久々にぽっぽ通信のハト爺さんが
ベランダに来て、今週の大発見ニュースを
伝えに来たよ。
大阪の小学4年生の熊谷菜津美ちゃんが和歌山県の湯浅町で
新種のエビの化石を発見したんじゃ。
オマールエビの遠い祖先になるそうじゃ。
およそ1億3000万年前に日本の海にいたエビで
発見したお手柄の女の子の名前をとって
「ホプロパリア・ナツミアエ」って名付けられたんじゃ。
ふーん。永遠にナツミちゃんの名前が教科書に残るんだ。
すごいなあ。
実は、ぼくも夏にかじって叱られた掃除機の先を
こっそりあるとこに埋めてあるんだ。
一億年後に掘り返したら、新種で有名になるかな?
「ナツカシア・メンカジリ・ワルイコノズル」って名前で・・・・

そっか。一億年じゃぼく、生きてないかあ。
NHK新種のエビの化石発見
ベランダに来て、今週の大発見ニュースを
伝えに来たよ。

大阪の小学4年生の熊谷菜津美ちゃんが和歌山県の湯浅町で
新種のエビの化石を発見したんじゃ。
オマールエビの遠い祖先になるそうじゃ。
およそ1億3000万年前に日本の海にいたエビで
発見したお手柄の女の子の名前をとって
「ホプロパリア・ナツミアエ」って名付けられたんじゃ。
ふーん。永遠にナツミちゃんの名前が教科書に残るんだ。
すごいなあ。
実は、ぼくも夏にかじって叱られた掃除機の先を
こっそりあるとこに埋めてあるんだ。
一億年後に掘り返したら、新種で有名になるかな?
「ナツカシア・メンカジリ・ワルイコノズル」って名前で・・・・

そっか。一億年じゃぼく、生きてないかあ。
NHK新種のエビの化石発見
こちら、自由が丘ペット探偵局 作者古海めぐみ
40
土手の淵に張られているトラロープを佐藤沙織は、潜って
斜面に片足を踏み出して、下にいる上田祐二らしき人物にコ
ンタクトの大きな瞳を細めて眼を凝らした。
車のドアをバタンと閉めた福田刑事は、携帯を取り出すと119
に連絡して「世田谷区宇奈根の多摩川河川敷で不審火です。」
と緊急出動を要請した。
土手の下でその福田の覆面パトカーの点滅するパトランプを
見上げた上田も土手の上のお得意さんの佐藤沙織を発見した。
佐藤さん?
と首を傾げた上田の眼と沙織の眼がカチっと合わさった。
「キッズローブの店長さーん!」
工事中のパイロンに囲まれた土手下にいる上田祐二に向かって
ものすごいスピードで急斜面を手を振りながら佐藤沙織が駆け
下りていった。
びっくりしたのは、祐二だった。
「佐藤さん!」
と顔をあげた祐二の胸にいきなり暗い斜面でブレーキの利かない
ミニスカートの沙織が飛び込んできたので一緒になって濡れた
草原に倒れこんだ。
「店長さん。」
「佐藤さんー・・・」
倒れた上田に沙織が馬乗りになった。
「どうしたんですか。」
「犬飼さんを探しに来たの。」
「健太さん?」
こっくりと沙織が頷いた。上田祐二は、こっちもわからないんだ
と首を振った。
「セイコちゃんの後を追って・・」
「はい。はい。セイコちゃんが来たよ。確かに・・・」
ふたりは、お互いに服の汚れを掃い、中学生みたいにキャッキャ
言いながら立ち上がった。
すると土手の中腹まで来た福田刑事が静かにと二人を制して炎の
方を指さした。「誰かの声がする。ほら。」
セイコちゃんの羽ばたく炎の方の、遠い地底から響く男の声がした。
おーい・・おーい・・・
葦に吹く風に乗って低い亡霊のような声が三人の耳まで聞こえて
きた。福田刑事は、斜面を一気に駆け下りると葦原にぽっかり開
いた「天国の門」の中へ走って行った。
その川風に漂う亡霊の声の主は、燃えさかる葦原の中に開いた
