日はあっという間に過ぎてゆく。
坂本少佐の飛行訓練から始まりそこにバルクホルンも加わり、
毎日訓練漬けの日々の中、夜の滑走路の隅で宮藤芳佳が呟いた。
「はぁ~~疲れた……」
いくら治癒魔法のおかげである程度筋肉の痛みは抑えられるが、
それでも体内に溜まった疲労は抜けていなかった。
というのも、
第501統合戦闘航空団に入隊して以来、
朝から夕方までひたすら体を動かして訓練、帰れば直ぐに寝て、
翌朝にはまた夕方まで訓練で、ぼんやりと学校に行っていた日々とはわけが違うからだ。
そして、
遠い異郷の地、しかも軍隊という組織に入ったため、
時折故郷の地にいる友人や家族のことを思い出し、寂しい感情が湧き上がることもある。
だが、
(うん、でも疲れたけど、
こんなに頑張ろうと思ったのは初めてかも)
芳佳の感情は前向きであった。
今まで彼女は実家の家業をただ何となく継ぐことを考え、
日々を過ごすだけに過ぎなかったが、坂本少佐に連れられて欧州に来てから変わった。
元々、自分に出来ることはないか?
そう考えてきたが、それがあまり分からなかった。
だが『赤城』を守ってから、宮藤はようやく進むべき道が見つかった。
ウィッチになり、みんなを守るという道を。
(ペリーヌさんは足手まといと言っていたし、もっともっと頑張らなくちゃ!)
夕方、リネットと芳佳の2人は滑走路で疲労で仲良く倒れてさい、
そんな様子を見たペリーヌ・クロステルマンがこの程度で倒れていてはここにいられない。
ここは即戦力だけが必要とされる、等と話した。
芳佳はその言葉に傷ついたが、
だからこそ、ここで諦めるわけにはいかない。
むしろ自分には成長の余地があると前向きに捉えていた。
「よし、」
両拳を握り、決意を新たにする。
そして、ふと背後から気配を感じる。
思わず芳佳が振り返るがその先には、
「宮藤さん?」
「リネットさん?」
リネット・ビショップがいた。