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ライク・ア・ローリングストーンなブログマガジン「マンフラ」

砂漠の民

2023年05月12日 | 俳句

砂漠の民     

 

咲き急ぐ桜を笑ふ鳩時計

 

春帽子投ぐ名画座の空席へ

 

島影の百重なしたる卯波かな

 

「民族の祭典」冷房効きすぎる

 

桑の実やくに境まで橋二本

 

手に馴染む石を拾うて夏の川

 

まぐはひも人の手を借る蚕蛾かな

 

橋裏を仰ぐ白雨の過ぐるま

 

にんげんの声に驚く山の秋

 

仏具屋の夜寒を金のほとけさま

 

月天心裸身を反らすボレロかな

 

すめろぎはそこに御座すや浮寝鳥

 

月蝕はラルゴのやうに神の留守

 

憂国忌さくら餡ぱんはんぶんこ

 

青纏ふ砂漠の民や寒昴

(「俳句大学」7号 2022年掲載)

 

 

 

青き踏む

 

 

春帽子祈りの時は胸にあて

 

青き踏む風にいちまい鳩の羽

 

おろしやの火酒割りたる雪解水

 

あしあとは裏の森より木の根明く

 

蹼に淡き血の脈水温む      ※蹼:みづかき

 

コンセントに生かされてゐる熱帯魚

 

片影を教会の影突き出して

 

ひぐらしや露人ミハエル眠る墓地

 

琅玕の闇のはずれを秋灯

 

昆虫の貌してむくろ法師蟬 

 

御射鹿池の深き縹(はなだ)や緋衣草    ※縹:はなだ

 

いとど鳴く切腹最中腹いつぱい

 

二度聞いてまた聞き返す夜長かな

 

不器用な男とあたる焚火かな

(俳句大学8号掲載 2023年3月)

 


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