大きな穴の底にいて、身体を寄せ合って腰まで生コンに埋まった
健太と春だった。
その深い穴底にいる健太の目から丸い世界への入口は、炎で明る
く昼間のように見えた。
「おーい!誰かいないか!おーい。」
「誰かいませんかー」
春も声を絞り出した。
おかしいぞ。急に人の気配がなくなって火が出てきた。と健太は
春の耳に囁いた。どうしたのかしら?と春も新しい不安を瞳に宿
して健太に聞き返した。
「大丈夫ですか。」
その丸い穴の入口に火に赤々と照らされた福田刑事の顔がぬうっ
と現われた。
そしてペンライトが発掘された石の若い男女の彫像になりかけた
健太と春とを照らした。
健太は、ここ、ここだと灰色の手を振って眩しい小さなLEDの
太陽に応えた。
「今助けるから・・・」
福田は、何か梯子かロープがないか、葦原のミステリーサークル
を見回した。
すると燃えているコンクリートミキサーの裏側にふたりの人間が
倒れているのを発見した。
一人は、白髪の五分刈りのシラネで喉から血を流して蹲ってぶる
ぶる震えている。
又もう一人は、長い足をくの字に折って股を両手で押さえて目を
剥いたまま動かなくなっているバール男こと安田真一だった。
福田は、ここにも被害者がいるとすぐに火を避けて這うように近
づいていくと、シラネの喉も真一の股も鋭い牙で服ごと噛み切ら
れているのを目の当たりにした。
しかも二人とも手で出血を押さえて青くなった唇を小刻みにガチ
ガチと震わせていた。
40
土手の淵に張られているトラロープを佐藤沙織は、潜って
斜面に片足を踏み出して、下にいる上田祐二らしき人物にコ
ンタクトの大きな瞳を細めて眼を凝らした。
車のドアをバタンと閉めた福田刑事は、携帯を取り出すと119
に連絡して「世田谷区宇奈根の多摩川河川敷で不審火です。」
と緊急出動を要請した。
土手の下でその福田の覆面パトカーの点滅するパトランプを
見上げた上田も土手の上のお得意さんの佐藤沙織を発見した。
佐藤さん?
と首を傾げた上田の眼と沙織の眼がカチっと合わさった。
「キッズローブの店長さーん!」
工事中のパイロンに囲まれた土手下にいる上田祐二に向かって
ものすごいスピードで急斜面を手を振りながら佐藤沙織が駆け
下りていった。
びっくりしたのは、祐二だった。
「佐藤さん!」
と顔をあげた祐二の胸にいきなり暗い斜面でブレーキの利かない
ミニスカートの沙織が飛び込んできたので一緒になって濡れた
草原に倒れこんだ。
「店長さん。」
「佐藤さんー・・・」
倒れた上田に沙織が馬乗りになった。
「どうしたんですか。」
「犬飼さんを探しに来たの。」
「健太さん?」
こっくりと沙織が頷いた。上田祐二は、こっちもわからないんだ
と首を振った。
「セイコちゃんの後を追って・・」
「はい。はい。セイコちゃんが来たよ。確かに・・・」
ふたりは、お互いに服の汚れを掃い、中学生みたいにキャッキャ
言いながら立ち上がった。
すると土手の中腹まで来た福田刑事が静かにと二人を制して炎の
方を指さした。「誰かの声がする。ほら。」
セイコちゃんの羽ばたく炎の方の、遠い地底から響く男の声がした。
おーい・・おーい・・・
葦に吹く風に乗って低い亡霊のような声が三人の耳まで聞こえて
きた。福田刑事は、斜面を一気に駆け下りると葦原にぽっかり開
いた「天国の門」の中へ走って行った。
その川風に漂う亡霊の声の主は、燃えさかる葦原の中に開いた
大きな穴の底にいて、身体を寄せ合って腰まで生コンに埋まった
健太と春だった。
その深い穴底にいる健太の目から丸い世界への入口は、炎で明る
く昼間のように見えた。
