今年の2月11日サンフランシスコからワシントンD・Cを徒歩で横断するというものに参加した。
たくさんの街に行き、たくさんの人と出会った。
その中にマカというインディアンの確か23歳の男がいた。
サンタフェあたりから参加したアイツは子供のような目をしているくせに
歌声が太くて低い声はいまでも耳に焼き付いている。
マカが食事の祈りの前にドライフルーツを食べて日本人のタッ君に怒られた。
道の隅でいじけているアイツに僕は食事を持って行った。
せっかく持っていったのに「おなかがすいてないんだ。」という
マカはガキだった。
それがマカとのはじめての会話だった。
いつもどこかにいってしまう僕のギターは
探しているとギターを弾けないくせに、いつもマカが持っていた。
観光ビザの期限がきて一度日本に帰らなくてはいけない僕にマカは
「日本に帰ったら何をするんだ?」と聞いてきたので
「寿司とセックスだ。ずーっと寿司とセックスだ。」というと
あいつは大笑いしていた。
日本からアメリカに戻るとアイツは「寿司とセックスはどうだった?」
と嬉しそうに迎えてくれた。
マカが膝が痛くてもう帰ると言い出したことがあった。
僕は怒って「D・Cまで行くって言ったろ!」というと
「わかった行くよ。」とあっさり言った。
自分が必要とされてるのか確認したいようで止めて欲しかったようだった。
なぜかロサンゼルスで買ったと言う相模湖と書かれた服を着た若い女を
僕は相模湖と呼ぶことにした。
相模湖とモカはウォークの中で付き合いだしたようだった。
モカは人に「お前、アイツと付き合ってるんだろ?」と勝手な噂をするのが
好きなくせに自分の事となると全然人には言わない。
ワシントンD・Cのホワイトハウスの前に着いた時、民族衣装に着替えたマカは
なぜだか不安と緊張でいっぱいそうだった。
なぜだったのかは今ではもうわからないけど。
写真はその時のものだ。
「来年の日本のウォークにくるだろ?」と僕が言うと
「仕事とお金しだい。」というので「絶対に来い!」というと
「わかった行くよ。」とアイツは言っていた。
ワシントンD・Cの広い芝生の上で「来年、日本で会おう。」とわかれた。
日本に帰ってきてから僕はFacebook(海外版ミクシーみたいなもの)
に入った。
アメリカで一緒に歩いた仲間のほとんどがそこにはいるのだけれど、
マカはいつまでたっても、そこにはこなかった。
きっと日本に来るために頑張って仕事をしているのだと思っていた。
気になってメールもしたが2ヶ月たっても返信がなかった。
ミクシーでちょうどマカの話が出ていた。
でも、僕が考えていたこととはかけ離れていた。
他殺、足と首が切断されていた状態で死体を線路に放置。
そんなバカな話があるわけがない。
信じられるわけがなかった。
何でアイツが?
それを知ってから僕の中に穴があいてしまった。
だから、さっきモカにメールで文句を言っておいた。
返信しろよ!
死ぬんじゃねーバカヤロウ!