于武陵(うぶりょう)は晩唐の詩人。唐代の公務員試験である進士に合格しながら官職に就かず、諸国を放浪したという。彼の詩に「勧酒」という五言絶句がある。
勧君金屈巵 満酌不須辞 花発多風雨 人生足別離
君(きみ)に勧(すす)む 金屈卮(きんくつし)
満酌(まんしゃく) 辞(じ)するを須(もち)いず
花(はな)発(ひら)いて 風雨(ふうう)多(おお)し
人生(じんせい) 別離(べつり)足(た)る
君に、曲がった取っ手の附いた黄金の杯(の酒)を勧める。杯にいっぱいにつがれた酒を、辞退しないでくれ。花が咲けば、風や雨が多く襲ってくるように、人も生きていれば、多くの別離があるものだ。
作家井伏鱒二は、「厄よけ詩集」で、この詩を次のように訳した。
コノ杯ヲ受ケテクレ ドウゾナミナミ注ガシテオクレ 花ニ嵐ノタトエモアルゾ 「サヨナラ」ダケガ人生ダ
一時、「厄よけ詩集」は、潜魚庵こと中島魚坊の訳を引き継いだと騒がれたが、こと「勧酒」については、井伏の訳が数段優れている。
「サヨナラ」だけが人生だ。50歳を過ぎて、この一句が心にしみる。
勧君金屈巵 満酌不須辞 花発多風雨 人生足別離
君(きみ)に勧(すす)む 金屈卮(きんくつし)
満酌(まんしゃく) 辞(じ)するを須(もち)いず
花(はな)発(ひら)いて 風雨(ふうう)多(おお)し
人生(じんせい) 別離(べつり)足(た)る
君に、曲がった取っ手の附いた黄金の杯(の酒)を勧める。杯にいっぱいにつがれた酒を、辞退しないでくれ。花が咲けば、風や雨が多く襲ってくるように、人も生きていれば、多くの別離があるものだ。
作家井伏鱒二は、「厄よけ詩集」で、この詩を次のように訳した。
コノ杯ヲ受ケテクレ ドウゾナミナミ注ガシテオクレ 花ニ嵐ノタトエモアルゾ 「サヨナラ」ダケガ人生ダ
一時、「厄よけ詩集」は、潜魚庵こと中島魚坊の訳を引き継いだと騒がれたが、こと「勧酒」については、井伏の訳が数段優れている。
「サヨナラ」だけが人生だ。50歳を過ぎて、この一句が心にしみる。