「おーい!誰かいないか!おーい。」
「誰かいませんかー」
春も声を絞り出した。
おかしいぞ。急に人の気配がなくなって火が出てきた。と健太は
春の耳に囁いた。どうしたのかしら?と春も新しい不安を瞳に宿
して健太に聞き返した。
「大丈夫ですか。」
その丸い穴の入口に火に赤々と照らされた福田刑事の顔がぬうっ
と現われた。
そしてペンライトが発掘された石の若い男女の彫像になりかけた
健太と春とを照らした。
健太は、ここ、ここだと灰色の手を振って眩しい小さなLEDの
太陽に応えた。
「今助けるから・・・」
福田は、何か梯子かロープがないか、葦原のミステリーサークル
を見回した。
すると燃えているコンクリートミキサーの裏側にふたりの人間が
倒れているのを発見した。
一人は、白髪の五分刈りのシラネで喉から血を流して蹲ってぶる
ぶる震えている。
又もう一人は、長い足をくの字に折って股を両手で押さえて目を
剥いたまま動かなくなっているバール男こと安田真一だった。
福田は、ここにも被害者がいるとすぐに火を避けて這うように近
づいていくと、シラネの喉も真一の股も鋭い牙で服ごと噛み切ら
れているのを目の当たりにした。
しかも二人とも手で出血を押さえて青くなった唇を小刻みにガチ
ガチと震わせていた。
師走。
忘年会シーズン。
さて、景気のいい時より減ったとはいえ、
夜の駅は、酔っぱらいが増える。
世の憂さを晴らすー。
ウチにもソトにも憂さはある。
忘年会・クリスマス会いろいろ掛け持ちの諸兄。
憂さ晴らしのない飲み会もひとつは、持とう。
と言って、
またまた飲み会が増えちゃもともこうもない。
大事に至らず、ほどほどに。
忘年会シーズン。
さて、景気のいい時より減ったとはいえ、
夜の駅は、酔っぱらいが増える。
世の憂さを晴らすー。
ウチにもソトにも憂さはある。
忘年会・クリスマス会いろいろ掛け持ちの諸兄。
憂さ晴らしのない飲み会もひとつは、持とう。
と言って、
またまた飲み会が増えちゃもともこうもない。
大事に至らず、ほどほどに。
こちら、自由が丘ペット探偵局 作者 古海めぐみ
(これまでのあらすじ)
自由が丘ペット探偵局の犬飼健太は、田村に頼まれてナナと
いう迷子犬を探していると子供服店の上田祐二と新写真店の
猫田春のお客であった佐藤沙織からネットの売買で問題のある
怪しいブリーダーのワンニャン天国堂の捜査をも頼まれ、
奥多摩湖に売れない犬を捨てていたり、ペット虐待などの
正体を突き止めたが、ブリーダーの強姦魔の息子に捕まり
多摩川の河原でコンクリ詰めにされそうになった。
一方ナナの行方を捜していた田村は上田と一緒に多摩川ま
で来てナナらしき野犬に出遭った・・・・
39
「行っちゃったよ。ナナちゃん。いいの。田村さん。」
祐二が追いかけようとロープを跨いで二三歩踏み出しながら言った。
しかしあれだけナナ探しに必死になっていた田村から何の応答も
ない。振り返ってみると、田村良弘は何か憑き物が落ちたように
妙に涼しい顔で黙って立っていた。
今まで泣きながらナナ!と叫んでいたのがウソのように別人格の
通りすがりの人になっていた。ナナという犬がいたんですか、
今逃げて行った野犬がどうかしたんですか、と言いそうな目の色
をしていた。
「田村さん。今の、ナナでしょ。私も会ってるから、やや精悍に
なっていたけど確かに探していたナナでしょ。あれ。」
「はい。」
田村は抑揚のない返事をして、くるりと踵を返して土手を登ろう
と歩き出した。
「ええ?えええ!」
なんでそんなに変わっちゃうの。
納得いかない表情で祐二は田村の背中を睨んだ。
