あまりの展開の遅さに『バガボンド』をあきらめて以来、単行本で読む漫画は『20世紀少年』『PLUTO』に山田芳裕の『へうげもの』くらいだった。今度、惣領冬実の『チェーザレ』が加わった。『チェーザレ』は、古田織部を主人公にした『へうげもの』と、最近よく一緒に論じられる歴史漫画だが、『へうげもの』が、奇想、荒唐無稽をコンセプトにしているのに対し、(何しろ、信長暗殺の犯人は秀吉だし、信長の警備隊長弥助は黒人で、エレクトリック・マイルスそっくりな風貌なのだ)、『チェーザレ』は、美少年モノの意匠を凝らしながら、しっかりとした時代考証に支えられ、人物、衣装、建物、風景、調度に至るまで、ルネサンスのフィレンツェ、ピサ、ローマなどをリアルに再現しているところが、見もの。ミケランジェロの天井画が描かれる前のシスティーナ礼拝堂が描かれる懲りようだ。
なんでも、新鋭ダンテ学者・原基晶が監修し、世界的に最も定評のある「サチェルドーテ版チェーザレ・ボルジア伝」のイタリア語原書を翻訳した上で、書かれているらしいのだ。主人公は、メディチ家に縁のある聡明で善良だが世間知らずな少年アンジェロで、そのかかわりの中でチェーザレ・ボルジアが語られる。まだ、2巻しか読んでいないが(3巻がなかなか手に入らない)、今後が楽しみ。ただ、壮大なドラマとなることが予測されるだけに、完結までには何年かかるのだろうとも思うが、青春時代だけで終わらせてほしくないと願うばかりだ。なんせ、題材がボルジア家なのだから。
ボルジア家の話をはじめて知ったのは高校のとき。桃源社刊行の澁澤龍彦著作集に収められた『毒薬の手帖』所収でチェーザレ(チェザーレと表記されているが)を論じた「ボルジア家の天才」、そして『世界悪女物語』所収の「ルクレチア・ボルジア」。ここでは、チェーザレはマキャヴェリ『君主論』のモデルにして、敵を次々と毒殺する独裁者、ルクレチアは淫婦として描かれるのだが、その話の面白さに、すっかりボルジア家ファンになってしまったものだ。もし犯罪を犯した高校生の書棚にこんな本があったら、猟奇的な嗜好があったなどと分析されかねない危険な臭いを発散させていたのが、澁澤の本だった。チェーザレにしても、ルクレチアにしてもこれまで語られてきたほど悪人ではないなどといわれたりもするが、惣領冬実の『チェーザレ』では、このあたりをどう扱っていくのか、とても楽しみだ。
なんでも、新鋭ダンテ学者・原基晶が監修し、世界的に最も定評のある「サチェルドーテ版チェーザレ・ボルジア伝」のイタリア語原書を翻訳した上で、書かれているらしいのだ。主人公は、メディチ家に縁のある聡明で善良だが世間知らずな少年アンジェロで、そのかかわりの中でチェーザレ・ボルジアが語られる。まだ、2巻しか読んでいないが(3巻がなかなか手に入らない)、今後が楽しみ。ただ、壮大なドラマとなることが予測されるだけに、完結までには何年かかるのだろうとも思うが、青春時代だけで終わらせてほしくないと願うばかりだ。なんせ、題材がボルジア家なのだから。
ボルジア家の話をはじめて知ったのは高校のとき。桃源社刊行の澁澤龍彦著作集に収められた『毒薬の手帖』所収でチェーザレ(チェザーレと表記されているが)を論じた「ボルジア家の天才」、そして『世界悪女物語』所収の「ルクレチア・ボルジア」。ここでは、チェーザレはマキャヴェリ『君主論』のモデルにして、敵を次々と毒殺する独裁者、ルクレチアは淫婦として描かれるのだが、その話の面白さに、すっかりボルジア家ファンになってしまったものだ。もし犯罪を犯した高校生の書棚にこんな本があったら、猟奇的な嗜好があったなどと分析されかねない危険な臭いを発散させていたのが、澁澤の本だった。チェーザレにしても、ルクレチアにしてもこれまで語られてきたほど悪人ではないなどといわれたりもするが、惣領冬実の『チェーザレ』では、このあたりをどう扱っていくのか、とても楽しみだ。
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