あえてアメリカには行かず、ベトナム、インドネシアを訪問先に選んだ菅総理
青山)本音を言うと、このよきスタートに舌を巻いています。菅総理はアメリカに行きませんでした。最近、日本の総理は、就任なさると必ずアメリカ詣でをしていました。安倍総理におかれては、トランプ大統領が就任する前にトランプ詣でをしました。アメリカが大統領選挙の最中ということもありますが、菅総理はあえてアメリカには行かずにアジアを選びました。それも深謀遠慮がこなされています。ベトナムは中国に対して、一見揺れているように見えますが、根っこは反中国家です。まず、そこを選び、はっきりと「南シナ海の秩序を勝手に変えることは許されない」と「中国」の名指しは避けながら言いました。中国は公式に大激怒しています。
人口2億7000万のインドネシアを訪問する意味
青山)その後に行ったインドネシアというのは、これこそ舌を巻く話です。もともとジョコ大統領はどちらかというと中国寄りでしたが、最近変わって来たのです。中国の習近平国家主席は南シナ海で、どんどん南に触手を伸ばして、インドネシアの排他的経済水域には中国の漁船が入っています。尖閣諸島でやっているのと同じように、武装した公船を一緒に付き添わせています。そのジョコ大統領に変化が見られるところに、「スポッ」と行ったわけです。それで円借款です。安全保障分野で海洋進出についても話しました。
ベトナムで防衛装備品の輸出に関する協定に合意
青山)河野大臣がイージス・アショアを中止にして、国防議連の部分が大揉めなのですが、「イージス・アショアの後も日本独自の新しいイージス艦をつくりましょう」と言ったら、防衛官僚で深く頷いている人がいました。菅総理がアメリカに行かずにアジアに行かれたということは、そういう日本の自立への道と関係がある海外出張だと思います。そこを私は僭越ながら評価したいです。
飯田)確かにベトナムでも防衛装備品の輸出についての協定を結ぶという方向で合意をしました。
青山)いいところを見ていますね。
飯田)インドネシアでも外務・防衛閣僚会議を開くことで合意しました。この辺りは……。
青山)実は安倍政権にはよく見えていない遺産があるのです。それは武器も輸出できるようにしたということです。かつては武器輸出三原則があり、禁輸原則でした。でも国内で装備品をつくっているのですから、海外に出すのだけはいけないということは話がおかしいのです。海外の国はみんな侵略国かということになりますから。それを変えて武器を輸出できるようにした。日本がいままでそうしなかったために、ベトナム以外のアジアでは中国が各国の武器体系を握っているという現状がありました。ベトナムだけはかろうじてそうではなかった。だからベトナムに行って武器輸出の話をしたのです。これはディープな話であるとともに、安全保障の根幹の話です。武器なき安全保障は残念ながらあり得ません。