そろそろ滑走路で宮藤とリーネの会話イベントが始まるかなー、
と考えて最近夜間外にうろついているわたしだ。
たが、それが何時なのか分からないので今日まで空振りに終わっている。
そのかわりに夜間哨戒任務のサーニャと話したり、
格納庫の天井が寝所のルッキーニと遊んだりして幾日かの夜を過ごした。
「ん……」
夜の少し冷えた潮風が心地よい。
今日も滑走路の端に2人がいるかどうか確認しに行く。
ふと、横から足音が聞こえた。
もしかすると宮藤、リーネの2人かと思い、首を横に回したが意外な人物がいた。
「トゥルーデ?」
「バルクホルン?」
「ミーナ、それに少佐?」
だが、ミーナと坂本少佐であった。
というか坂本少佐がどうしてここに?
【原作】ではミーナが宮藤とリーネの会話を聞いて、
宮藤にリーネの事情を説明したが、そのさいに坂本少佐はいなかった。
む?
「腕……」
なんか腕組んでますね、お二方。
しかもしっかり手も握っていますし。
確かにミーナは【原作】でももっさんへやたらと気にかけていた。
現在三次元で彼女らを見ているわたしの視点から見ても今まで妙に仲が良かったし。
まさか、まさかと思うが、本当にミーナは百合推進派だったとは……。
そしてわたしが、キマシタワーが建造された瞬間を目撃する日が来るなんて。
「ミーナ、その、なんだ?おめでとう」
「トゥっ…バルクホルン大尉、こ、これは違うの!!」
あたわたとし出すミーナ。
どんな戦場でも冷静な判断力を失うことがなかったミーナが、
こんなに慌てる姿を見たのは、もしかすると初めてかもしれない。
「安心しろ、ミーナ。このことは誰にも言わないから」
「あ、あああ。だ、だからち、違う……」
否定するミーナを生暖かい眼で見て、
「分かっている」と言わんばかりに頷いて見せると、
あうあう、とただ口をパクパクさせた。
「ミーナを弄るのはその辺にしておけ、バルクホルン」
もっと弄りたい、
そんな欲求が出た矢先に坂本少佐が止めた。
「ミーナとこうして手を繋いでいるのは、潮風で寒そうだったから温めていたんだ」
これ以上ないドヤ顔で坂本少佐もとい、もっさんが言い放った。
なお、ミーナとは手を繋いだままでむしろ誇らしげにこちらに見せ付けていた。
確かにそういうシチュエーションは創作物によく見かけるものだけど、それを躊躇なく実行する少佐はやはり大物だ…。
そうした度胸についてヘタレなエイラは見習うべきだと思う、けど無自覚なのがあれだけど。
「まあ、むしろ刀を握っているから豆ばかりの私のよりもミーナの方が柔らかくて暖かいけどな!」
「~~~~~っっっ!!!」
そして、
無自覚ジゴロ発言と同時にHAHAHAと大笑するもっさん。
大笑のミーナといえば、顔がリンゴのように真っ赤であった。
……駄目だこのジゴロ侍、早く何とかしないと。
「おや、あれは宮藤、それにリーネか?」
少佐が視線をわたしの後ろの遥か先に動いた。
釣られてわたしは振り返ると滑走路の端に人影があった。