獣医師インディ・ヤスの冒険!

家畜伝染病と格闘する獣医師インディ・ヤスさんのブログです。インディ・ヤスさんはロシア・東欧のオタクでもあります。

この冬の高病原性トリインフルエンザの発生

2015-01-17 23:50:38 | 仕事
 昨年末から高病原性トリインフルエンザの発生が続いている。最初は、昨年の12月16日に発生した宮崎県延岡市のブロイラー農場(約4,000羽飼育)の事例、2例目は同じく宮崎県であるが、1例目と約80km離れている宮崎市で12月27日に発生したブロイラー農場(約4万2000羽飼育)の事例、3例目は12月30日に発生した山口県長門市のブロイラー農場の事例(約3万7000羽飼育)、4例目は1月15日に岡山県笠岡市の採卵鶏農場(約20万羽飼育)で、これまでのところ4事例が確認され、いずれも防疫措置と移動制限がなされている。
 これらの事例の原因ウイルスは、トリインフルエンザウイルスのH5N8亜型であり、昨年春に熊本県の人吉地方のブロイラー農場の高病原性トリインフルエンザ事例の原因ウイルスと同じタイプである。実は、このタイプのトリインフルエンザウイルスは、この秋から冬にかけて日本に飛来した野鳥から分離されており、各都道府県の家畜保健衛生所は警戒してきたウイルスである。さらに言えば、韓国ではこのH5N8亜型トリインフルエンザウイルス感染症が昨年1月から切れ目なしに発生しており、我が国の関係機関はそのウイルスが日本に持ち込まれることを昨年から危惧していた。
 ところで、数年前の高病原性トリインフルエンザの原因ウイルスはH5N1亜型であったが、ここ1,2年はH5N8亜型である。この変化は、日本や韓国など極東アジアに限ったことではなく、ヨーロッパで発生している高病原性トリインフルエンザでも同様である。
 このH5N8亜型トリインフルエンザウイルスの起源はどこなのであろう。元をたどれば最初は野生のカモでの遺伝子再集合に行きつくことは予想されるものの、どのような環境、どのような動物への感染を経てH5N8亜型が高病原性トリインフルエンザの主役になったのか、非常に興味がある。
 まあ、それは個人的に文献情報を調べるとして、原因ウイルスの亜型が何であるにしろ、兎に角、今回の高病原性トリインフルエンザ発生における農場への侵入経路の解明が強く望まれる。ただ、一方でその解明は容易ではなく、これまでの事例に明確に究明できた例はないのが現実である。しかし、こういう伝染病の侵入経路究明は数多くの情報を積み上げていくことが大切であり、その結果から見えて来ることも多いことから、侵入経路の究明をおざなりにしてはならないと思う。