色見本
清濁の等しくなりぬ春の雪
風光る熊野の森の百重なす
東スポにくるむバナナの熟れ具合
切り傷に唾塗る女花石榴
あめんぼに国のゆくへを尋ねけり
校了の朱筆入れ終へ夏夕焼
ピアニスト死す夕凪の半音階
ジャズ祭のシャバドゥビダヴァダ晩夏光
ががんぼの薄き影より飛び立てり
蜜月は三月かそこら百日紅
番犬のふぐり伸びたる秋暑かな
セロ弾きのカタロニアの歌小鳥来る
告白はとぎれとぎれに鰯雲
吾子を抱くやうに白露のマンドリン
秋うらゝ十万色の色見本
(「俳句大学」創刊号掲載/2015年)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます