警報が響く。
ネウロイの接近、戦場が向こうからやってきた音だ。
怖くて、怖くてたまらない。
頭を押さえて縮こまりたくなる。
じっとその場で眼をつむり嵐が過ぎ去るのを待ち続けたい、そうリネット・ビショップは思った。
「低空から接近したから発見が遅れたですって…っ!!」
「うへぇ、本当かんべんしてよなー」
「て、敵ですか!?」
待機室に設置してあった電話に応対するミーナ。
ミーナの言葉に対する反応はそれぞれで、エイラは面倒くさそうに反応し、芳佳は見るからに動揺していた。
そして3者の反応を他所にミーナは受話器を置くと、エイラ、芳佳、リネットの3人の方へ向き直る。
「坂本少佐の方は全力で向かっているけど……間に合いそうにないわ。
エイラさん、念のためもう一度聞くけどサーニャさんはやっぱり出られない?」
「まぁムリダナ、夜間哨戒で魔力を使い切ってる。
仮に無理に出撃させても寝不足で墜落しかねないぞ」
どこか棒読みな口調で指でバッテンを作りムリダナ(・×・)と呟くエイラ。
エイラの言葉にミーナは表情を曇らせたが、直ぐに軍人としての決断を下した。
「……やむ得ないわ、皆行くわよ」
「しょうがないなー、行くぞ宮藤、リーネ」
「は、はい。頑張ります!!」
やれやれ、と言いたげに立ち上がるエイラ。
続けて緊張しつつも立ち上がる芳佳であったが。
「ん?おいおい、大丈夫かよリーネ?」
「ああ、は、はい!大丈夫です!」
リネットだけは違った。
2人続いて立てることが出来ずにいた。
口こそは問題ないと言っているが、青白くなった表情に身体は震えが止まらない。
どう見ても出撃していい状態ではなかった。
「……リネットさんは待機ね」
「…………はい」
ミーナがそんなリーネを見て、ただ一言だけ言葉を発した。
リネットはミーナに対して申し訳ない気持ちと、自分のこの体たらくに泣きたくなった。
これでは駄目だと頭では理解していても、心と体は付いてゆけていなかった。
(どうぜ私なんて――――)
黒い、鬱屈した感情が心を満たす。
頭を下げ、眼をきつく瞑り何もかもから逃れたい衝動に教われた――――しかし。
「リーネさん!」
前から声をかけられる。
リネットは顔を上げて声の主の人物を眼に入れる――――宮藤芳佳だ。
「あのねリーネさん、一緒に出撃しよう」