それが、いつも戦場に行く前の緊張とはまた違うとエーリカは感じた。
直感が戦友が何かを隠している気がして、気付けばエーリカは口を開いた。
「どうしたの、そんな憂鬱そうな顔をして?」
「わかるのか?」
眼を見開きバルクホルンが少し驚いたように答える。
「もう何年一緒に過ごしているから、
そのくらいわかるよ、それこそミーナやトゥルーデの生理の周期も分かっているし」
「そりゃどうも、最後のは余計だけど」
一体いつ知ったのだか、バルクホルンは呟く。
「でさ、トゥルーデは何に悩んでいるの?」
エーリカが問う。
その問いかけにバルクホルンはやや間を空けてから答えた。
「…ネウロイの動きが少し気になってな、」
「ネウロイの動き?確かに直接ここに来るなんて珍しいけど、気になるの?」
ネウロイは夜襲や朝駆けこそしてくるが、
意図した戦術戦略は行動は基本とらず、ごくまれに迂回する程度である。
基本は質と量に物を言わせた蹂躙戦で、ブリタニアでの戦いは大型ネウロイが散発的に襲撃する程度だ。
「まあ、な。もしかするとこのネウロイは囮でないかと考えたからさ」
「囮?ネウロイが?トゥルーデは心配性だね」
そして、今回は毎度標的にされるロンドンではなく、
ここ501の基地を目指している点は確かに珍しいが深く考えることは無い。
というのがエーリカの意見である、なぜならたかが大型ネウロイ1機ならたどり着く前に叩き落すことが可能であるからだ。
その言葉に「そうだな、」と再度バルクホルンは口にした。
エーリカは戦友は未だ納得しておらず、戦友の態度から説明できない違和感を感じ取る。
そう、まるで自分だけが未来を知っていると言いたげな態度であった。
(私も考えすぎかな?)
より正確に言えば考えすぎ、
というよりそれは妄想の類だとエーリカは思った。
確かにゲルトルート・バルクホルンは周囲とは何か違っていたが、それだけだ。
だから、これは考えすぎ。
そして問題などまったくない、それがエーリカ・ハルトマンが出した結論であった。