リカコの、これは「ゴミのようなブログ」か「ブログのようなゴミ」か

今までの人生は挫折つづきでサボテンのぴょん太さんもベランダで干からびているけど、最近ようやく自分を肯定できてきてるかも…

悲鳴を、彼は聞かなかった。

2007-04-14 18:57:44 | 日記
仕事を終えて帰るときにふと足元を見たら、図書館から借りてきた本が落ちていたのに気がついた。
瀬名秀明編『贈る物語 Wonder』という本だ。
借りてから2週間がたって、ちょうど今日が返却期限日だった。
あぁ、まだ2週間しか経ってなかったのか…、と私はその本を拾って、帰りに図書館に寄って返却してきた。

Tさんと新部署の小部屋に引っ越して、それから毎日のように、仕事しながら、お昼を食べながら、休憩しながら、おしゃべりをしているので、たった2週間でTさんはこの職場の誰よりも私のことを知ってしまったんじゃないかと思う。
その、Tさんとの初日の話題がキッカケで私はこの本を借りた。

「山川方夫の『夏の葬列』っていう短編、知ってる?」
「知りませんけど。」
「リカコさんが住んでいる辺りが、この小説の舞台なんですよ。駅前に商店街あるでしょう。」
「あぁ、あります。ちょっと昔の雰囲気の。」
「みかん山とか」
「はいはい、ありますね。」

おおよそ文学とはカンケーのなさそうな人からこんなことを言われたらやっぱり気になる。その日のうちに図書館で『夏の葬列』がこの本の中に収録されていることを調べだして、借りてきた。

瀬名秀明は小説『パラサイト・イブ』を書いた人で、そういえば10年くらい前に夢中になって読んだっけ。たしか『パラサイト・イブ』を書いたとき彼は大学院生だった…はず。ということは、私よりもせいぜい7~8歳年上、Tさんとは同い年くらいになる計算だ。

その瀬名秀明が、編纂者として本の解説に
「中学2年の国語の教科書にこの短編が載っていた。今まで読んだどんな小説よりも、この小説に衝撃を受けた。」などと書いているじゃないか。
Tさんもまるっきりおんなじことを言った。これってすごいことだ!と私はドキドキした。

戦時中に友だちの女の子を死なせてしまった少年が、大人になって、彼女が死んだ場所を訪れる…という話だった。

「小説の中には、土地の名前なんて全然出てこなかったんですけど、どうして私の家の近くだなんてわかったんですか?」
「あ、話の中には書いてなかったのかぁ。それじゃ、本の解説か何かに書いてあったんだと思うよ。社会人になってからも、本屋で偶然見つけて買ったりして、何度か読み直したから。」
「…そこまで衝撃だったんですね、この話。」
「彼女の死をこれからの人生ずっと背負っていこう…と決心したってのが、当時中学生だった僕の心に突き刺さったんですね、きっと。」

この小説を読んで衝撃を受けた中学2年生男子が日本にどれだけたくさんいるのだろう…。大人になってからもずっと心に残る話。私は中2のときこの話を読んだ覚えがなかったので、なんだかTさんがとってもうらやましかった。