二次元が好きだ!!

SSなどの二次創作作品の連載、気に入ったSSの紹介をします。
現在ストパン憑依物「ヴァルハラの乙女」を連載中。

駆逐艦『神風』の記録~艦隊これくしょん転生憑依物(完成)

2014-03-30 20:04:27 | 習作SS

リンガ泊地。
南海の太陽と空が地面を照らす中。
水兵服に手には銃を持った歩哨が「鎮守府」と書かれた建物を警備している。
歩哨に立つ兵士は一寸の隙のない表情で警備しており、まさにそこが軍事基地であることを強調していた。

しかし、そんな軍事基地の敷地内に少女の姿と声が聞こえる。
いや聞こえるだけではない、実際に見られた少女が小学生程度であった事実を見る人によっては驚愕しただろう。

だが、基地にいる誰もがその光景に疑問の余地を抱いていない。
むしろ彼女からが軍人から敬礼を受ける身分で垢抜けない少女は人々からこう呼ばれた――――艦娘と。

彼女達こそ人類の生存を脅かす『深海棲艦』に対する数少ない切り札であり、希望であった。
特に長らく続く戦争で人類側の困窮度合いは増すばかりな現状ではなおさらである。

ゆえに、彼女らに一定の敬意と尊敬を人々は払っており。
ごくまれに不届きな行為を試みた輩には情けと容赦、慈悲の心を持ち合わせていない。

そんな中、詰襟式の白い海軍第2種軍装を着用した、
提督と呼ばれる肩書きをいただく50代の男性は自らの執務室で、
本土から今度着任する予定の艦娘について記載された書類を眺めていた。

駆逐艦『神風』

『神風』型駆逐艦の1番艦で『峯風』型駆逐艦を改良させたものである。
しかし、特型駆逐艦以前の艦娘ゆえに火力を始めとする性能には疑問点がつく。
正直もっといい艦娘はいないのかと嘆きたくなるが、戦況はそれを許してくれない。

提督も参加したサーモン海域の『戦艦棲姫』『飛行場姫』との戦いで始まった際限なき消耗戦。
これにより多くの熟練の艦娘を喪失し、新たに艦隊に編入した艦娘はその練度の低さでさらに消耗。
結果、俗に『捨て艦戦術』と呼ばれる統帥上の外道を以って辛うじて撃退に成功する。

だが、さらにサーモン海域の北方で、
『戦艦レ級』が登場したことで更なる悪夢の消耗戦が開始された。
開幕航空戦、開幕雷撃戦で容赦なく先手を取りその火力は高速戦艦の『金剛』すら一撃で大破に追い込まれる。

航空戦では正規空母2隻で『烈風』を満載しても制空権すら取られる恐れがあり、
潜水艦で雷撃しようにも爆雷攻撃が可能であるため、やはり逆に沈めれられかねない。

以来、幾多の艦隊が水底へ沈んで多くの命が失われた。
そして今やフィリピンのレイテ島に深海棲艦が出現しており、
近々これに対する攻勢として『捷号作戦』が発動される予定である。

・15cm9連装対潜噴進砲
・10cm連装高角砲
・五式40mm単装機銃

その他装備も輸送されるが、現在の『神風』の装備は以上のようなものだ。
雷装を降ろして対空、対潜重視の装備で対艦戦では不安が残るがそれは特型駆逐艦。
あるいは、強力な雷装を有する『北上』『大井』の重雷装艦に任せると割り切ればいい。

元々特型駆逐艦と比べれば正面火力でやや劣る。
『神風』のモデルが激戦地で派手に活躍したエピソードはなく、
長らく地味な船団護衛についていたからなおさら地の火力能力値は低い。

しかし『神風』のモデルはかつての戦争末期に、
散々日本の軍艦を沈めたアメリカ軍の潜水艦を逆に追い詰めた経緯から、
初期の能力値において対潜、索敵が高めであり、長所が生かせると考えることが可能だ。

また、最後の水上戦闘であるペナン沖海戦に参加して生き残る。
加えて巡洋艦『足柄』の乗員約800名と輸送していた兵士400名を単艦で救助。
しかも終戦時南方で稼動状態であった唯一の軍艦として生き残ったためか回避性能が高い。

装備の質も悪くない。
『15cm9連装対潜噴進砲』は対潜装備として現状で最高の攻撃力を有する。
『10センチ連装高角砲』は対空対艦戦闘をこなせる駆逐艦に搭載可能な砲であるし。
そして、『五式40mm単装機銃』は防空能力として近年配備が開始された『3.7cm FlaK M42』に匹敵する性能がある。

