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なな色メール 

シュタイナーの勉強会の仲間と始めたニュースレター。ブログでもその一部をご紹介していきたいと思います。

自然と仲良くつき合って持続可能な開発を 

2013年04月01日 | なな色シスターズ
未来のためにできること 新シリーズに寄せて
自然と仲良くつき合って持続可能な開発を         蟻川芳子さんの記事

地球温暖化問題に世界を挙げての取り組みが進み、日本も低炭素社会の実現に向けて、着々と省エネのすすめとともに再生可能エネルギーの開発政策がとられている矢先、東日本大震災、それに伴う福島原発事故が発生した。化石燃料に頼らないエネルギーへの転換が求められているなか、原子力発電もその一環として稼動していた。もちろん、安全を前提としてのことである。

近年の生活は、エネルギーに支えられている。平均寿命の延長にもエネルギーが貢献している。食糧が豊富になる、衛生状態が良くなる、医療が発達する、厳しい温度を緩和できる等、結果として寿命が延びることに繋がる。移動時間を短縮するのも、物品の生産性を高め経済を活性化するにも、エネルギーが必要である。

原子力発電はウラン235の核分裂によるものである。ウランの中で0.7%しか存在しないこの同位体を、濃縮して核燃料とする。ウランは地殻中に低濃度で広範囲に分布して存在し、鉱床として産出するのは比較的少ないので、海水に微量存在するウランの濃縮・回収も行われているくらいである。したがって、そうたやすく得られる資源ではない。さらにたとえ爆発が起きることは想定外であったにしろ、核分裂による莫大なエネルギーとともに、放射性廃棄物が生成することは、自明の理である。原子力発電はもともと、再生可能エネルギーへの“繋ぎのエネルギー”であるから、一刻も早く安定供給が可能な自然エネルギーの普及は喫緊の課題である。

太陽光は、総量も大きく最も手軽で永久に得られるエネルギー資源と考えられるが、密度は希薄で昼夜、天候や季節による変動が大きい。しかし1973年、中東産油国を巻き込んだ戦争は日本経済を直撃し、石油から太陽エネルギーニ目を向けさせる契機となった。翌年当時の通産省はサンシャイン計画を策定、実用化に向けた開発を推進してきたが、1993年には地球環境問題への取り組みへと、その目的が変更した。これが、ニューサンシャイン計画である。1997年、二酸化炭素排出を規制する京都議定書の採択、1999年には省エネを意識した建物づくりが浸透し、日本は太陽電池生産量が世界一になった。しかし2007年、世界で利用されている太陽光発電システムの大半は日本が製造していながらも、その設置数はドイツに追い越されている。

一般に太陽光を始め自然エネルギーはエネルギー密度が小さいので、通常想定される土地面積では小容量設備とならざるを得ない。太陽エネルギーは熱エネルギーと光エネルギーに分けられるが、太陽熱を利用した発電は可動性でしかも集熱効率の高い集光器が必要なことから、日本ではなかなか実用化に至らない。一方光を利用するのが太陽電池による前述の太陽光発電であり、一般にはシリコン半導体を用いている。シリコン(珪素)は地殻を構成する主成分元素(約47%)であるが、半導体に用いる高純度、薄膜の結晶系シリコンを製造するためには、投入するエネルギー及びコストの面で不利である。ビルや住宅の屋根や壁を利用する小規模システムが有利とされるゆえんは、これらにある。

現在夢のような計画が動き出した。サハラ砂漠で強い日射を利用して太陽光発電を行い、世界に供給する計画である。コストを抑えるために砂漠の砂からシリコンを取り出す技術と、長距離送電を可能にする技術開発が必要であることから、実現は50年先とも見積もられている。

自然エネルギーの利用にしろ工業製品の製造にしろ、私たちは自然からの資源の恵のもとで豊かな生活を送ることができる。1974年に制定された自然保護憲章には、「自然は人間に対し恩恵とともに試練をも与えるものである」と謳っている。「今こそ自然の厳粛さに目覚め、・・・・(中略)自然をとうとび、自然の調和をそこなうことなく、節度ある利用につとめ、自然環境の保全に国民の総力を結集すべき」としてこの憲章を制定した。自然は万物の宝庫であるとともに、この度経験もした恐ろしい存在でもある。自然と仲良くつき合っていくことこそ、持続可能な開発(sustainable development)が期待される。

日本女子大学教育文化振興桜楓会  桜楓新報  



蟻川先生は今年3月までは日本女子大学の学長だったそうです。

東日本大震災後を生きる私たちをとりまくさまざまな問題について、未来を見据え、考えるためのヒントを随時掲載していく新シリーズに寄せて、化学者の視点から蟻川先生にお願いしたものだという事です。

化学者としての視点から学ぶことは多いですね。勉強してこその批判だと思いました。

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