【人生をひらく東洋思想からの伝言】
第9回
「発酵という生き方とは?」(「発酵道」より)
日本は発酵の天国でもある。地理的特性からも、ユーラシア大陸の東端にあたることから、
様々な思想や文化などが、東へ東へ辿り着き、最終的に日本にすべてが溜まっていく。
その背景から、日本に辿り着いた文化、思想などを、溜まり文化や発酵文化とも言う。
ということから、香り高い文化や思想が熟成されていく。
儒教、仏教、道教、禅、神道などがミックスされ、様々な生活におけるものに多大な影響を及ぼしてきた。
そのひとつに、食の文化としての発酵としての生活の知恵が、数多く残されている。
今回ご紹介するのは、千葉県の香取市にある寺田酒造の23代当主が書いた、
「発酵道」という本からのものである。
そこのお酒もすごく美味しいが、このベースにある思想や考え方にはしびれてしまう。
本当に、日本人に生まれて良かったと感じる瞬間でもある。
「生命が喜ぶような本物の酒造り、魂の喜びを求めなくてはいけない。」
「微生物とは、生命のおもむくままに、自分にとって最も快いものを選択していく、
一匹一匹が自分の出番になったら大いに働き、使命を全うして、役目が終えたらスーと消えて、
そうなったら次に来る微生物にバトンタッチしていく。」
「自分の生命をよりよく活かす方法、謙虚な姿勢で生きる。」
「自分らしくとは、周りと調和しながら、自分のために生きる。
自分の生命をよりよく活かしていくことで全体をよくなっていくということ。
楽しくとは、自分が信じたこと、心が好きなことを楽しんでいく。形にこだわらずいること。
仲良くとは、何よりも争わない、お互いに助け合い、支えあう。それぞれを尊重して、
共生していること。」
「発酵(抗酸化、蘇生型)と腐敗(酸化、崩壊)がある。
発酵とは、人に役立つ仕事、競争しない、儲けすぎない、競争より共生。
腐敗とは、利益優先、自分たち優先、自分の欲を満たす」
参考文献 『発酵道』(寺田啓佐著、河出書房新社)