田村は、土手の草に足を滑らせて両手をついて踏みとどまって
から姿勢を立て直すと、又静かに上り始めた。ゆっくりと。
そして振り返らずに言った。
「ぼく、自分らの不幸をみんなナナ探しにかぶしていたんです。
なんかすべてがうまくいかないもんだから、ナナって叫んで走り
回っていると気が落ち着いたんです。」
「そんな・・・・・」
「そうなんです。わかったんです。今精悍なナナの顔を見たら。
あの、逞しい独立心に溢れた、きれいなナナの姿を見たら。本当
はナナなんかどうでもよかったのかもしれないんです。いや、
ナナの方が僕らなんか必要としてなかった気がしたんです。
さっきナナと目が合ってはっきりしたんです。そのことが。」
田村は土手に手をついた時濡れたれんげ草の汁が掌に着いたらしく
ズボンに何回もこすり付けて又上りだした。
「何だよ。あんた。勝手なことばかり言うんじゃないよ。ここ
まで来て・・・」
祐二は唇を震わしてその言葉を土手の田村に投げつけた。
田村は、振り向かずに「スイマセン」とぽつりと言ってさらに
歩き出した。
「あんたなんか絶対にペット飼うんじゃねえぞ。もう。」
飛び跳ねるように身体を揺すって土手を追いかけようと足を出
した祐二の頭を突然セイコちゃんが掠めて飛んで、大きな声で
カアと鳴いたかと思うと土手の途中の田村の肩を爪と嘴で攻撃
して満月の夜空へ舞い上がった。
背広の肩がベロリと破けて土手に倒れた田村は、今の攻撃がセ
イコちゃんのものではなく祐二が投げかけた非難の言葉だと一
瞬錯覚して、怯えたように両膝をついて土手下の祐二に「申し
訳ありません」と汗でくしゃくしゃになった額をびしょびしょ
のれんげ草の斜面にこすり付けて謝った。
なんとなく安物の田舎芝居のようにも見えたが、涙目の真っ直
ぐな輝きがウソではないのがわかった。
「自分です。自分が、しっかりしないとダメでした。すみませ
んでした。」
と初戦敗退した高校球児みたいにオイオイと泣き出した。
姿は見えないが闇空のどこかでセイコちゃんが再び鳴いた。
すると土手の上をパトライトを点滅させて黒のトヨタマーク�
がやってきた。
「ああ。セイコちゃんの声!」
マーク�の覆面パトカーの後ろの席から佐藤沙織が顔を出して
叫んだ。
そのマーク�を運転していた福田刑事は、土手道に駐車している
祐二のサーブと面を合わせるように向かい合って車を停めた。
土手下の葦原では、赤々とその真ん中で炎が燃え上がって周り
の葦に燃え移っていた。そしてその上空をセイコちゃんがぐるぐ
ると飛び回っていた。
「セイコちゃんが私たちを誘導してくれたのはココよ。刑事さん」
と佐藤沙織が立ち入り禁止の土手道へ出た。
「すごい。燃えてるわ。きれい。」
「火事です。」
と福田が冷静に答えるとびっくりして目を見張った沙織は、上田
らしい人影を見つけた。
(これまでのあらすじ)
自由が丘ペット探偵局の犬飼健太は、田村に頼まれてナナと
いう迷子犬を探していると子供服店の上田祐二と新写真店の
猫田春のお客であった佐藤沙織からネットの売買で問題のある
怪しいブリーダーのワンニャン天国堂の捜査をも頼まれ、
奥多摩湖に売れない犬を捨てていたり、ペット虐待などの
正体を突き止めたが、ブリーダーの強姦魔の息子に捕まり
多摩川の河原でコンクリ詰めにされそうになった。
一方ナナの行方を捜していた田村は上田と一緒に多摩川ま
で来てナナらしき野犬に出遭った・・・・
39
「行っちゃったよ。ナナちゃん。いいの。田村さん。」
祐二が追いかけようとロープを跨いで二三歩踏み出しながら言った。
