なな色メール 

シュタイナーの勉強会の仲間と始めたニュースレター。ブログでもその一部をご紹介していきたいと思います。

ひまわりになったチョコ

2007年05月01日 | さとうえりこ
その日の出来事は、6年前の丁度桜の季節だった。

ハムスターを飼っていた。合計で3匹。名前は「モモ」「チョコ」「ミルク」。最初は2匹ペットショップから。そのうち1匹を死なせてしまい、今度は娘の友達の家からやってきた。

その中のチョコの話である。

モモとチョコがペットショップから来て3ヶ月程したある日、モモが動かないことに気づいた。だが、遅かった。飼育には問題ないはずだが、何が原因なのか、ずいぶんと早い旅立ちをした。もちろん子供たちは号泣。せがんでやっと手にしたハムスター。それをすぐに失ってしまったのだから子供たちの姿は気の毒としか言いようがなかった。が、そこにまだ元気なチョコがいた。少し太めでモモよりも人馴れした、愛嬌たっぷりのチョコが子供たちの悲しみを癒してくれた。
 
ところが、その数ヵ月後。
登校前の息子が気づいた。チョコの様子がおかしいと。それまでは、ころころした姿で滑車を回したり、上へ下へと忙しく走り回ったり、可愛い仕草で子供たちを魅了していた。それが、よろよろとぜんまい仕掛けが終わってしまったかように快活なところがなくなっている。私は直感した。「モモの後を追う」と。息子の一大事である。ミルクが新顔でいるとしても、またチョコを失ってはたまらない。私に言った。「今日病院に連れて行ってあげて。」その言葉に私は内心「500円玉でおつりが来る値段で我が家にやってきたこのハムスターを病院へ!?」息子に色よい返事を私はしなかった。しかし、息子に詰め寄られた。「お母さんはチョコがこんなにおかしくなっているのに平気なの?」と。ハムスターはねずみの種類という気持ちが私にはあり、子供たちのように頬擦りしたりすることが出来ないでいた。それぐらいの気持ちしかなかったので、獣医に連れて行く熱意は正直なかったのだ。だが、息子からの押しに負けて、虫かごに入れて(正しくは入れてもらって)、娘を幼稚園に送り出した後、近所の病院へ向かった。

受付に虫かごを出し「ハムスターの様子がおかしいんです。」と言うと「今日、先生は午前中留守なんです。」「!(えっ。息子には悪いけどちょっとラッキー)」かごの中にいるチョコをその女性が手にし、様子を見てくれた。「もうだめみたいですね。」一緒に覗き込むと肩からやっと息をしていた。それを見た途端、急にチョコにも息子にも悪い気がしてきた。助けてあげたい息子の気持ちと、もうこの世から消えてなくなりそうな小さな小さな命に何て私は愚かなことを考えたのだろう、とつくづく自分の嫌なところに気づいた。

結局、息子の帰りを待たないでチョコは逝ってしまった。子供たちはまたモモと同様、庭の隅にチョコを埋めに行った。情けない母は余りにもその姿が切なくて一緒に穴を掘る手伝いをしてあげられなかった。外では近所に響き渡るほどの大声で「チョコォ~~」と合唱している。そばを通りがかった2人連れのおばあさんたちが「何した?お母さんがら怒られだが?」「んん、ハムスターが死んじゃったのぉ~~~」とまた嗚咽している。鬼婆を疑われた(確かにそうだが)私はその2人がいなくなった後、のこのこと様子を見に行った。涙でぐちゃぐちゃになった子供たちの顔を見るとこちらまで泣きたくなる。それを必死にこらえて「チョコにえさをあげなきゃね。天国でもお腹一杯食べられるようにね。」と声をかけ、毎日あげていたひまわりの種とハムスターのえさ(ペットショップで売っている)を一緒に入れて土に返した。

とそれから1ヶ月も経っただろうか。家庭菜園の野菜苗に水をやっていた時、そばのチョコのお墓からぽつぽつと小さな芽が出ているのを見つけた。雑草ではないことがすぐにわかると家の中に飛び込んだ。「チョコのお墓から芽が出ているよ。あの時えさにあげたひまわりの種から芽が出てきたよ。」子供たちはお墓に駆け出した。「本当だぁ!チョコがひまわりになった!」
いくつも出ている芽を大事に引き抜き、うまく咲くように一列に並べてあげた。

その年の夏、ひまわりは小さく数本咲いたのだった。

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