スメタナとカフカ（2020-10-31 20:18:26）

　ふたつ前のエントリーのタイトルは、「わが祖国」ですね。
　チェコの誇る作曲家のひとり、スメタナが、この「わが祖国」という曲で描いているのは、ひとつには、ヴルタヴァ河の流れです。
　日本に戻ったら、あらためて、ぼくらを育んでくれた日本の河、川をもう一度見つめようと、チェコを訪ねながら思ったのでした。

おまけ｜青山繁晴の道すがらエッセイ／On the Road

青山繁晴の道すがらエッセイ／On the Road

おまけ｜青山繁晴の道すがらエッセイ／On the Road

　実は、河に着想した長編小説も実に少年時代から、書きかけのままになっています。
　まもなく出版となる「わたしは灰猫」は、18年4か月をかけて書いた小説ですが、こうした書きかけのものが今後、完成を見て世に出て行けば、「わたしの灰猫」を仕上げるのに費やした時間は、まだ短い方になるわけですね。

わたしは灰猫 青山 繁晴 扶桑社

　チェコのプラハには、ぼくのもっとも敬愛する作家のひとり、フランツ・カフカの家があります。
　そこを訪ねると、別に職業を持ちながら小説を書いたカフカの苦しみが、ありありと伝わってきたのを、よく覚えています。カフカの別の職業は、公務の一種でした。
　ぼくもなぜか、作家専業になろうとは、一度も、思ったことがないのです。
　社会を直接的に良くする仕事をしながら、小説を書こうと、子ども時代から思っていました。
　当然、書く時間が無くて、苦しみ抜くことになります。
　カフカも、その悩みを書き残しています。

　しかし、苦しみだけが産むもの、苦しみしか産まないものがあるのです。

『フランツ・カフカ作品集・14作品⇒1冊』 フランツ・カフカ フランツ・カフカ作品集・出版委員会

　いま「わたしは灰猫」がついに世に出る日を目前にして、実は、すこし頭のどこかが緊張しています。
　果たして読まれるだろうか、と。
　そして、あの登場人物たちは、20年近く、ぼくとずっと生きてきました。
　それが初めて、みなさんに会うのです。

　これは他にない、決してない感覚です。