大工さんが道具箱を整理していると、ふと私に「これ、やるよ」と銀色の丸い物を手渡しました。
大工さん曰く「昔はこれで方位出しながら地縄出ししたもんだけど、今はそんな必要もなくなったから、あげるよ。何十年も使ってきたやつだからね」
突然だったので、そんなに古いものなら愛着もあるだろうし、こんな簡単に貰っていいのかなと怯んでしまいました。
一昔前ならば家を建てるのは最初から最後まで大工さんでしたが、今では設計士が図面を引いて、それを大工さんが形にする分業に変わっています。って言うか、より厳しくになりましたって表現が正しいのかな?だから、なんとなく大工さんとしては、「設計士は口ばっかりで何にもわかっていねぇ」的に思っている人も少なからずいる訳で、阿吽の呼吸をつかむのはなかなか大変なんです。
でも、大工さんが道具箱の中から使わなくなったものとは言え、ずっと使ってきたものを上げるって事は、それなりの呼吸をつかめたって事なのかなとちょっと嬉しくなりました。
大工さんにとっての思い出の品でしたが、これからは私にとっての思い出の品になりそうです。
ちょっといい日でした。
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