日 常 生 活 密 着 型 異 種 格 闘 技 バ ー
M's Bar 営業中
おじちゃんからの
買い物はもちろん、日常生活にまつわる全ての用事を、自宅から半径百m圏内で強引に済ませがちな霊長類ヒト科高円寺属ナマケモノのマスターです、こんばんは。
昨日ね、買い物しようと家を出て、道を歩いてたんです。
すると、一台のワンボックスカーが歩行者をよけつつノロノロ向うからやって来るのが目に入りました。
助手席側の窓からは、人の手がヒラヒラ。
どうも誰かを手招きしてるようです。
運転手も助手席のおじちゃんも、頭にタオルを巻いた作業着スタイル。
助手席のおじちゃんは、満面の笑顔で、んもぅにっこにこのくっしゃくしゃの笑顔で一生懸命に手招きしています。
年の頃は50代から60代くらいでしょうか。
仕事焼けと酒焼けがミックスされたような、浅黒い肌。
見るからに情の厚そうな、人懐こい笑顔。
車の後部座席には、ペンキだか洗剤だか分かりませんが、なにやら業務用の道具がぎっしり詰まっているのが見えます。
あぁ、仕事帰りのおじちゃん達なんだな、今日も一日ごくろうさん。
どうよ、今日は疲れたかい?早く家に帰ってビールで一杯やりたいでしょう。
誰か知合いを発見して手招きしてるんだねぇ、でもなかなか気付いてくれないんだねぇ。
と、なんとなく微笑ましいその光景を眺めつつ歩いてたんです。
おじちゃん、ついに窓から上半身乗り出しちゃって危ないなぁ。
ほらほら、通行人にぶつかっちゃうよぉ。
知り合いの人はどうして気付いてあげないんだろう。
おじちゃん、あんなに手を振ってるのになぁ。
よっぽど会いたかった人を偶然発見したんだろうなぁ。
思い出の人なのかな?幼少の頃に生き別れた妹とか。
まさか初恋の人だったりしてね。
こんな街中でばったり出会ったら、運命的な再会だよなぁ。
あんなに手を振ってるんだもん、きっとそうだよ。
ほいで、恋が再燃しちゃったりして。
おじちゃんの年じゃあ妻子があるだろうから、不倫!?
いや、相手も夫と子供がある身なんだけど『このまま連れて逃げて』とか言われて、二人でどっか外国に逃避行しちゃうのかも。
『おぅヤス、このまま空港までやってくんな』
『ええ?親方、帰るんじゃないんスかぁ!?』
『ぅるせぇっ!黙って空港へ行けぇぇぇ』
…などとウキウキ妄想列車を暴走させていると、車はもう目の前に。
そして。
わしの横でぴたりと止まった車。
にこにこ笑顔のおじちゃんが、じっとわしの目を見つめています。
『わ、わし!?』
と、咄嗟に自分の鼻を指差すと、おじちゃんは笑顔のままウンウンと頷きます。
辺りをキョロキョロ見渡して他に該当者が居ないか確かめてから、再度『わし!?』と鼻を指差すと、おじちゃんは笑顔のまま再度ウンウンと頷きます。
わ…わしなの?
さっきから激しく手招きしてた相手はわしだったと言うの…??
ど、どう見ても、し、知らないおじちゃんだぞ?
んん?…待てよ?
知ってる人なのかも…?と、瞬時にめまぐるしく過去の記憶をまさぐるが、該当人物なし。
おじちゃんは、相変わらず笑顔のままわしを手招きしています。
な…なんだろう?
新手の誘拐か?
このまま拉致監禁なんて事態に…?
いや、誘拐して身代金が取れそうな相手じゃない事くらい見りゃ分かるだろう。
ソープに売り飛ばしたところで一銭も儲からなそうな事はもっと分かるだろう(泣)
な…なぜにわし?
あなたは一体誰?
おじちゃぁぁぁぁん!?
