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ある日カッパ姉ちゃんとカメラおじさんの家に一匹の子犬がやってきた。
日々のうつろいの発見と冒険を胸に生きていこう!

茶トラとシロの愛

2011年02月11日 | お宝テレビ館
愛しいふたり。
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さすらいー森の王者21

2011年02月11日 | 投稿連載
森の王者 作者大隅 充
    21
 母から聞いたチャータの物語。オサの伝説。そして
カイの逸話。コロには、カイが一人で百年生きていた
ことの驚きよりもカイがコロに向かって笑ったくれた
ことが心の奥に重いこととして残った。
 人間は、勝手に欲望に身を任せても不慮の事故に遇
わない限り六十、七十、八十と生きる。コロたち犬族
カニスは、その五分の一生きたらいい方だ。ただただ
代が変わり、気のいい奴。臆病なやつ。神経質な奴。
呑気な奴・・・ いろいろいてある者は、病気になり
又ある者は、勝負に負け命を落とす。どれだけ有能で
みんなから慕われていてもその生は限られている。オ
サのような偉大な指導者は、何百年に一匹出るかどう
かだ。それがたとえ死肉を食べていようとも百年生き
ている。どんな大きなイノシシを仕留めようが熊と互
角に戦う力があろうが無傷で生きることの難しさ。何
より生き抜くことがどれだけ大事か、カイの笑みの中
にその意味の重要さがあったようにコロは思った。
 沼に消えたカイは、又明日あそこに現れて手負いの
シカなどを沼に引き込んで食べる。まるでこのイオウ
の谷に充満している空気と沼の水がカイの長寿を作り
出しているように想像する。ここは、特殊な場所だっ
た。
 生まれた土地を離れ、旅に出る。しかしその旅も途
中で行動を別にして住み着いてしまう一匹オオカミ。
それは、すべての生の楽を捨てて世捨て人となるかに
誰も思い憐れみ、悲しんだりした。しかしカイは苦と
いう地獄の沼で百年にわたり虫ケラのような生活をし
て只命をつないでいた。今でもカイになりたいかと言
われればだれもが嫌な気持ちが先にたつだろう。でも
カイはこの世のものとは思えない美しい声を手に入れ
た。あの声に引き寄せられて沼にはまる者もきっとい
るだろう。
 カイとの遭遇の数日後。コロはイオウ谷を抜けて火
山の峰を越え、北の原野に出た。
そしてその原野についた時、地平に陽の沈むのを見な
がらそのカイの歌声はコロの耳の中でずっとエンドレ
スに鳴り続けていた。美しい歌声の力は、コロに只生
きることの大切さを教えてくれた。どんな事態になっ
ても生きてることは貴重なことだ。生きていることが
何よりも勝っている。そのことをあのイオウの沼でコ
ロは体で実感した。
 一週間が過ぎて原野の果てに黄色い花の乱れ咲く平
原にコロはやって来た。そしてそこに自分よりも大き
なオオカミの群れが野の花の間から見え隠れしている
のを発見した。長い旅の終わりにコロは、ついに本物
のオオカミと出会ったのだった。
 その花園の入り口に小さな岩山があった。コロは恐
る恐る尻尾を巻いてその岩山の裏から群れている数十
頭のエゾオオカミを盗み見た。五匹の子供を連れた体
の大きなオオカミたち。とても楽しそうに遊んでいる。
 コロは、自分の心臓がドキドキしているのを抑える
のが大変だった。そのうち何か甘い肉の匂いがした。
コロは、岩に爪を立てて周りを見回した。するとコロ
のすぐ後ろにコロの倍はある巨大なオスオオカミがシ
カの肉のついた骨を咥えたまま立っていた。コロが背
中の毛を逆立て飛び退こうとした時には、そのオスオ
オカミの咥えた骨で突き出されて岩の下へ落ちいてい
た。
 きゃーん。コロは、その細い叫びひとつしか発する
ことができなかった。
 オスオオカミが舞い降りてくると同時に周りいたエ
ゾオオカミがみんな集まって来た。頭の天辺に白毛の
あるメスオオカミが子供のオオカミを蹴散らしてコロ
の真上に顔を載せて来た。コロの三倍はある。他のオ
オカミもみんな大きく。よく見ると子供たちですらコ
ロより大きかった。
 白毛のメスオオカミはコロを睨みつけて急に空に向
かって叫び声をあげた。その口から覗く牙は、鋭利な
刀のようにキラリと光って巨大だった。あの牙で噛ま
れたらヒトタマリもない。しかも同じ牙をもった奴ら
がウヨウヨといる。取り囲まれて逃げることは不可能
だった。たぶん一撃で首が飛び、肢が千切れる。コロ
は、背筋が冷たくなるといっしょに首をできるだけ引
っ込めた。
 後ろからあのオスオオカミが骨を投げ捨ててウオオ
オと吠えて跳びかかって来た。
コロは、咄嗟に右へ飛びのいたが見事な運動能力でオ
スオオカミは、右へ避けたコロの腰を両手で押さえこ
んだ。コロは、いとも簡単に腹を見せた。オスオオカ
ミの牙は容赦なくそのコロの柔らかい腹に刺さって来
た。
 陽は完全に沈み切った訳じゃなく地平線の彼方から
の残り日でオオカミたちの姿と動きがかろうじて分か
った。腹這いになったコロの前で巨大なオスオオカミ
が転がっていた。
うううぉぉぉーー
鳴いたのは、メスオオカミだった。そしてその長い鼻
先でオスオオカミを起こし、コロを起こした。メスオ
オカミがオスオオカミを突き飛ばしてコロを救ったの
だった。
ぶるぶる震えながら立ちあがったコロの鼻をメスオオ
カミがペロりと舐めた。
 そのときコロは、ハッとして見上げた。そのメスオ
オカミの舌の匂いは、女神と言われたコロの母と同じ
匂いがしたのだった。
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