しかしあれだけナナ探しに必死になっていた田村から何の応答も
ない。振り返ってみると、田村良弘は何か憑き物が落ちたように
妙に涼しい顔で黙って立っていた。
今まで泣きながらナナ!と叫んでいたのがウソのように別人格の
通りすがりの人になっていた。ナナという犬がいたんですか、
今逃げて行った野犬がどうかしたんですか、と言いそうな目の色
をしていた。
「田村さん。今の、ナナでしょ。私も会ってるから、やや精悍に
なっていたけど確かに探していたナナでしょ。あれ。」
「はい。」
田村は抑揚のない返事をして、くるりと踵を返して土手を登ろう
と歩き出した。
「ええ?えええ!」
なんでそんなに変わっちゃうの。
納得いかない表情で祐二は田村の背中を睨んだ。
田村は、土手の草に足を滑らせて両手をついて踏みとどまって
から姿勢を立て直すと、又静かに上り始めた。ゆっくりと。
そして振り返らずに言った。
「ぼく、自分らの不幸をみんなナナ探しにかぶしていたんです。
なんかすべてがうまくいかないもんだから、ナナって叫んで走り
回っていると気が落ち着いたんです。」
「そんな・・・・・」
「そうなんです。わかったんです。今精悍なナナの顔を見たら。
あの、逞しい独立心に溢れた、きれいなナナの姿を見たら。本当
はナナなんかどうでもよかったのかもしれないんです。いや、
ナナの方が僕らなんか必要としてなかった気がしたんです。
さっきナナと目が合ってはっきりしたんです。そのことが。」
田村は土手に手をついた時濡れたれんげ草の汁が掌に着いたらしく
ズボンに何回もこすり付けて又上りだした。
「何だよ。あんた。勝手なことばかり言うんじゃないよ。ここ
まで来て・・・」
祐二は唇を震わしてその言葉を土手の田村に投げつけた。
田村は、振り向かずに「スイマセン」とぽつりと言ってさらに
歩き出した。
「あんたなんか絶対にペット飼うんじゃねえぞ。もう。」
飛び跳ねるように身体を揺すって土手を追いかけようと足を出
した祐二の頭を突然セイコちゃんが掠めて飛んで、大きな声で
カアと鳴いたかと思うと土手の途中の田村の肩を爪と嘴で攻撃
して満月の夜空へ舞い上がった。
背広の肩がベロリと破けて土手に倒れた田村は、今の攻撃がセ
イコちゃんのものではなく祐二が投げかけた非難の言葉だと一
瞬錯覚して、怯えたように両膝をついて土手下の祐二に「申し
訳ありません」と汗でくしゃくしゃになった額をびしょびしょ
のれんげ草の斜面にこすり付けて謝った。
なんとなく安物の田舎芝居のようにも見えたが、涙目の真っ直
ぐな輝きがウソではないのがわかった。
「自分です。自分が、しっかりしないとダメでした。すみませ
んでした。」
と初戦敗退した高校球児みたいにオイオイと泣き出した。
姿は見えないが闇空のどこかでセイコちゃんが再び鳴いた。
すると土手の上をパトライトを点滅させて黒のトヨタマーク�
がやってきた。
「ああ。セイコちゃんの声!」
マーク�の覆面パトカーの後ろの席から佐藤沙織が顔を出して
叫んだ。
そのマーク�を運転していた福田刑事は、土手道に駐車している
祐二のサーブと面を合わせるように向かい合って車を停めた。
土手下の葦原では、赤々とその真ん中で炎が燃え上がって周り
の葦に燃え移っていた。そしてその上空をセイコちゃんがぐるぐ
ると飛び回っていた。
「セイコちゃんが私たちを誘導してくれたのはココよ。刑事さん」
と佐藤沙織が立ち入り禁止の土手道へ出た。
「すごい。燃えてるわ。きれい。」
「火事です。」
と福田が冷静に答えるとびっくりして目を見張った沙織は、上田
らしい人影を見つけた。