クエスチョンマークで頭の中が埋め尽くされていたのも、実際にはほんの数秒間だったでしょう。
おじちゃんの目に見つめられ、手招きされ、まるで吸い寄せられるようにワンボックスカーに近付いて行ったわし。
無視して通り過ぎる事だって十分可能だったわけですから、まさにおじちゃんの笑顔に吸い寄せられたとしか言いようがありません。
助手席窓の横に立ったわしに、おじちゃんは笑顔のまま、さっきまで手招きしていた手とは反対の手を窓からにゅっと差し出しました。
なにやらギュッと固く握り締めたグーの手を。
するとどうでしょう。
あぁ。条件反射です。
人間の悲しい、いや、貧乏人の卑しい条件反射です。
目の前に下向きグーを出されると、思わず両手で受けるポーズを、すなわち蛇口の水を受けるポーズを、すなわち
『なんかイイもんくれるの?ポーズ』
を条件反射でしてしまっているではありませんか。
今、思い返すとゾッとします。
おじちゃんのあの手の中にもし、某国が極秘裏に開発した生物兵器でも入っていたとしたら。
小型核爆弾が入っていたとしたら。
金銀パールプレゼントが入っていたとしたら。
(それは好ましい)
話がそれましたが、条件反射でわしが出した両手におじちゃんの手から落とされたモノは。
落花生6粒。
な…何故にぃぃぃぃぃぃ。
長い時間、おじちゃんが握り締めていたからでしょうか。
ソレは人肌に、いい塩梅に温まっていました。
ええ、心地よく。ほかほかに。
両手の平にほかほかの6粒の落花生を乗せたまま呆然と立ち尽くすわしを残して、おじちゃんを乗せた車は何事も無かったかのように走り去って行きました。
な…なんだったんだ一体?
おじちゃんは誰だったんだ?
この落花生は…なに?
どうしたらいいの?食べろってこと?
おじちゃんはなんで終始無言だったんだ?
単なる好意?
落花生を食べつつ
『おぅヤス、この落花生うめぇなぁ』
『うまいッスよねぇ、親方ぁ』
なんてほのぼの帰宅途中、いかにも栄養が足りてなさそうなわしが通りかかったもんだから、思わず落花生をあげたくなっちゃったんかいな?
落花生を握り締めたままでお店に入るわけにもいかないので、買い物はあきらめて、あんまりの不思議な出来事に首を捻りながら家に戻りました。
今、わしのPCモニターの脇には、6粒の落花生が飾ってあります。
昨日ね、買い物しようと家を出て、道を歩いてたんです。
すると、一台のワンボックスカーが歩行者をよけつつノロノロ向うからやって来るのが目に入りました。
助手席側の窓からは、人の手がヒラヒラ。
どうも誰かを手招きしてるようです。
運転手も助手席のおじちゃんも、頭にタオルを巻いた作業着スタイル。
助手席のおじちゃんは、満面の笑顔で、んもぅにっこにこのくっしゃくしゃの笑顔で一生懸命に手招きしています。
年の頃は50代から60代くらいでしょうか。
仕事焼けと酒焼けがミックスされたような、浅黒い肌。
見るからに情の厚そうな、人懐こい笑顔。
車の後部座席には、ペンキだか洗剤だか分かりませんが、なにやら業務用の道具がぎっしり詰まっているのが見えます。
あぁ、仕事帰りのおじちゃん達なんだな、今日も一日ごくろうさん。
どうよ、今日は疲れたかい?早く家に帰ってビールで一杯やりたいでしょう。
誰か知合いを発見して手招きしてるんだねぇ、でもなかなか気付いてくれないんだねぇ。
と、なんとなく微笑ましいその光景を眺めつつ歩いてたんです。
おじちゃん、ついに窓から上半身乗り出しちゃって危ないなぁ。
ほらほら、通行人にぶつかっちゃうよぉ。
知り合いの人はどうして気付いてあげないんだろう。
おじちゃん、あんなに手を振ってるのになぁ。
よっぽど会いたかった人を偶然発見したんだろうなぁ。
思い出の人なのかな?幼少の頃に生き別れた妹とか。
まさか初恋の人だったりしてね。
こんな街中でばったり出会ったら、運命的な再会だよなぁ。
あんなに手を振ってるんだもん、きっとそうだよ。
ほいで、恋が再燃しちゃったりして。
おじちゃんの年じゃあ妻子があるだろうから、不倫!?