おまけに練度、俗に言うところレベルも高い。
長らく船団護衛に従事していたことを差し引いてもこの点はありがたい。
連合艦隊に所属する艦娘全体の数こそ増加中であるが、レベルは相次ぐ消耗戦で低下に歯止めがとまらない。

高レベルの艦娘を育成するまでには長い訓練と実戦経験が必要となる。
訓練すれば割り当てられた資材は消耗するし、実戦に出ればレベルの低さから途中で沈没する危険性をはらんでいる。

そんな中で貴重な高レベルの艦娘をこちらに配属されたのはたとえ駆逐艦でもありがたい。
後はどのように人材活用するかであるが、そこは提督の腕の見せ所であろう。

「失礼するわ、提督。今いいかしら?」

ノック、そしてドアの向こうから声が響く。
提督は「入れ」と潮風で枯れた声で入室を許可した。

「整備補給に関する報告書が完成したわ、それともう直ぐ昼よ」

銀髪の、光の差し込む角度によっては蒼銀髪にも見える少女。
否、ただの少女ではなく特型駆逐艦の5番艦の艦娘にして秘書艦の『叢雲』が書類を手にして入室した。

「ご苦労、昼食は直ぐに食堂に行く。叢雲は先に行くように」
「わかったわ、でも早くしないと金剛が騒ぐわ。まったく戦艦は大飯食らいね」
「『赤城』に『加賀』よりはましだろう」
「……それもそうね」

別の鎮守府所属であるが『ボーキサイトの女王』と恐れられる『赤城』
『赤城』に隠れて目立たないがやはり燃費が悪い『加賀』の2人の食いっぷりを知る提督と艦娘は遠くを見るように眼を細めた。

まあ、と提督が言葉を続ける。

「腹は減っては戦は出来ぬ。
 という言葉のように今は食うことが優先だ。
 食える間に食って、来るべき日に備えおくだけだ」

「レイテ島ね、各鎮守府の総力を挙げて攻撃すると言ったけど……あら、艦隊に新しいメンバーが加わるの?」

「うむ、『神風』型駆逐艦の1番艦だ。他にも新装備が来るそうだ」

提督が叢雲に書類を見せる。
叢雲はんー、と書類を眺めてしばし熟考する。

「ここの鎮守府では特型以前の駆逐艦はいなかったわよね?巡航速度とかその辺の調整が必要よね」

姉妹艦。
という言葉があるように、同型艦の建造そして艦隊を固めるのがベストだ。
なぜならその方が同型ゆえに補給整備に掛かる負担は少なくなる。
また、同型艦ゆえに隊列が組みやすく、統一的な艦隊運用がしやすくなる。

しかし、ここに別の艦。
それも旧式ともいえる艦娘がくるとなれば、実際に訓練して修正してゆく以外ない。

「負担を押しかけるようですまないが、その点は訓練で調整していってくれ」

「別にいいわよ、任務なんだし……というか『紫雲』、
 それに『一式徹甲弾』なんていつもはケチ臭い補給がここに来て随分と大盤振る舞いじゃないの?」

「戦況が厳しい今だ、単なる自棄か面倒事を押し付ける気だろうな」

提督がデスクから葉巻を取り出しすと、
シガーカッターでタバコ葉で閉じられた吸い口を切り落とす。
続けてライターで火を起こそうと試みたがどこにおいたか忘れてしまい一瞬困る。
しかし、叢雲が火がついたライターを差し出したことで解決された。

「煙はこっちに吐かないでよね」
「ん」

いきなり吸わず、先に先端部が均等に着火させてゆく。
葉巻の内部がゆ湿り気を帯びた熱気で温められたのを感じた後。
さらに回転させながら遠火で点火し全体的に熱が通り香りが漂ったところで初めて吸い始めた。

喫煙者にしか分からない芳醇な香りが胸を満たす。
提督は皺と日焼けで鬼瓦のようになった表情を緩ませた。

「…煙がこっちにこなくても匂うわね。
 北上さんも偶に吸うけどなんで喫煙家はこの匂いがすきなのかしら?」

「言っておくがあっちは蒸気タバコだから害はあまりない。
 ニコチン抜きの香りを楽しむ物だが、こっちは大人の味である葉巻であると言っておこう」

「はいはい、提督が喫煙家なのは分かっているけど吸いすぎないようにね」

喫煙者として蒸気タバコと葉巻の違いを熱弁する提督だが。
どっちも喫煙者に過ぎない叢雲からすれば違いなどどうでもよかった。
娘、下手をすると孫ほどに歳が離れた少女に喫煙者の考えを理解してもらえず、内心少し落ち込む提督。

