当事務所では自然素材を含めた普遍的な材料を積極的に提案しています。
なんか微妙な言い回しにも聞こえますが、他の記事でも書いているように数十年後もあるだろうと思われる材料(分かりやすく言うと汎用材の部類)でデザインする事で飽きのこない空間づくりを心がけて、メンテナンスの負担も軽減する事を目的としています。
つまり、その一番手が自然素材なんですけど、自然素材が絶対ではないというのが私のスタンスです。
また、似てるようで全く違う話ですが、構造材は集成材を標準仕様としています。
自然素材に徹底的にこだわるなら柱や梁だって無垢にしなきゃ話がおかしい。
無垢のあの感じがいいんだから、柱や梁も無垢がいいんです。
etc
この様なご要望は十分に理解できます。
私も無垢の質感に惚れ込んでいるクチなので仕上げ材に無垢材をご提案しますが、柱や梁に一番求められるのは安全性です。
無垢材と集成材の強度を比較すると集成材の方が強いんですけど、それはあまり重要じゃありません。なぜなら、単体強度が弱ければ柱を太くしたり梁を大きくしたり、構造計算によって同等の耐震性を確保する事が出来ます。
一番大切なのは、その計算結果を維持できるかどうか。構造に使用する木材が耐力上の欠点が少なく、持続性が期待できるかです。
木材の欠点の中で強度に一番影響が出るのは節です。節はご存じの通り、枝の切断面が現れたもので、その大きさは節径比として節の径と材面の幅との比で表わされます。
集成材のメリットは、その節を除けて柱や梁を作る事が出来る事。つまり品質にばらつきがないので、構造計算通りの強度が継続的に期待できる事(耐久性がある)です。しかし、集成材は時に接着剤の性能が問題視されます。まぁ、私は別に問題視していないのですが、問題視していない根拠はJAS規格をクリアしているから。
しかも丁寧に集成材は柱1本1本、梁1本1本全てにJAS規格をクリアしている事が分かりやすく記されています。
私個人で接着性能を確認する事は不可能ですが、JAS規格をクリアしていると言う事は国が認めているという事。どんなに批判的な意見が一部にあったとしても、国が決めた基準をクリアしている以上は、お客様に提案しても問題はないでしょう。
一方、通常の製材(無垢材)の場合ですが、もし近くに建築現場があれば柱や梁にJASの刻印等があるか確かめてください。
おそらくないと思います。
新潟県内に在来工法用の材料を扱うJASの認定工場は3社しかありませんので、刻印等がない材料の方が多く出回っているはずです。
告示には、JAS規格をクリアしているか、それと同等であれば構造材に使用してよいとあるので、刻印がなくとも使えるんですけど、刻印がない場合の安全性の確認はどうやってすればよいのでしょうか。
材木店に保証書でも出してもらった方がいいのでしょうか。
JASの刻印があったとしても、特等の柱でも節の大きさは30%弱あり、その節もどこにあるのかは建ててみないと全く分かりません。
もし、アンカーボルトや補強金物のビスやボルトを取り付ける場所に節があれば、そこは最大の弱点になりかねませんし、建築後、乾燥が進めばそこから割れる可能性も非常に高いので、構造計算の結果が継続的に期待しにくい訳です。
他にも気密性能の維持等、集成材を使う理由はあるのですが、いずれにしても先日書いた通り、長期優良住宅といいながら、施策をクリアする為だけのその場しのぎの設計をせずに、どうしたら長期的に資産価値のある住宅を提案できるかを考えて設計する必要があるのです。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます