「今回ネウロイ1が真っ直ぐ、ここ501の基地を目指して進撃しています」
ミーナの言葉にやや場がざわめく。
緊張に周囲が走るが顔色を変えないミーナ、
そしてその隣で鞘に入れたままの扶桑刀を床に突き立て屹然と立つ坂本少佐。
そんな2人の様子を見た501の隊員一同の動揺は収まり、安心した。
「今回は宮藤さん、リネットさんがいるので編成を少し変えます。
坂本少佐率いる部隊は出撃、私が率いる部隊は予備として基地で待機します。少佐、説明を」
「指揮官は私、坂本美緒。前衛はバルクホルンとエーリカ。
後衛はシャーリーとルッキーニ、ペリーヌが私の直衛に着いてもらう」
「私、エイラさん、宮藤さん、リネットさんは待機室で待機します。
何か質問は――――ないわね、では出撃組は坂本少佐の指揮に従い速やかに出撃してください」
一斉に起立、そして敬礼と共に了解!と声が響く。
待機組を置いてゆく形で出撃組は駆け足で格納庫へと走って行った。
「おう、ルッキーニ、ペリーヌ。競争しようぜ!」
「いいよ!シャーリー!」
「…別にわたくしは自分のペースで走りますわ」
廊下を駆け抜けつつシャーリーがルッキーニ、
ペリーヌに競争を持ちかけた、ルッキーニは乗り気であるが、
金髪金眼の少女、ペリーヌ・クロステルマンはそんな2人を呆れ気味に答え、拒絶した。
そんな態度に悪戯スイッチが入ったシャーリーは、悪い笑みを浮かべてルッキーニに話しかけた。
「ノリが悪いなー残念だぜ。どうやら残念なのは胸だけじゃないようだぜルッキーニ」
「ペリーヌは胸が残念賞だから空気抵抗が無いのにねー、残念だねー」
「な、なんですってええええーー!?」
ドヤ顔で自らの胸を揺らしたところでペリーヌの頭の何かが弾け、
米神に青筋を立ててジャッキーニのコンビを追いかけ、追いかけられる側は喜んで走った。
そしてぎゃあぎゃあ言い争いながら駆け抜けてゆく3人とは違い、エーリカ・ハルトマンは眠たげであった。
「あーもう、うるさーい。眠いーお腹すいたー」
走りながら大きな欠伸を漏らす。
起きることが極端に弱い彼女からすれば早朝に警報でたたき起こされ、
朝食を食べる暇も無く、こうして走らされることは苦行に等しいものであった。
「エーリカは何時もそうだな…これを後で食べろ」
「わぁ、さっすがトゥルーデ!ありがとうー!」
そんなエーリカを見て「またか」
と口にしつつも、隣で走っていたバルクホルンが乾パンとチョコレートを差し出した。
エーリカは歓喜し戦友であるバルクホルンに感謝の言葉を口にした。
もっとも、バルクホルンの後で食べろという忠告は聞かずに早速乾パンとチョコを口にして頬張りだす。
「走りながら食うなんて子供か?」
「ピチピチの16歳の子供だもん!」
「そうだな」
エーリカの反応に苦笑交じりバルクホルンは同意した。
しかし、エーリカは直後長年の戦友が物思いにふけたため息を吐いた瞬間を見逃さなかった。