとも鳴声がせずどこにどうなったか
さっぱり分からない。数時間後身体がやっと動く
ようになってシロを連れて雪の中から這い出たと
き、巨大な雪崩が起きたのかと理解できた。
雪山は風景を変えて木々がなぎ倒されて雪原に
なっていた。黒ヤマイヌたちは、どうやら谷底ま
で流されたようだった。チャータは、足の甲を擦
りむいて骨が見えていた。しかし傷は小さく引き
づりながらでも歩けた。そして若いシロは、チャ
ータに覆いかぶされたお陰で無傷で雪原に息を取
り戻した。
数日後山の縄張りでは黒ヤマイヌの集団は、半
数に減っていた。ミカヅキの集団はシロとチャー
タとグレー弟だけで後は壊滅した。この残った集
団たちで新しいテリトリーを探して白神の山を目
指した。
  数か月の山越えの強行軍で春から初夏へ季節は
めぐっていた。そしてオクヤマと風の谷を越えた
高原へみんなは出た。そこは、なだらかな丘にな
っていて一面赤いチングルマや黄色いゼンテイカ
の花が咲き乱れていた。二十匹たらずの野犬の集
団だったがいつの間にかリーダーはチャータにな
っていた。チャータとシロを先頭にエサに乏しく
皆痩せこけていたけど歯向かったり勝手な行動を
とるものもなく極めて当卒のとれた集団になって
いた。長い遠征の結果やっと平和な場所に辿りつ
いたとき、ちょうど宵のはじまる頃で花園の高原
の上にまん丸いキレイな月が出ていた。
チャータは、みんなに振り返って「ここは『月
の丘』と呼ぼう。これからわれらが住む縄張りに
なるのだから」と告げると魂の底から突き上げる
ような遠吠えをした。
月の丘。なんとロマンティックな響きだろう。
腹を減らしたヤマイヌたちは、もう険しい山に登
ったり、激流の沢を渡ったりしなくていいと思う
とほっとしてお互い痩せた肩を寄せ合って眠りに
ついた。
チャータは月明かりの中若いシロの首を噛み、
身体が宙に浮きそうな苦しいまでのシロの甘い匂
いを嗅いではげしく腰と肢とをこすり合わせた。
お尻を突き出したシロの弱い溜息にマスキングす
るみたいに大きな声を張りあげてシロの上に乗っ
かった。シロは頭を上下に振り、平原のチングル
マの花弁が千切れて鼻にはり付いて悶えた。チャ
ータの星空を切り裂き飛翔する雷竜の如き逞しい
男の竿が伸びあがり、シロの身体を真っ二つにし
た。今度はチャータより高い声をシロが満月に向
かってあげた。
草原の花に命が宿るようにチャータとシロの背
中の毛はかたく立ちあがった。丘の上で休んでい
たグレーの弟は、そんなチャータとシロを薄目に
見て微笑むと再び眠りについた。
その年の秋。ヤマイヌたちが新しいテリトリー
にやっと慣れた頃。シロは三匹の子を産んだ。チ
ャータの二世たちだ。メスがニ匹に一番下が男の
子だった。チャータは父親になったが自分が父に
育てられたこともなく母もほんの数カ月で別れ別
れになったので小さなミルク臭い口がピイピイ寄
って来るのに戸惑った。しかし子供たちは、食欲
旺盛でシロの乳をむさぼって食らいついていた。
一番大きな女の子がシロの最もミルクの出る乳に
喰いついて、次の女の子がその後につづき小柄な
男の子は乳の出の悪い腹の下のオッパイに吸いつ
いた。この子らの生存競争があまりにも激しいの
でシロは時々、姉になる白毛の子を怒り、黒毛の
弟に一番いいオッパイを付け替えてやった。そん
な時牙を剥いて子をたしなめるシロの怖い顔をチ
ャータは、はじめて見た。何日もそんな子育てが
つづいて、三匹の子らはやっと同じ大きさの仔犬
に育った。
高原をウサギを追い、小鹿を追い白毛の女の子
らと黒毛の男の子にチャータは狩りのやり方を教
えた。真ん中の女の子以外はみるみるその技を覚
えてまだ半年も経たないのに一人前にねずみを捕
ってシロやチャータの前に誇らしげに咥えてくる
のだった。
チャータは、この平和な高原で子育てできるこ
とに感謝して群れを引き連れて白神の谷から高原
の口までの「月の丘」の林を駆け巡った。雨がつ
づき酷暑が幅を利かして木の実が採れなくてもチ
ャータの群れは確実に獲物のシカを射止め群れの
誰もが飢えることはなかった。チャータの無口な
がら危険なことには自ら臨み、野犬同士の争いに
は容赦なく攻撃して悩むものにはやさしく鼻面を
舐めてやる。そんなリーダーの資質が深い信頼を
みんなから勝ち取っていた。
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