
「ゆりかごから墓場まで」
というフレーズを知っているだろうか。
社会科の教科書に出てくる言葉なので、まあ記憶にある人はあるだろうと思うが。
それ自体はそんなに重要でもないこの言葉、福祉の面でいかにスウェーデンが秀でているかを表現しているのだが、妙にゴロがよかったことと、「墓場の鬼太郎」くらいでしか使うシーンももはやなかろう「墓場」という単語を使っていることが珍しく、妙に鈴木の頭に刷り込まれているのだ。
未だにふと、鈴木の頭をよぎる言葉のひとつなのである。
さて、前おきが長くなったがもう話は終わり間近である。
今日、ひさびさにこの「ゆりかごから墓場まで」フレーズがフラッシュバックした出来事がある。
会社を午後半休し、地元に近いローカルな都会・町田へ所用があり向かったのだが、会社がある新橋から電車を乗り継ぎ小田急線に乗り換えた鈴木は、そこで不覚にも罠にはまったのだ…。
真っ昼間の下り電車は急行もガラ空きであった。
普段の通勤では座れることなどほとんどない鈴木はホクホクしながら座ってしまったのだ。
あったかく、ひとのまばらな車内で、誰もいない目の前の窓越しにホーンと浮かぶ雲を見ていたら…
爆睡してしまった。
肉体疲労時の眠気がいかに重く深いかということは、想像に難くないと思うが、鈴木のそれはいままさに鉛を超えるヘビーさである。
山奥のわらびのように人っぽくなく上半身を曲げに曲げた記憶ナシ・鈴木を乗せて、江ノ島行き急行列車は目的地の町田を通り越し、海方面と山方面の分岐駅・相模大野すらを越え…
気がついた時には鈴木のみしらぬ車窓が展開されていて、わらびは伸びながらにして
「んあっ?」
状態である。
「やばいやばい~せっかくか確保した時間が~新橋から長後まできちゃった~うあ~!」
起き抜けに降り立った朗らかすぎる
「長後駅」
に降り立ち、自分にダメ出ししながら
「新橋から長後まで」って、「ゆりかごから墓場まで」と似てるな…
などと思っていた。
ホームはいやに長く線路沿いの見晴らしがよい。
午後4時くらいだったろうか。
写真はそんな呆けた鈴木がホームで反射的におさめた一枚。
タイトルは「長後」。
後ろに見えるパチンコ屋とおぼしき建物の名前が「HAPPY」なのが、いい意味でアクセントになっていないだろうか?
この二日で乗り過ごしたのは二回目。
このまま一眠りしたら江ノ島で、江ノ島までいっちゃったらもう南へ下るしかないな…こりゃ
などと考える鈴木であった。
あともう少し!
試練の日々は続きます~