今度来る艦娘が喫煙仲間であるといいな。
等と考えた時にデスクの上に置いた黒電話が鳴り響いた。
直後、鎮守府全体を揺るがすサイレンの音が支配する。

「どうした……っ!そうか。
 よし確か第6駆逐隊が哨戒中だったな、現場へ急行するように。
 こちらも急いで出撃する。ああ、それと目的は敵の撃破でなく味方の収容であることを伝えてくれ」

「昼食前だといのに…!!提督、敵の陣容は?」

「詳しい型は不明だが、重巡洋1軽巡洋1駆逐艦4。典型的な深海棲艦の哨戒部隊だ。
 現在本土から来た輸送船団が襲撃を受けているので『神風』を筆頭に護衛の艦娘が戦闘中だが……急がねば」

「了解っ!第11駆逐隊を率いて出撃するわ!」

叢雲脇を締めた海軍式の敬礼を提督にすると、執務室から飛び出した。
護衛の艦娘は駆逐艦、それも『松』型か海防艦では巡洋艦相手には厳しい。
リンガ泊地周辺に出没する最近の深海棲艦の動向としては『潜水カ級』か『駆逐イ級』が数隻出る程度だ。

それも夜間に隠れて出るというのに、昼間から巡洋級を引き連れた部隊が出た事実。
これはレイテ島の深海棲艦の勢力が拡大したためかもしれない。

「予想以上に戦力が揃っているかもしれないな……」

あの悪夢が再び再現されなければいいのだが、とサーモン海域の事を思い出しつつ提督は呟いた。



※  ※  ※



「あ、」

何が起こっているのか分からない。
前後の記憶があやふやで、恐らく口に出来た言葉喘ぐ様な言葉であろう。

何故自分が口にした言葉が分からないか?
というのも聴覚、視覚、嗅覚と必要な感覚情報が遮断され判断できなかったからである。
しかし、何となく体に感じる感覚からどうやら自分は落下しているらしいことだけは掴めた。
突然わけの分からない状況に追い込まれ、喚き散らしパニックにならないのは自分でも驚きだ。

頭はどうしてこうなったか記憶を探る。
探れど探れど前後の記憶にぽっかりと空白が開いているため何も分からない。
幸い、というべきか自分の名前は記憶しているため自分が何者かは分かっていた。
そこから連想的にこの状況と当てはまるものを考えてみたが、やはり思いつかない……くそ。

それよりもジェットコースター。
あるいは紐なしバンジージャッンプをしているような感覚。
しかし同時に地面に向かって落下している感覚がない奇妙な感覚を覚える。

気持ち悪い。
今すぐ吐きたい気分に陥る。
何よりも冷たくて肌寒く、体に受ける圧迫感が余計に気持ち悪い。

あれ……冷たいだと?
感覚が戻ってきている!?
そして、徐々にだが視界が映し出されつつあった。

完全に視界が開いた時、ボクはどうも青い水の中にいた。
口に感じる潮辛さからどうやらここは海の中らしい。

……ファーイ?
ようやく思い出した記憶では直前に海に行った記憶なんてないぞ。
そもそも海なんて仕事で港湾に行くことはあっても泳いで遊ぶことなんてずっと無かったし。

というか息苦しい。
おまけに徐々にだが沈んでいる気がする。
…………じょ、冗談じゃないぞ、このまま溺れて死んでたまるか!

くそ、動け。
何が起こったか分からないけど、ボクは生きたいのだ!
まだ見ていないアニメや遊んでいないゲーム、書いていないSSがあるんだ。

生きることは決して楽じゃなかったけど。
そうした楽しみも生きていなければすることが出来ないのだから。

ああ、くそ駄目だ。
足取りは重いし、意識が朦朧として来た。
このままここで溺れ死ぬのが定めなのか?

おぼろけだけど、白い光が視界を満たしている。
ボクは神道だけどもしかすると天使、あるいは死神の使いでも来たのかもしれないな。
転生することがあれば出来れば今の記憶と経験を引き継げるように頼んで見るか。
そうすれば次の人生は今よりもさらにうまくいくかもしれない――――待て、少しずつだけど浮上している?

足の方から体全体を押し上げる浮力を感じる。
そして、だとすると今見える光は太陽で、あれに向かって泳げば海面に出られる。

だったら、ここで諦めてたまるものか。
手を伸ばし、足を動かし最後の力を振り絞るだけだ!
動け、動けぇぇぇぇ!!