いや、相手も夫と子供がある身なんだけど『このまま連れて逃げて』とか言われて、二人でどっか外国に逃避行しちゃうのかも。
『おぅヤス、このまま空港までやってくんな』
『ええ?親方、帰るんじゃないんスかぁ!?』
『ぅるせぇっ!黙って空港へ行けぇぇぇ』
…などとウキウキ妄想列車を暴走させていると、車はもう目の前に。
そして。
わしの横でぴたりと止まった車。
にこにこ笑顔のおじちゃんが、じっとわしの目を見つめています。
『わ、わし!?』
と、咄嗟に自分の鼻を指差すと、おじちゃんは笑顔のままウンウンと頷きます。
辺りをキョロキョロ見渡して他に該当者が居ないか確かめてから、再度『わし!?』と鼻を指差すと、おじちゃんは笑顔のまま再度ウンウンと頷きます。
わ…わしなの?
さっきから激しく手招きしてた相手はわしだったと言うの…??
ど、どう見ても、し、知らないおじちゃんだぞ?
んん?…待てよ?
知ってる人なのかも…?と、瞬時にめまぐるしく過去の記憶をまさぐるが、該当人物なし。
おじちゃんは、相変わらず笑顔のままわしを手招きしています。
な…なんだろう?
新手の誘拐か?
このまま拉致監禁なんて事態に…?
いや、誘拐して身代金が取れそうな相手じゃない事くらい見りゃ分かるだろう。
ソープに売り飛ばしたところで一銭も儲からなそうな事はもっと分かるだろう(泣)
な…なぜにわし?
あなたは一体誰?
おじちゃぁぁぁぁん!?
クエスチョンマークで頭の中が埋め尽くされていたのも、実際にはほんの数秒間だったでしょう。
おじちゃんの目に見つめられ、手招きされ、まるで吸い寄せられるようにワンボックスカーに近付いて行ったわし。
無視して通り過ぎる事だって十分可能だったわけですから、まさにおじちゃんの笑顔に吸い寄せられたとしか言いようがありません。
助手席窓の横に立ったわしに、おじちゃんは笑顔のまま、さっきまで手招きしていた手とは反対の手を窓からにゅっと差し出しました。
なにやらギュッと固く握り締めたグーの手を。
するとどうでしょう。
あぁ。条件反射です。
人間の悲しい、いや、貧乏人の卑しい条件反射です。
目の前に下向きグーを出されると、思わず両手で受けるポーズを、すなわち蛇口の水を受けるポーズを、すなわち
『なんかイイもんくれるの?ポーズ』
を条件反射でしてしまっているではありませんか。
今、思い返すとゾッとします。
おじちゃんのあの手の中にもし、某国が極秘裏に開発した生物兵器でも入っていたとしたら。
小型核爆弾が入っていたとしたら。
金銀パールプレゼントが入っていたとしたら。
(それは好ましい)
話がそれましたが、条件反射でわしが出した両手におじちゃんの手から落とされたモノは。
落花生6粒。
な…何故にぃぃぃぃぃぃ。
長い時間、おじちゃんが握り締めていたからでしょうか。
ソレは人肌に、いい塩梅に温まっていました。
ええ、心地よく。ほかほかに。
両手の平にほかほかの6粒の落花生を乗せたまま呆然と立ち尽くすわしを残して、おじちゃんを乗せた車は何事も無かったかのように走り去って行きました。
な…なんだったんだ一体?
おじちゃんは誰だったんだ?
この落花生は…なに?
どうしたらいいの?食べろってこと?
おじちゃんはなんで終始無言だったんだ?
単なる好意?
落花生を食べつつ
『おぅヤス、この落花生うめぇなぁ』
『うまいッスよねぇ、親方ぁ』
なんてほのぼの帰宅途中、いかにも栄養が足りてなさそうなわしが通りかかったもんだから、思わず落花生をあげたくなっちゃったんかいな?
落花生を握り締めたままでお店に入るわけにもいかないので、買い物はあきらめて、あんまりの不思議な出来事に首を捻りながら家に戻りました。
今、わしのPCモニターの脇には、6粒の落花生が飾ってあります。
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