「歌になった詩と真空管ラジオ・コレクション
詩人が半世紀にわたり書き綴った歌うための詩、単行詩集未収録の66編を自選。秘蔵の1930~50年代の真空管ラジオ・コレクションを添えた贅沢な歌・詩・集」
…アマゾンには出版社 / 著者からの内容紹介として
こう解説がありました。
お金と欲望が神に代わった現代に生きようとすると、
こんな美味しい毒を飲んで、冷たい世間や人間に対して
免疫を得なければならない、ということだと思います。
前衛という死語をまだ使いたがる現代詩というのもが、
同じ時代の変化に自閉という形で対応しているとしても、
これらの谷川詩の底にある諦念(叙情の死の叙情)と比べて、
いかにも幼く未熟なものに思えます。
〈二行と三行のことばの玉手箱…谷川修太郎『歌の本』より〉
3ひく3はゼロなんだ
ああ いい気持ちいい気持ち (「3たす3と3ひく3」より)
しょっぱい涙を自分でなめて
そんなもんかい 哀しみなんて (「へえ そうかい」より)
かなしみはふくれる
ふうせんのように
それがわたしのよろこび (「うたうだけ」より)
謎のようなひとの裏切り
白いよろい戸が閉じられる (「夏が終わる」より)
ジクソーパズルのひとかけら
過ぎた夏の風景のどこにもはまらない (「いたずらがき」より)
私はあなたにおいてけぼり
後ろ姿を見ていたら
ついて行く気もなくなった (「おいてけぼり」より)
人は本当はいつもひとり
でも嘘ついてほしかった
あの時だけ (「土曜日の朝」より)
風はそっと押してくる
遠い誰かの手のように
明日へとふりむかせて (「風」より)
…ではみなさん、谷川さんの美味しい毒で免疫を!(尾崎)