眼を見開き、海面へ手を伸ばす。
足から謎の推進力を感じるが今は無視してただ海面を目指す。

朦朧とする中、何度も意識を失いそうになる。
が、ボクの努力をいるかも知れない神様が認めてくれたようで海面に浮上できた。

「ぶはぁっ!!」

空は青く、海も綺麗な蒼色をしており南海特有の暖かい空気が肌を刺激する。
だけど、ボクは景色を鑑賞するより先に面一杯空気を吸う事が大事であった。
全身に力がみなぎり酸素のありがたみに浸る暇もなく、続けて腹からありったけの海水を吐き出す。

「うえ、うぇええっぇええ!!」

ビシャビシャと音を立てて胃の中身が出る。
しばらく、胃液交じりの海水を吐き続けた後ボクはようやく周囲を見渡し始める。
ふと、風に乗って漂う異臭に気づいてその方角に顔を向けると。

「なん……だ、これは……?」

炎上する船舶に海面に重油が広がる。
周囲には非難したと思われる救命ボートが漂い、自分と同じように海に漂う人もいた。

一見それが船舶同士の事故にありふれた光景のように見えたが。
ただの事故でないと知ったのは、周囲を走り回っている化け物をボクが眼にしたからだ。

「――――――」

全長25メートルはあるだろうか。
黒く硬い外装を有し、大きな歯と眼を光らせたもの。
ボクのあらゆる知識の中から如何なる生物に例えようがない化け物がいた。
それが海上を滑るように動いており、口から光線を放ち船を攻撃して最中であった。

そんな予想外の光景に呆然としているとさらに驚愕の光景を眼にした。
その化け物の周囲の海上でくるくると回っている人物たちを目撃する。

人間よりも遥かに巨大な化け物相手。
ましてやどう見ても大人とはいい難い人物たちから盛んに砲火が飛び出し、化け物を一方的に攻撃している。
怒り狂った化け物はその人物たちに光線を浴びせるが、直ぐに避けてはさらに砲火を浴びせつつあった。

『この雷様に敵うとでも思ってんのかしら!』
『魚雷装填です……照準よし、撃ちます!』
『バァーニングラァーーブ!!』
『主砲。ほーげき、開始!!』

栗毛のセーラー服の小学生程度の幼い少女。
巫女服を改造してコスプレのような服装をした少女。
他にも白い帽子を被った銀髪の少女などおりボクは彼女たちを知っていた。

というか、え、えええ!!?

「アンタ、大丈夫!」

呆然としているボクの目の前に蒼銀髪の少女が現れる。
服は白のワンピース、手には槍のようなものを手にしていた。
スカートから突き出ている細い足と黒のストッキングが服装が白いおかげで映える。

というか、凄い美人さんだ。
整った顔に、金眼に光の角度によっては蒼銀髪に見える髪といい凄い美人だ。
ぜひお近づきになれたら……じゃなくて、彼女とは二次元でしか知らないが、恐らく彼女の名は。

「……叢雲……なのか?」
「っ…!!よかった意識はあるようね、安心しなさい神風。直ぐに引き上げるから」

…………。
………………はい?

「かみ、かぜ?」
「アンタの名前でしょ?」

思わず鸚鵡返しに名前を答えたら。
叢雲は「何言ってんだコイツ?」みたいな表情をされた。

手を動かし自分の顔に触れる。
その感触は少女特有の柔らかい肌に小ぶりな顔であった。

いやいや、落ち着け。
クールになれ自分、そうだ胸とか体全体を見れば間違いだって分かる!
顔の感触なんて触れただけじゃ分からないしな!それ、どれどれ…………あれ?

どう見ても少女の肉体をしていました。
ウェブ小説定番のTS転生憑依です、本当にありがとうございました。

「いや、アンタさっきから何やっているの?」

衝撃的な事実のあまり叢雲の突込みが頭に入らない。
認めたくないが認めざるを得ない事実としてボクは『艦これ』世界にいるらしい。

しかも提督とかじゃなくて『艦娘』としてだ。
そんな馬鹿な話があってたまるかと思いつつ意識が再度遠のく。

「……っ!!しっかりしなさい神風!!みんな引っ張るわよ!!」
「は、はい!神風さん手を握ってください!」
「頑張って……」
「ひ、ひっぱりまーす!」

これが夢だといいな、と彼女らのやり取りを聞きつつ意識が閉じた。




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする